標高2400メートルに白い海老が?!〜北八ヶ岳で雪山入門

標高2400メートルに白い海老が?!〜北八ヶ岳で雪山入門

更新日:2018/10/23 22:26

SHIZUKOのプロフィール写真 SHIZUKO 舞台演出者
2000メートルを超える山々は、平地が秋色に染まるころ、雪に覆われ始めます。きっとそこは地上とは別世界。CMや冬季オリンピックで見る雪だらけの世界。あんなところに行ったら、どんな感じなんだろうと思う方も多いのでは?雪に覆われた山に登る!あまりにも危険で大変なように思えます。でも、好奇心がわいたときがスタートの時。そんな時には、まず、北八ヶ岳に行ってみましょう。雪山登山入門に絶好の場所です。

『海老の尻尾』に『モンスター』?

『海老の尻尾』に『モンスター』?

写真:SHIZUKO

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雪山登山に挑戦するためには、まず、行く場所がどんなところか知ることから始めましょう。

実は、日本は世界でも有数の豪雪地域です。大陸からやってくる極寒の寒気団が、温かな日本海を通過する時に海面からたっぷり水分をため込み、日本の背骨の山脈にぶつかり大雪を降らせます。雪をかぶった山々は、人間の立ち入りを拒むように、近寄りがたい気品をたたえ聳え立っています。平地から見ると、真っ白な山頂付近は静かな斜面のように見えますが、そうではありません。そこにはモンスターや海老がいっぱいいるのです。

今回ご紹介する北八ヶ岳にも、モンスターがいっぱいいます。背の高いものから、丸々と太ったもの、ちょっと変わった形をしたものなどなど。これらはすべて、雪山の美しい風景の代名詞=『樹氷』。過冷却霧が木々にまとわりつき、モコモコとした形に成長したものです。木全体を覆っているものを『モンスター』と呼んでいます。

モンスターの始まりは『海老の尻尾』。氷になる温度以下の状態で風に吹かれてきた霧状の水分が、木々にぶつかり、氷となって枝にとどまります。そこに次々風で送られてきた霧がくっつき、風上方向に大きく成長し、まるで海老の尻尾のような形になります。これが通称・海老の尻尾。美しい雪山の風景を生み出している素材です。

このモンスターたちがウヨウヨいる場所を、自分の足で登って行くのが雪山登山です。

『北八ヶ岳ロープウエイ』と大展望

『北八ヶ岳ロープウエイ』と大展望

写真:SHIZUKO

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下界とは別天地のモンスターたちが立ち並ぶ世界へは『北八ヶ岳ロープウエイ』で7分。一気に標高2237メートルの真っ白な世界に登ることが出来ます。晴れていれば、ロープウエイから見はるかす大展望は息をのむ美しさ。

正面には中央アルプスの山々、左手には南アルプスと八ヶ岳連峰、右手には北アルプスの立山や槍ヶ岳が一望のもと。こんなに素晴らしい大パノラマを見ることが出来るなら、何往復もこのロープウエイに乗っていたい気持ちになります。

風景を見るだけならロープウエイを楽しむだけでいいのですが、目的は雪山に自分の足で登ること。ロープウエイを降りて、新たな一歩を雪の上に刻みましょう。かなり緊張の一瞬ですが、未知の世界への扉を開くのはあなた自身。勇気をもって進みましょう。

スキー・スノボ・雪山登山のメッカ

スキー・スノボ・雪山登山のメッカ

写真:SHIZUKO

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北八ヶ岳ロープウエイには、多くのスキー&スノーボードを楽しむ方が乗っています。それもそのはず。ここのスキーコースは最長4キロと、国内屈指の長距離コース。しかも標高が高く、内陸部特有のパウダースノーが自慢のスキー場。上級者向けの難しいコースもあり、大人気です。樹氷の中を滑り降りる快感はたまらないようです。

爽快に滑り降りる人たちとはやや趣の違う雪山登山の人たち。目指すは標高差200メートル強の山頂です。重い荷物にアイゼンやストック、ピッケルにスノーシューなどを持つ重装備。まるで苦行の始まり? なんて気分にもなりますが、自分の足で登るからこその世界が待っています。雪山入門だといっても、山に登るための装備は必要です。雪山は曖昧な装備を受け入れるほど寛容ではありません。逆に言えば装備があれば、登ることが出来るとも言えますから、甘く考えずに準備してください。

北八ヶ岳は、雪山登山入門に最も適している場所だと言われています。準備万端で、安心して雪山登山をスタートしましょう。
ロープウエイ山頂駅を降りたあたりは、雪山入門の方もいろいろ準備をするので、たくさんの人でにぎわっています。

通年営業の縞枯山荘&北横岳ヒュッテ

通年営業の縞枯山荘&北横岳ヒュッテ

写真:SHIZUKO

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ロープウエイを降りて一番近い山が、左側に見える『北横岳』。正面方向に進めば『縞枯山』があります。どちらも危険個所が少なく、コースの大部分が樹林帯を通ることから、風も比較的穏やかなため、雪山入門の山として大人気です。

どちらの山にも通年営業している『縞枯山荘』『北横岳ヒュッテ』という山小屋があるのも安心材料。山小屋のお世話になれば、遠くからでも、一泊して山を楽しめるのが人気の理由です。暖かな暖炉に炬燵。心づくしの美味しい食事が多くの人を病みつきにさせています。

晴れていたら天国、吹雪けば地獄

晴れていたら天国、吹雪けば地獄

写真:SHIZUKO

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ロープウエイで簡単にアプローチできると言えども、雪山をなめてはいけません。雪がない時なら、何の苦労もなく15分で到着できる場所でも、雪の中を歩くと1時間は必要になります。1メートル進むのがこんなに大変なことかと実感することもあります。もちろん、その時の状況によって、時間は大幅に変わりますから、絶対に初心者は1人で雪山には行かないで下さい。経験者やガイドさんと共に安全に楽しむのが基本です。

ロープウエイを降りた場所は『坪庭』という景勝地。散策路が整備されています。雪がなければ木道が見え、高山植物が咲き溢れるところですが、冬は雪の下で眠っています。ここは、標高差のない場所ですが、足を一歩踏み出したら腰まで雪に埋もれてしまうこともあります。雪に足をとられながら、吹雪の中を歩くときはほとんど地獄。でも一度雲が切れたらば、まさに天国です。

青空と真っ白な山肌。眼下には町が広がり、人々の生活の息遣いが感じられます。静と動がともに存在する風景。これを絶景と言わずして、何を絶景という! だからこそ、雪山に来た価値があると心から思えます。諦めないで一歩一歩歩くと、今までの自分が知らなかった新しい世界への扉が、一枚一枚開いていくのが判ります。

雪山だけがもつ魅力

雪のない時期とは格段に装備も体力もハードルが上がってしまう雪山登山。雪山にわざわざ登るというのは、日本独特の登山スタイルだそうです。

8000メートル級にチャレンジするための訓練登山ならいざ知らず、条件の悪い危険な場所に突入していくのはなぜか。行ってみれば誰だって納得します。平地では決して味わえない美しい世界。静寂、極寒、孤独。これらすべてが雪山にあるからなんです。ツアーメンバーと厳しいラッセルを交代しながら、自分たちだけの道を刻み、山頂に到達する達成感。下りも厳しいのですが、雪道ならではの清々しさは、他のものには置き換えられない素晴らしさ、ぜひ一度、北八ヶ岳でお試しいただきたいと思います。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/12/17−2014/12/18 訪問

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