東京23区に田舎のおうち!練馬区石神井公園「旧内田家住宅」

東京23区に田舎のおうち!練馬区石神井公園「旧内田家住宅」

更新日:2015/03/05 10:38

古き良き日本を想わせるかやぶき屋根の大きなおうち。
田舎のおじいちゃんの家に遊びに行ったような、昔話の世界に迷い込んだような…そんな感覚を匂わせる茅葺き民家が、なんと東京23区内にあります!
それが練馬区石神井公園にある「旧内田家住宅」、練馬区の指定文化財です。
貴重な歴史資料として、今では誰もが自由に見学できるよう解放されている茅葺き民家。さっそく訪れてみましょう。

ボロボロだった古民家を細部まで再建

ボロボロだった古民家を細部まで再建
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旧内田家住宅は、もともとは練馬区中村橋にあった民家で、修復が必要な状態のまま取り残されていたものでした。
2007年に建物を一旦部材ごとに解体・移動し、2010年、練馬区立石神井公園ふるさと文化館の屋外展示施設として、隣接する区立池淵史跡公園内に復元したのです。

復元の際は細部にまでこだわりを見せ、木組み、土壁、化粧壁といった家屋の全てを建設当時(明治20年代初頭)の手法で建て直しました。

「寄棟造り」という構造形式で、屋根は四方向に傾斜する面を持っています。
長方形の家の形に、一部張り出す形で寝室が設けられており、桁行15.3m(8.5間)、梁間10.9m(5.5間)のとても立派な建物です。

それでは家の中へ入ります。

改装を繰り返して生まれた迫力の梁

改装を繰り返して生まれた迫力の梁
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内田家住宅は120年の歴史の中で改築が繰り返されてきました。

明治20年代の創建時には、玄関を潜ると広い土間が続き、外との境目は曖昧でした。
便所やお風呂は屋内にはなく、別棟に構築されています。これは農家屋の大きな特徴です。
家屋内に悪臭を持ち込まないためと、排せつ物を肥料として利用するため、屋外に設置していたほうが都合がよかったと言われています。

昭和戦前期になると、建て増しが行われ屋内に便所が作られ小部屋が追加されます。
これまで土間だった部分が一部板間になり、収納も追加されました。
今現在移築された内田家住宅は、この時代の様相を再建しています。

そして解体時には更に改装がなされています。
土間は玄関・裏口付近の一部のみとなり、板の間だった部分は畳敷きになりました。部屋の間仕切りが増え、屋内外の境目が明確に作られ、現代的な間取りが見て取れます。解体されたのは平成19年のことですが、その数年前まで実際に住民がここで暮らしていたそうです。

時代や生活の変化に合わせて家も少しずつ成長していったのがよくわかりますね。

改装には古い家を解体した際などに出た古い建材も再利用されています。
現代の建材ではこの様な丈夫でボリュームのある国産木材は中々手に入れることができません。
写真はかまどのある土間部分から見た天井ですが、松の木を一本丸ごと豪快に使った梁が見事です。かまどや囲炉裏の煤にコーティングされて、百年以上も長持ちする立派な梁になっていくのだとか。
現代に生きる私たちから見ると非常に贅沢です。

家の中には工夫が沢山

家の中には工夫が沢山
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屋内の仕様には、なるほどと思わせる工夫が随所に織り込まれています。

例えば、写真に引き戸が写っていますが、ガラス部分の上下はすのこの様になっており、反対側には障子がはめ込まれています。
工夫と思えるのは、この障子はなんと枠ごと取り外せるのです。冬は障子をはめ込み囲炉裏の熱を逃がさず、夏はすのこのみにして外の風を通す。とてもよくできた風の通り道ですね。

他に、部屋の真ん中の天井だけになぜかサッシのある場所があります。
ご存じのとおりサッシは引き戸をはめ込むためのものですから、部屋の天井だけにあっても意味がないように思えるのですが、これもなかなか面白い工夫です。
来客時など部屋を仕切りたい時、畳の上に臨時のサッシを並べて襖をはめ込むのです。

現代の家屋でも、パーテーションを利用して、時と場合に合わせて部屋の仕切りを変えるアイディア住宅が人気ですが、こんなところに原点があったんですね。

季節を感じる上座敷

季節を感じる上座敷
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ここは家の中で最も格式のある場所、上座敷です。

写真にはお雛人形が飾られていますが、五月人形や正月飾りなど、季節に応じてここでは飾りつけをしているそうです。

この部屋にはひとつ面白いところがあります。
雛飾りがあったため写真には写っていませんが、床の間の左側、縁側に出る部分に、引き障子とは別に、格子でできた小窓のようなものが付いています。
これは「平書院」と呼ばれるものです。
その昔、貴族の屋敷についていた「付書院」を簡略化して真似たもので、主に武家屋敷に多く取り入れられていました。

全体的な様相は典型的な農家の造りにもかかわらず、平書院を設置しているあたり、この家に住んでいた住民が地域の農家の中でも中心的な存在であったことが見て取れます。

都会で得られる貴重な体験

地方では、世界遺産の白川郷や、京都の美山かやぶきの里など、まだ現役で活躍している茅葺き民家も少数ではありますが残っています。
しかし、来訪のための利便性を考えると中々簡単ではないことも多く、内田家住宅の様に利便性の高い立地でこの様な貴重な文化財に出会えることは、大きなメリットであると言えます。

隣接する石神井公園ふるさと文化館では、縄文時代から現代にいたるまでの貴重な歴史資料が多く展示されており、ここ内田家住宅から発見された文献やお札なども見る事ができるので、合わせて来訪されることをおすすめします。

旧内田家住宅の公開時間等の情報は、記事下MEMOリンクの「石神井公園ふるさと文化会館」をご覧ください。歴史ボランティアガイドの方が常駐していらっしゃるので、わからないことは何でも聞いてみましょう。

他の来客に迷惑がかからなければ、室内で大の字になってみても良いのだとか。都会の中でどこか懐かしい茅葺き民家、あなたも体験してみませんか?

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/02/27 訪問

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