「さかい利晶の杜」がオープン!千利休と与謝野晶子に会いに行こう

「さかい利晶の杜」がオープン!千利休と与謝野晶子に会いに行こう

更新日:2018/10/26 12:28

菊池 模糊のプロフィール写真 菊池 模糊 旅ライター、旅ブロガー、写真家
2015年3月20日、大阪府堺市に「さかい利晶の杜」がオープンしました。
千利休と与謝野晶子をフィーチャーした観光施設で、堺の文化面をクローズアップしています。
新しいタイプの博物館ともいえ、パネルや映像を多用し、わかりやすい説明がなされていますので、どなたでも楽しむことができます。
ぜひ「さかい利晶の杜」を訪れ、千利休と与謝野晶子の優れた業績を知り、ビジュアル感溢れる展示を楽しみましょう。

「さかい利晶の杜」の観光案内展示室で視覚的に堺の歴史を学ぶ

「さかい利晶の杜」の観光案内展示室で視覚的に堺の歴史を学ぶ

写真:菊池 模糊

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千利休と与謝野晶子は堺出身の偉人です。「さかい利晶の杜」は、その二人をメインとして堺の歴史文化を楽しむ新しいタイプの観光施設です。
「千利休茶の湯館」「与謝野晶子記念館」「さかい待庵外観自由見学」については、合わせて入場料大人300円とリーズナブルなものです。

まず入場すると1階フロアに観光案内展示室があります。
江戸時代後期の堺を描いた「泉州堺絵図」の陶板フロアマップがあり、足元間近に堺の街並みを把握できます。
そして、さかい利晶の杜のある宿院界隈の昭和初期時代を再現したジオラマ模型があり、戦災で焼失した戦前の堺の雰囲気が手に取るようにわかります。
このフロアでは、タッチパネルやタブレットなどを活用することで、堺の見どころをわかりやすく知ることもできます。

受付左側奥には、茶の湯体験施設があります。
まずは抹茶と菓子を味わえる立礼呈茶がおすすめです。これは椅子席で、気軽に抹茶のお点前を体験できるものです。(呈茶料大人500円・さかい待庵特別観覧セットは大人1000円)
お点前は表千家・裏千家・武者小路千家が交代で行われ、菓子については堺名物の和菓子が週替わりで提供されます。
本格的に茶の湯体験をされたい方には「茶室お点前体験」がありますが、これについてはグループによる予約制になります。

立礼呈茶については、「千利休茶の湯館」「与謝野晶子記念館」を観覧してから、休憩を兼ねて体験されると良いでしょう。
なお、和食レストラン「湯葉と豆腐の店 梅の花」やコーヒーショップ「スターバックス コーヒー」もありますので、お好みに応じて利用できます。

「千利休茶の湯館」で利休が完成させた茶の湯の世界に親しむ

「千利休茶の湯館」で利休が完成させた茶の湯の世界に親しむ

写真:菊池 模糊

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1階の「千利休茶の湯館」に入ると、最初のコーナーには「デジタル住吉祭礼図屏風」があり、東洋のベニスと称された堺のまちの屏風絵を楽しめます。
次のコーナーは「茶の湯の変遷」がテーマで、利休が若き日を過ごした堺今市屋敷の茶室と、利休晩年期の京の聚楽屋敷の茶室の床の間が再現されています。
最後のコーナーは、利休の生涯がテーマで、どのようにして利休が茶の湯を大成していったかを学ぶことができます。利休は、現在の茶道千家の始祖であり「茶聖」と称せられますが、その道筋がここでわかりやすく理解できるのです。
また、映像上映室では、8分ほどの千利休と茶の湯についての映像が随時上映されますので、忘れずに鑑賞しましょう。

さらに、「千利休茶の湯館」を出ると外側に回る通路があり、写真にあるように「さかい待庵」の外側を見ることができます。
これは、千利休の茶室で唯一現存する国宝「待庵」の創建当初の姿を全く新たに復元したもので、釘を一本も使っておらず、自然石の上に乗せられた柱や、竹を使った樋などが印象的です。TVによる復元建築の模様も上映されています。
なお、この「さかい待庵」の内部を見学する場合は、さかい待庵特別観覧セット(入館料・立礼呈茶含む)の購入が必要で、事前予約制になります。

利休が完成させた茶の湯は、日本的な美の設えと心構えの究極の姿といえるのものです。「千利休茶の湯館」や「さかい待庵」を見学して、その簡素で優雅な世界を学びましょう。

「与謝野晶子記念館」でその作品世界と生き方に触れる

「与謝野晶子記念館」でその作品世界と生き方に触れる

写真:菊池 模糊

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「さかい利晶の杜」の2階には「与謝野晶子記念館」があります。
入場するとまず、晶子の短歌のイメージ写真映像が上映される小さなコーナーがあり、華麗なる晶子の世界に誘導されます。

次に、部屋の中央に装丁ギャラリーがあり、数多い晶子の本の装丁を見ることができます。藤島武二や中沢弘光といった一流の画家が手がけたもので、夫・与謝野鉄幹の「後世に残るものでなければならない」という考え方が反映され、美術品としても高い価値があります。
装丁ギャラリーの周りには、晶子が渡欧時に持参した着物や残された原稿など晶子にちなんだ貴重な品物の展示があります。
作品から抜粋された晶子の考え方も、デジタルで分かりやすく表示されています。

また、晶子による源氏物語朗読の録音が聞けるコーナーもあります。
晶子が孫を抱いている8mmフィルム映像も上映されており、この孫については名誉館長の与謝野馨さん(晶子の孫・元衆議院議員)によれば「姉(綏子=やすこさん)ではないか」とのことです。

展示室の奥には、晶子が生まれ育った駿河屋の店先が、実物大で再現されています。羊羹で有名な和菓子屋さんだったそうです。
1階は暖簾が印象的な和風の老舗の雰囲気で、2階は大きな時計もある洋風なつくりで、全体として和洋折衷の洒落た建物であったことがわかります。
和の落ち着いた情緒と、モダンな西洋の香りをあわせ持った家で、晶子は少女時代を過ごし、その感性を磨いたのです。

千利休屋敷跡でその生涯に思いを馳せる

千利休屋敷跡でその生涯に思いを馳せる

写真:菊池 模糊

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「さかい利晶の杜」のつくられた趣旨は、千利休と与謝野晶子を顕彰しヴィジュアルな展示で紹介することによって、二人のふるさと堺の観光へといざなうことにあります。
したがって、「さかい利晶の杜」を見学した後は、千利休や与謝野晶子のゆかりの地を訪ねるのが良いでしょう。

まず、千利休に関して必見なのが、「さかい利晶の杜」の東側すぐにある千利休屋敷跡です。
写真にありますように、ここには利休が椿の炭を底に沈めて水を清めたと伝わる椿の井戸が残っています。
また、この井戸屋形は、利休ゆかりの大徳寺山門を改修する際に、その廃材を使って建てられたもので、間違いなく利休の時代の木材です。
大徳寺の山門は「金毛閣」と言い、利休が自らの雪駄履きの木像を楼門の二階に設置し、その下を秀吉に通らせたことから、切腹を命じられたとされます。これは言いがかりと思われ、利休の賜死の真の理由は歴史の大きな謎です。
この屋敷跡に立って、今日まで茶道として伝わる利休創始の文化の価値を感じるとともに安土桃山時代の歴史ロマンに思いを馳せてください。
ここには日中は観光ボランティアの方が常駐していますので、説明を受けることもできます。

さらに、利休に興味をお持ちの方は、利休が修行をしたゆかりの寺である南宗寺を訪れましょう。
この寺は創建当時は「さかい利晶の杜」のある宿院付近にあったと伝えられる名刹で、大坂夏の陣で焼失後、沢庵宗彭によって現在の南旅篭町東の地に再建されたものです。
ここには利休一門の供養塔があり、弟子の古田織部作と伝わる枯山水庭園もあり国の名勝に指定されています。

また、千家茶道の発祥と発展に伴い、堺には多くの和菓子店も興隆しました。現在も多くの和菓子店がありますので「さかい利晶の杜」を見学した機会に、堺の和菓子店をたずねて味わってみるのも一興です。(下記メモ欄「堺の逸品・名産品 和菓子」参照)

与謝野晶子の文学碑をたずねる

与謝野晶子の文学碑をたずねる

写真:菊池 模糊

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「さかい利晶の杜」から与謝野晶子をたずねる旅は、文学碑や生家跡をめぐることになります。
まず、観光案内展示室1階の西側入り口の外側にある、文学碑を見学しましょう。写真をご覧ください。
これは与謝野寛(鉄幹)と晶子夫婦が、寛60歳の時(昭和8年)に書いた、お互いを評価する文章を抜粋したものです。
二人は生涯の伴侶として、日本近代詩歌の黄金期を形成しましたが、それぞれ詩人としての文学的資質を強く認め合っていたことがわかります。
この碑は、今回の「与謝野晶子記念館」オープンを記念して、与謝野晶子倶楽部が建立したものです。

次に「さかい利晶の杜」から東すぐの、路面電車の阪堺線が走る大道筋へ出て、北側へ少し歩いたところに、晶子の生家跡の碑があります。必見の観光ポイントで、先ほど「与謝野晶子記念館」で見た駿河屋が実際に建っていた場所なのですから、感慨深い思いにとらわれるでしょう。
ここには晶子の歌碑があり、「海こひし潮の遠鳴りかぞへつゝ少女となりし父母の家」という故郷を偲ぶ晶子の歌が刻まれています。
この歌碑全体は横長で、晶子の旧姓「鳳」にちなみ、鳳凰が大きく羽を広げた姿を象徴しています。

この近くには晶子ゆかりの開口神社や山之口商店街があり、「菜種の香古き堺をひたすらむ踏ままほしけれ殿馬場の道」という晶子の歌が刻まれた甲斐町道標もあります。
また、少し距離がありますが、晶子が女学校に通った道を辿って、有名な「君死にたまふことなかれ」の詩碑がある泉陽高校まで歩くこともできます。

堺市には、26基の晶子関係の歌碑・詩碑・立像がありますので、与謝野晶子文学碑めぐりというテーマの旅を楽しんでください。
詳しくは、下記メモ欄から「与謝野晶子のふるさと堺市で歌碑巡り 生家跡などで晶子を偲ぶ」及び「堺市で与謝野晶子の歌碑を辿り歴史ロマン散歩 大仙公園から晶子立像へ」を参照してください。

最後に

「もてなし」と「しつらい」の美を極めた茶の湯の大成者:千利休と、愛に生き真に生き日本近代文学を切り拓いた歌人:与謝野晶子は、日本の文化に大きな足跡を残した先覚者です。
泉州堺を旅する際には、「さかい利晶の杜」を出発点として、利休と晶子ゆかりの地を見学するのがおすすめです。

土日祝は、堺の観光地をめぐる「堺まち旅ループ」という緑色の周遊バスが30分おきに出ています。
また、堺おもてなしチケット一日乗車券を購入すれば、阪堺電車と南海バスの一部区間が一日乗り放題になります。堺の一部観光施設や店舗で各種特典も受けられますので、ぜひ利用しましょう。

このように「さかい利晶の杜」は、堺観光の拠点となる施設です。
利休と晶子をたずねて、文化の香に親しむとともに先覚者の生き方を偲んでください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/03/22 訪問

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