写真:鷹野 圭
地図を見る荒川大麻生公園はその名の通り、荒川中流の河川敷に広がる公園。大きくは「野鳥の森」という樹林帯と、ススキやヨシなどの繁った草原の2つに分かれます。写真は、川に程近い草原の一角。周りにはほとんど建物もなく、見えるのは公園の自然と荒川のみ! その解放感はまるでアフリカの荒野に降り立ったかのようです(ちょうどサボテンのようなものも生えていますしね(笑))。
河川敷でありながら非常に乾燥した場所ですが、植物の種や小昆虫等が多いため、冬から春先にかけてはこうした環境にもかなりの数の鳥が飛来します。ヨシの茎に掴まるアオジやカシラダカは、ここの代表種。さらに、草原を歩いていると突然大きなキジが飛び出してくることもあります。そして上空に目を向ければ、小鳥たちを狙うオオタカやノスリなどの猛禽類も! 森林と違って障害物がほとんどありませんので、バードウォッチングにはうってつけです。特に猛禽ファンの方には、草原での定点観察がおススメ。ただし開放的ゆえに風が吹くと非常に辛いので、春先でも防寒着は忘れずに!
写真:鷹野 圭
地図を見る『白鳥の湖』という物語があるように、ハクチョウといえば基本的に湖や池にいることが多いもの。しかし上記の通りこの公園は乾燥した草原と森林で構成されていて、湖沼はほぼありません。なら一体どこにハクチョウが来るのか? 答えは「荒川の中州」です。
写真は2014年1月に撮影したもの。公園の目の前を流れる荒川の中州に、6〜7羽ほどのコハクチョウが飛来していました。橋などはかかっていないので間近まで近付くことはできませんが、河原に降りて対岸から撮影することは可能です。あるいは場所にもよりますが、公園の上にかかっている高架橋から観察することもできます。
人気の高いハクチョウは、場所によっては観光客を呼ぶためのシンボルとして重宝され、エサやりなどが推奨されている場合もあります。そうした場所ではハクチョウの方から人に近づいてくることもありますが、ここのハクチョウは人と接する機会がほぼありませんので、近付き過ぎると逃げてしまいます。その分、純粋に自然の中で人に頼らず生きているハクチョウを観察できるのは、貴重といえそうですね。
写真:鷹野 圭
地図を見る双眼鏡や望遠レンズがあれば、隔離された中洲のハクチョウも十分アップで観察することができます。それこそ、表情の一つひとつまでよくわかるほど。身体が大きく、小鳥たちのようにちょこまかと移動することもあまりないので、脅かさないで済む定点さえ確保できれば、あとは観察・撮影し放題です。
さて、日本に来るハクチョウの中で比較的知名度が高いのがオオハクチョウとコハクチョウの2種類。上記の通りここを訪れるのは大抵コハクチョウですが、見分けのポイントは嘴にある黄色い部分です。この部分が写真のように狭くて尚且つ先端(嘴の先っぽに近い方)が丸っこいものがコハクチョウ。黄色の部分が広くて先端部が尖っているものがいたらオオハクチョウです。名前の通りオオハクチョウの方が大きいのは確かですが、ここのように遠目で観察している分にはサイズで見分けるのはほぼ不可能なので、嘴の配色で見分けましょう。
写真の個体はコハクチョウですが、インパクトや美しさはオオハクチョウと変わりありません。その優雅な姿を、驚かさないようにしてそっと楽しみましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る棲み家が河原に限定されるハクチョウと違い、小鳥たちはそういつでも同じ場所にはいてくれません。上記の草原でも、待っていればアオジ、カシラダカ、ツグミあたりが次々と姿を見せてくれますが、この公園に暮らす鳥はその何十倍にも及びます。極端に広い公園というわけでもありませんので、どうせなら森林浴やウォーキングも兼ねて、園内をぐるりと歩き回ってみるといいでしょう。
まず森林(野鳥の森)に足を運べば、ジョウビタキやシメなどの定番の冬鳥たちはもちろん、森の中にある小さな池ではカモの姿も見られます。時にはアオゲラ(大型のキツツキの一種)やミヤマホオジロなど、首都圏ではなかなか観察できる機会の少ない鳥も現れます。
写真は、珍しく森の中にいたカシラダカ。何をしているのかと思いきや、実は植物の種を朽木の隙間に貯め込んでいるところ。冬の間の保存食にするつもりなのでしょう。鳥の個体数と種の多様性に満ちた荒川大麻生公園では、こうした鳥たちのユニークな生活スタイルに直面する機会も多いのです。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真の黄色い羽根の昆虫、ご覧になったことはありますでしょうか?
4月〜5月中旬くらいにかけて大麻生公園にたくさん発生する生きもので、その外見通りキバネツノトンボといいます。実はコレ、棲み家がかなり局所的で、余所では(特に首都圏では)なかなか見る機会のないレア種だったりします。絶滅が心配される種ではありますが、ここでは毎年結構な数が発生するため、春から初夏にかけて公園の名物となっています。ちなみに「トンボ」とありますが、トンボではなくカゲロウの仲間。しかしながら特徴はトンボそのもので、激しい羽音を立てながらものすごいスピードで飛び回り、他の昆虫を捕らえて食べる純肉食性の昆虫です。
この他にも、都心ではちょっと見かけない昆虫があちこちで観察できます。道端の草むらなどにも普通に隠れていますので、よ〜く目を凝らしてみましょう。
ハクチョウを始めとした冬鳥に続き、春から秋にかけてはそれぞれの季節ごとの生きものがかわるがわる姿を現します。その生息密度はおおよそ首都圏とは思えないほど。東京湾にそそぐ荒川は時に汚れたイメージを抱かれがちですが、こうして中流を訪れると、その流域は思った以上に自然度が高いことに気づき、驚くことでしょう。
広い芝生広場などもありますので、ピクニックなどにはうってつけです。ただし公園内に飲食店はありませんので、お食事(飲み物も)の準備だけは忘れずに!
【アクセス】
秩父鉄道「ひろせ野鳥の森駅」より徒歩約10分
「大麻生駅」より徒歩約10分
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(2024/3/29更新)
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