聖書の大地を実感!イスラエル・天空の巨大要塞遺跡マサダ!

聖書の大地を実感!イスラエル・天空の巨大要塞遺跡マサダ!

更新日:2015/01/06 14:33

菊池 模糊のプロフィール写真 菊池 模糊 旅ライター、旅ブロガー、写真家
イスラエルの死海周辺といえば浮遊体験が有名ですが、「マサダ要塞遺跡」をご存知でしょうか?
古戦場であり古代遺跡であるマサダには、日本では見ることのできないスケールの大きな荒涼とした絶景が広がっています。
世界遺産に登録されており、約2000年前の歴史の証人として、訪れる人に感動を与える必見の観光スポットです。
運がよければ珍しい野鳥や動物にも遭遇できます。今回は、このマサダの魅力をお伝えします。

死海のほとりに聳え立つマサダ遺跡へロープウェイで!

死海のほとりに聳え立つマサダ遺跡へロープウェイで!

写真:菊池 模糊

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「マサダ」は死海を望む孤立峰の頂上にあるため、登って行くのは大変なように思えますが、現在はロープウェイがありますので、楽々と観光することができます。
高度を増していくロープウェイの窓から、遠くの死海まで広がる草木ひとつない荒々しい景観が望め、なんという大きな景色だろうと胸が高まります。

マサダは、四方を絶壁に囲まれた難攻不落の要塞でした。
ここは、ユダヤ王家により紀元前120年頃から造られはじめ、『マタイの福音書』に救世主キリストの誕生を恐れて二歳以下の幼児を虐殺したと書かれているヘロデ大王が、離宮兼要塞として大規模改修を行った場所です。

紀元70年、ユダヤ戦争でイエスが予言したとおりエルサレムが陥落し崩壊した後、ここに約1000人のユダヤ人集団が3年半にわたり籠城し、最後は集団自決しました。イエス・キリストの十字架刑から約40年後のことです。
ここは、我々に聖書の大地を実感させてくれます。

古代の生活を実感するマサダの住居跡や地下貯水池跡

古代の生活を実感するマサダの住居跡や地下貯水池跡

写真:菊池 模糊

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「マサダ」とはヘブライ語で「要塞」という意味です。遺跡の上部に立つと、巨大要塞としての遺構が見渡せます。高度感があるので、これこそ2000年前に実在した本物の「天空の城」であることが判ります。

ここに約1000人のユダヤ人が立てこもり、3年半に渡って生活していたのです。
住居跡はもちろんのこと、ユダヤ教のシナゴーグ跡やサウナ風の大浴場跡などがあります。

なにより驚くのは、1000人の人間が生きるための地下貯水池跡です。
実は、この雨の降らない荒野では、はるか西のエルサレム高地方面で降った雨が地下伏流水となり、海面下400mほどの非常に低いユダ荒野の砂漠地帯で一挙に地上に出て、鉄砲水となり死海に注ぎます。
マサダは、この一時的な鉄砲水を、上手く設計された水路で導き、要塞内部の巨大な貯水施設に注ぎ込むのです。なんとこのマサダ内部に12の巨大貯水槽があり、4トンもの水を貯めることができたそうです。
マサダが最後に集団自決した際、生き残ったのは、この地下貯水施設に水汲みに行っていた2人の女性と5人の子供だけでした。

マサダ遺跡を歩くと、2000年前の人々の知恵と工夫とそれを実現する努力に頭が下がります。
この遺跡は、2001年にユネスコの世界遺産に登録されました。

マサダ遺跡から、はるか死海を望む

マサダ遺跡から、はるか死海を望む

写真:菊池 模糊

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マサダは、ユダ荒野に佇立する孤立峰で四方は絶壁です。北に突き出した「ヘロデの北宮殿」の壮絶な風景は、見ごたえがあります。切り立った絶壁がユダ荒野に向かって落ちており、そこに見張り場所が突き出しています。
東側も壮大な景色で、下界には、スケールの大きい草木の無い砂漠地帯が広がっており、そのはるか先には青く光る死海が遠望できます。どこまでも広い感動の景色です。

西側(死海側と反対の山側)の景観も素晴らしいです。
マサダに立てこもったユダヤ人に対し、攻める1万5千人のローマ軍は、マサダを取囲み、3年がかりで急峻な西側斜面に土を盛り、なんとか攻撃用の斜路を造成しました。その斜路跡やローマ軍の駐屯地跡は、現在もマサダの西側に残っています。

こうして、ようやくマサダへと侵入したローマ軍が目にしたのは、960人のヨダヤ人の自決遺体だけだったのです!

マサダの悲劇は、イスラエルのユダヤ人のアイデンティティーの象徴です。ユダヤ人にとって、まさにここは聖地なのです。
「マサダは二度と落とさせない」というユダヤ人の決意と強迫観念・被害者意識は「マサダ・コンプレックス」と呼ばれています。
男女徴兵制のイスラエル国防軍の入隊宣誓式がここで行なわれるとともに、成人の式でも、学校の卒業旅行でもここに来るそうです。

天空の遺跡の覇者:野鳥トリストラムを見よう!

天空の遺跡の覇者:野鳥トリストラムを見よう!

写真:菊池 模糊

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マサダ遺跡に行くと必ず見られるのが、珍しい野鳥トリストラムです。
荒野の遺跡マサダに集団で生息し、この天空の遺跡の覇者だと主張するように我が物顔で、飛び交っています。

カラスより一回り小さく、翼を広げるとオレンジ色の翼が目立って非常に綺麗です。集団で舞う姿は、マサダ遺跡の風物詩です。
トリストラムと呼ばれるのは、英国の鳥類学者トリストラムが発見・命名したからです。
和名はクリバネテリムクというのですが、それは翼を広げると風切部分が黄色〜栗色で印象的なところから来ています。

人間をさほど怖がらないので、ゆっくりと観察できます。ぜひ間近でご覧になり、この野鳥と交流してください。
恐らく、マサダ遺跡が建設された古代の聖書の時代から、ここに棲んでいるのでしょう。この野鳥の祖先たちは、ここでどんな人間のドラマを見たのでしょうか? それを考えると、とても感慨深いですね。

荒野に生きる絶滅危惧種ヌビアアイベックス

荒野に生きる絶滅危惧種ヌビアアイベックス

写真:菊池 模糊

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運が良ければ、このマサダ付近で、絶滅危惧種の動物ヌビアアイベックスと遭遇することができます。

写真のように、雄のヌビアアイベックスは、アイベックス類の中でも特に立派な角を持っており風格があります。

アイベックスは、ユーラーシア〜北アフリカの厳しいい自然環境の場所に点々と分布する山羊に近いウシ科の哺乳類で、多くの種類・亜種があります。
スイスの山岳地帯に分布するアルプスアイベックスが有名ですが、ピレネーのスペインアイベックス、ロシアのカフカスアイベックス、シベリアアイベックスやエチオピアのワリアアイペックスなどもあります。

マサダ付近のアイベックスは、アラビア半島やアフリカ北東部の荒野に棲息するヌビアアイベックスです。
ヌビアアイベックスは荒野〜砂漠の貴重な肉として、昔から人間に狙われ、生息数が減少しています。現在は絶滅危惧種として保護されていますが、大きな角を標的とする密猟があるそうです。
人間が有用動物として家畜化し増やしてきたラクダとの生存競争もあり、将来絶滅する可能性があります。
もともと厳しい自然の中で人間に追われてなんとか棲息してきた動物です。このアイベックスも頑張って生き抜いてほしいものですね。

マサダへの招待

イスラエルの旅で良かったという声が多いのが、ここマサダです。期待を裏切らない場所ですので、強くおすすめします。

マサダは、ヨセフスの『ユダヤ戦記』によって有名な古戦場ですが、ローマ軍によって徹底的に破壊されたため、1838年にドイツ人考古学者によって再発見されるまで、長期にわたりその所在が不明でした。今は復元整備され、整った観光地になっています。
2000年前のユダヤ人の生活が実感でき、貴重な生き物にも出会えます。なによりスケールの大きい景観は素晴らしいものです。

歴史的な遺産の魅力が大きいですが、ここマサダで見られる、聖書の時代から変わらぬ大自然とそこに生きる生命の姿はとても印象的で、訪れる皆さんに深い感銘を与えることでしょう。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/03/10−2014/03/22 訪問

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