アニメ『ひぐらし』の聖地 合掌造り集落を訪ねて〜 岐阜・白川郷

アニメ『ひぐらし』の聖地 合掌造り集落を訪ねて〜 岐阜・白川郷

更新日:2013/06/24 12:56

沢木 慎太郎のプロフィール写真 沢木 慎太郎 放送局ディレクター、紀行小説家
山間の雛見沢村にまつわる古い因習綿流し≠めぐって次々に起こる不可解な怪死・失踪事件。
アニメの『ひぐらしのなく頃に』の舞台モデルとなった世界遺産・白川郷合掌造り集落(岐阜県)をご紹介します。
『ひぐらしのなく頃に』に出てくるヒロイン、古手梨花(ふるで・りか)。“にぱ〜☆”というのが口癖で、冷静さと神秘性を兼ね備えた青い髪の美少女に会えるかもしれません。

日本の原風景

日本の原風景

写真:沢木 慎太郎

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一時のブームは去ったけれども、『ひぐらしのなく頃に』&『ひぐらしのなく頃に解』に登場した原風景が見られるとあって、今も根強いファンが訪ねる白川郷の萩町地区。急こう配となったかやぶき屋根が特徴の合掌造りの集落で知られています。
1995年にユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。

白川郷(しらかわごう)というのは、岐阜県の庄川流域の呼称で、合掌造りという日本の原風景を今に伝えています。
『ひぐらしのなく頃に』に登場する圭一や、梨花、赤坂らが村を見渡していた展望台のモデルとなったのが、萩町集落の北東部にある城山展望台(萩町城跡)です。
山間に囲まれた集落には水田が広がり、合掌造りの民家が多くひしめいています。

白川郷を紹介する写真は、この城山展望台から撮られたものが多く、新緑や紅葉、雪景色の合掌集落を見渡すことができます。1〜2月には合掌造りのライトアップが行なわれ、雪に包まれた集落の幻想的な姿が浮かびあがります。

展望台へはクルマでも行けますが、道が狭く、対面通行が難しい場所もあります。旧荻町駐車場内(荻町観光案内所前)から出ている展望台シャトルバス(片道200円)を使うと便利です。
展望台には約10台を収容できる無料の駐車場が整備されています。また、山菜料理や自家製の石割豆腐を楽しむことができる食事処もあります。

合掌集落を一望できる展望台は、この食事処の店の私有地となっていますが、観光客に無料開放されています。

急こう配のかやぶき屋根

急こう配のかやぶき屋根

写真:沢木 慎太郎

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城山展望台から、なだらかな下り坂を20分ほど歩くと、合掌造りの家が建ち並ぶ萩町地区に着きます。

萩町地区では、『どぶろく祭りの館 』『神田家』『野外博物館 合掌造り民家園』『国指定重要文化財 和田家』『明善寺郷土館 』『ふる郷 長瀬家 』『美然 ゆめろむ館 』『国指定重要文化財 旧遠山家民俗館』『大正三年 奥左エ門』といった建物を見学することができます。

また、合掌造りの家が民宿となっていて泊まることもでき、宿の人が三味線を弾いてくれることもあります。囲炉裏を囲んでの夕食や、かけ流しの天然温泉を満喫することもできます。

田園風景に溶け込む合掌造りの家(和田家)

田園風景に溶け込む合掌造りの家(和田家)

写真:沢木 慎太郎

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合掌造りの写真を撮っていると、初老の男性から「よかったら見て行って下さい」と声をかけられました。男性は、にこやかに笑います。合掌造りの家の主です。

私は深く考えていませんでしたが、これら合掌造りの家には実際に人が住み、生活をしているのです。そうした人さまの家に何気なくカメラを向けていたということに気づきました。
合掌造りの家に入ると、受付にいた女性も家の住人です。

荻町集落の合掌造りの家屋は、江戸時代末期から明治時代にかけて建てられたようです。合掌造りは、2つの部材を山形に組みあわせ、両手を合わせた形に似ているから合掌≠ニ名づけられましたが、ひとつの家に家長や兄弟、使用人家族など数十人が暮らしていたそうです。

家の側面(妻面)は、豪雪に耐えられるように60度近い急こう配の屋根で、ほぼ正三角形の姿となっていますが、この妻面に設けた窓から十分な光や風を得て、家の内部を養蚕業として使っていました。

建物はクギを使わず、部材をつなぐには木のクサビや、ねそ≠ニ呼ばれる雑木を使用しています。数十年に一度は、大規模な補修や屋根の吹き替えを行なう必要があるようです。

■和田家
◇住所:岐阜県大野郡白川村荻町997
◇入館料(一般個人):大人:300円/小人:150円
◇営業時間:9:00〜17:00
◇TEL:05769-6-1058
◇定休日:不定休

住民の方々の心づかいを感じる素敵な村

住民の方々の心づかいを感じる素敵な村

写真:沢木 慎太郎

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岐阜県白川郷や富山県五箇山などで1800棟以上もの合掌造りの家屋がありましたが、維持費がかかるうえ、不便な家には住めないなどといった理由で多くが取り壊されました。ダムに水没したり、火事で焼けたりした家屋もあったようです。

荻町集落では、自然環境を守る会を発足させ、村ぐるみで保存運動に取り組みました。そうした努力が実り、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。その後、世界文化遺産に登録されました。

合掌造りの家屋を初めて見ましたが、どうしても気になることがあったので、受付の女性に思いきって尋ねます。

「あのう、合掌づくりって、とても大きくて、暗くて、夜になったら幽霊とか出ないのですか?」

女性は優しく微笑し、「私は見たことはありませんが、昔の人は見たかもしれませんね。幽霊ではないですが、屋根裏にヘビが住みつき、白いへびだと縁起がいいとされていたようですね」と話します。

私は丁重に礼を述べて、合掌造りの家を去ります。

荻町集落は2000人に満たない村ですが、世界遺産に登録されてから以前にも増して多くの観光客が訪れるようになりました。2011年では、日帰り客が123万人で、宿泊客が7万人といいます(白川村役場調べ)。

ほとんどの観光客の方はマナーを守っていらっしゃるようですが、一部の人たちが勝手に戸を開けたり、家の内部をいきなり写真に撮ったり、家の前に無断駐車したりするなどの行動があるようです。

合掌集落を一望できる城山展望台は、食事処の店の好意によって観光客に無料開放されていますが、荻町集落で生活をする住民の方々の細やかな心づかいを含めて世界遺産に登録されているのだと思います。

こんな静かな村で暮らしてみたい

こんな静かな村で暮らしてみたい

写真:沢木 慎太郎

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最後に、私が最も訪れたかった場所をご案内します。
荻町集落の南にある白川八幡神社です。

白川郷では毎年秋に、各地の神社で、お酒のどぶろく≠ェ振る舞われる“どぶろく祭”が行なわれます。

五穀豊穰や家内安全、里の平和を山の神様に祈願する祭りで、獅子舞や舞踊などの神事が繰り広げられます。
歴史と伝統ある白川郷ならではの祭りが、この白川八幡神社でも行なわれています。

白川八幡神社からは、埋蔵金伝説がある帰雲山や、日本三百名山の猿ヶ馬場山に向かう登山道がのびています。

神社の境内では、ご覧の通り、可愛いキャラクターを描いた絵馬をたくさん見ることができます。

私が好きな“にぱ〜☆”と微笑む古手梨花ちゃんも、ちゃんと絵馬に描かれています。

 たくさんの絵馬には、こんな言葉が綴られています。
「ずっと来たかった白川郷に来ることができて、幸せ」
「こんな静かな村で暮らしてみたい」
「また、来たい」

どこか懐かしく、何度も来たくなる場所・白川郷。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか?

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2012/07/22 訪問

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