千葉県柏「旧吉田家住宅歴史公園」で昔の豪農の暮らしを体感

千葉県柏「旧吉田家住宅歴史公園」で昔の豪農の暮らしを体感

更新日:2018/03/06 12:55

井伊 たびをのプロフィール写真 井伊 たびを 社寺ナビゲーター、狛犬愛好家
千葉県柏市にある「旧吉田家住宅」は、江戸末期に牧士(もくし)を務めた豪農吉田家のかつての暮らし向きと、その歴史があわせて学べる貴重な文化財だ。長大な長屋門をくぐり屋敷内に進めば、外の喧騒から逃れ江戸時代へタイムスリップができる。

茅葺き屋根の主屋、格調の高い書院とその前に拡がる庭園や雑木林などが、訪れる人に安らぎを与えてくれる。住宅前には広大な芝生公園もあり、文化と自然をゆったりと満喫できる。

国重要文化財「旧吉田家住宅歴史公園」

国重要文化財「旧吉田家住宅歴史公園」

写真:井伊 たびを

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「旧吉田家住宅歴史公園」のある花野井地区は、利根川に面した台地の上にある。この地区には、古代から人が住みついていたとされている。吉田家は代々名主の役を務める豪農で、現存する建造物は江戸末期から明治期前半に造られたのとほぼ同じ構成である。

吉田家が務めた「牧士(もくし)」とは、士分格の役職。幕府直轄牧である小金牧を野馬奉行のもと現地で管理・運営を担った。それを世襲で代々勤め、名字帯刀、乗馬、鉄砲所持が認められていた。

平成16年(2004年)に柏市に遺贈され、平成21年(2009年)11月に歴史公園として開園された。その後、平成22(2010年)12月に国重要文化財に指定され、平成24年(2012年)9月には、庭園及び屋敷林などが「旧吉田氏庭園」として国登録記念物(名勝地)に登録された。

吉田家の主屋や新蔵、書院、新座敷などは、内部を見学することがでる。ボランティアガイドのみなさんが、見どころを楽しく丁寧に解説してくれる。立派な大黒柱や座敷の造作など、贅を尽くしながらも質実な豪農の暮しの空間を垣間みることができる。

旧吉田家の25mにもおよぶ立派な長屋門

旧吉田家の25mにもおよぶ立派な長屋門

写真:井伊 たびを

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これが天保2年(1831年)に造られたとされる長屋門だ。長屋門は本来、武家屋敷の門で、門の両脇に部屋があり門番らが詰めていた。ところが、苗字帯刀を許された名主らも長屋門を造ることを許可されていたので、旧千葉一族、相馬一族の流れを汲む豪農の多い東葛地域には、数多くの長屋門が現在でも残っている。その中でも、この旧吉田家の長屋門は立派な門だ。

左右に米蔵を備えた見事な造りだ。内部の西側は休憩所になっており、その頑丈な造りを内側から見ることができる。ぜひ、見上げて堅牢な屋根裏の構造をよく観察していただきたい。

ところで、かつてTBS系で放映されたテレビドラマ『JIN−仁−』は、高視聴率だったので、ご覧になった方も多いことだろう。江戸時代へタイムスリップしてしまった現代の脳外科医・南方仁(大沢たかお)。満足な器具も設備もない中で幕末の人々の命を救いながら、坂本龍馬(内野聖陽)らとの交流を深め、やがて自らも幕末の動乱に巻き込まれていく壮大なヒューマンストーリーだった。

ペニシリンの普及のため、南方仁(大沢たかお)が長崎を訪れる第6話「坂本龍馬の闇」。仁が医学生たちに講義をする会場となった「精得館」(日本初の西洋式の病院だった長崎養生所を前身とした幕末期の医療施設)の門として撮影されたのが、この「旧吉田家住宅歴史公園」に残された長屋門だった。仁は、この門をくぐって学生たちの待つ講堂に向かった。初夏の緑が美しいシーンだった。思い出される方も多いことだろう。

長屋門をくぐって右前方向にある新蔵は、天保4(1833年)に造られた。農具などをしまう倉庫として使われていたようだ。実はこの蔵でも、グラバー邸の武器庫として坂本龍馬(内野聖陽)が、武器を持ち出すシーンが撮影され放映された。

さらに主屋の奥に作られた書院は、第7話「永遠の愛と別れ」のエンディング、龍馬が大政奉還の企てを語るシーンにも登場している。

茅葺き屋根の重厚な造りの主屋

茅葺き屋根の重厚な造りの主屋

写真:井伊 たびを

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敷地中央奥に建てられている大規模な茅葺き農家の主屋だ。嘉永6年(1853年)にこの主屋の建て替えと書院の新築がなされている。主屋は木造平屋建で、屋根は寄棟造で茅葺き。かつて、家人が出入りしたであろう土間にて見上げれば、広大で重厚な梁組を見ることができる。その土間には、かつてあった場所に囲炉裏が復元されている。玄関は別にあり客人が来た時にだけ使われた。

座敷には3間四方の居間や、5畳の仏間など広い部屋が配されていて、仏間の正面には式台が構えられいる。主屋の東面には書院が、背面には座敷棟が続く。

文字通りの大黒柱に圧倒される!

文字通りの大黒柱に圧倒される!

写真:井伊 たびを

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建築の専門家をも唸らせる、幅40センチ、長さ7メートルの大黒柱。この大黒柱は160年あまりの間、主屋の重い屋根を支え続けている。思わず撫でながら、その働きぶりを労ってあげたくなる。

格調の高い書院

格調の高い書院

写真:井伊 たびを

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嘉永年間に建造された書院は木造平屋建で、屋根は寄棟造の桟瓦葺き。当時は客間として使われていた。座敷2室を東西に並べ、四周に縁を廻らす間取りで、東室には1間半の床の間、左右に違い棚、書院を備えている。違い棚の上、天袋の小襖には狩野派による絵が描かれている。

手の込んだはめ込み式欄間格子や、床周りなどには良質な材料が用いられており 、施工も入念な「匠の技」を堪能できる。さらに、玄関から書院にかけてのすばらしい「釘隠し」を見落とさないようにもしたい。

ところで、こちらの書院は、羽生善治棋聖と深浦康市王位が対局した「第82期棋聖戦五番勝負」の第一局の対局場になったことでも有名だ。

まとめとして

宅地開発が進む柏市だが、郊外に行くとこのような農家の居宅が点在している。TBSドラマ『仁-JIN-』の影響で、見学に訪れる人が増えたという「旧吉田家住宅歴史公園」。主屋の入口にはドラマ『仁-JIN-』での登場シーンを紹介する一画もある。

見どころを楽しく丁寧に解説してくれる「ボランティアガイドさん」に、案内をお願いすれば興味百倍。歴史ファンならずとも一度は訪れてみたい「旧吉田家住宅歴史公園」だ。緑あふれる柏市の郊外と、その長い歴史を実感できるオススメのスポットだ。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/03/31 訪問

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