華僑が築いた中洋折衷楼閣!中国の世界遺産「開平」の歩き方

華僑が築いた中洋折衷楼閣!中国の世界遺産「開平」の歩き方

更新日:2015/04/14 17:58

吉川 なおのプロフィール写真 吉川 なお 台湾在住ライター、元旅行会社勤務の旅行マニア
中国広東省の開平市は、世界各地に居住する華僑の故郷のひとつとして知られています。ここから世界に分散した華僑は75万人にも達し、帰郷した彼らが築いた「碉楼(ちょうろう)」と呼ばれる高層楼閣は、2007年に世界文化遺産に登録されました。
故郷に錦を飾った華僑たちの栄華の跡を見に、開平の「自力村」「立園」「赤坎鎮」の散策に出かけましょう!

開平へのアクセス

開平へのアクセス

写真:吉川 なお

まだあまり知名度が高くない開平ですが、広州や珠海、香港、マカオなどから数時間で行くことができます。一番行きやすい広州からは約2時間、香港からも直通バスで約4時間半の距離です。

マカオからは隣接する珠海経由で行くことができます。珠海の拱北口岸ゲート前のバスターミナルから直通バスに乗ると、約2時間半で開平バスターミナルに到着します。

見どころは市内に点在しており、公共バスを利用してそれぞれの目的地の近くまで行くこともできますが、時間があまりない方や効率よく回りたい方は、開平バスターミナル前で観光地の写真を持った運転手を見つけてタクシーをチャーターするという手もあります。「自力村」「立園」「赤坎鎮」の3カ所で約3時間くらい、1台約250人民元が相場です。

田んぼに建つ高層楼閣

田んぼに建つ高層楼閣

写真:吉川 なお

広東省の中南部、珠江三角州の西南に位置する開平は、2007年6月に『開平楼閣と村落』として「自力村」「赤坎鎮」「方氏灯楼」「蜆岡鎮」「百合鎮」の村落群が世界文化遺産に登録されました。明代の後期に起源を発し、帰国華僑によって20世紀前半にかけて建てられた西洋要塞風の楼閣建築群が評価されたもので、全盛期には3000棟以上建設され、現存する1833棟は中国政府によって全国重点文物保護単位に指定され、うち200棟あまりが保存対象となっています。

閑散とした村のあちこちにすっくと建つビルのような高層楼閣は、のどかな田園には似つかわしくないアンバランスな景観を呈しています。

摩天楼がある農村「自力村」

摩天楼がある農村「自力村」

写真:吉川 なお

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「自力村」は開平市の中心部から約10kmの潭江支流の丘陵平原沿いにある村で、その名は「自力更生、奮発図強」というスローガンに由来しています。

現在、碉楼が9棟、西洋式別荘である盧が6棟保存されており、一番古い龍勝楼は1919年、最後の湛盧は1948年の建築です。内部見学は銘石楼と雲幻楼、葉生居盧の3カ所だけ可能となっています。

ここの碉楼の建築主の多くは、19世紀中頃にアメリカやカナダに労働者として渡った華僑です。ゴールドラッシュと大陸横断鉄道建造の労働で財を蓄えた彼らは、19世紀末の排華政策によって帰郷し、この地にこぞって住宅を建てました。
度重なる水害と当時横行していた盗賊から身を守るため、建物は次第に上へ上へと高層化していき、窓は小さく高い位置に、外側には鉄格子と鉄扉をつけ、壁は厚く銃口を備えるという、まるで要塞のような住居を造りあげていきました。

建築材料は、財力にまかせてレンガ、コンクリート、鋼材などを外国から輸入し、内部はもとより屋根や上層部にも豪華な装飾を施しました。彼らが滞在した西洋様式を取り入れ、古代ローマ式アーチ、イスラム式、バロック式、ビサンチン式、アメリカの砦式、欧米の別荘式や庭園式など、主の好みが反映され、同じものは一つとして存在しません。

襲撃や洪水に備えて各階に台所があるのも特徴です。台所が多いほど栄えるという言い伝えにより、2カ所設置されているところも多く、窓の多さも警備に要する財力を誇示する指標となっていました。

アメリカ華僑の桃源郷「立園」

アメリカ華僑の桃源郷「立園」

写真:吉川 なお

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自力村から車で約10分のところにある北義村にある「立園」もアメリカ華僑・謝維立氏の成功を記す場所です。国家4A級旅遊景区にも指定されている庭園の敷地面積は約1万平方メートル、1926年から5年の歳月をかけて造られました。

6棟の建物と1棟の碉楼が建つ別荘エリアと大庭園、小庭園に分かれ、彼とその一族が住んだ建物は黄色の壁と緑色の瓦、欧米様式の窓とローマ様式の柱、モザイクの床に水洗トイレと中国と西洋の粋を融合させたたいそう豪華なものです。
庭園には人工運河も引かれ、古代ローマの城をイメージしたという大きな鳥の巣もあり、当時の華僑の裕福さがよく分かる遺構となっています。

川沿いの騎楼群「赤坎鎮」

川沿いの騎楼群「赤坎鎮」

写真:吉川 なお

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かつて開平の中心地だった「赤坎鎮」は350年の歴史を持つ古鎮で、川のほとりに「騎楼」と呼ばれる中国と西欧折衷様式の3、4階建ての建物が600あまりも並んでいます。

現在の街並みは20世紀初め頃にアメリカからの帰郷華僑が出資して建てたもので、赤坎鎮一帯を流れる潭江にかかる“下埠橋”を境に、東側の堤東には司徒氏一族、西側の堤西には関氏一族が住んでいます。

当時の面影を残す建物はやや古びた印象がありますが、夜はライトアップされ、幻想的な風景に様変わりします。

移民文化の遺産のひとつ

開平の碉楼は、西洋文化を吸収した華僑の人々が自己防衛のため、自国文化と融合させて生み出した産物です。のどかな農村にそびえる高層楼閣は一見の価値有りです。
あなたも香港、マカオにお出かけの際に、ちょっと変わった景観が楽しめる開平まで足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/04/03 訪問

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