冬の渡良瀬遊水地は、水鳥と猛禽が暮らす関東屈指の楽園!

冬の渡良瀬遊水地は、水鳥と猛禽が暮らす関東屈指の楽園!

更新日:2015/01/13 14:19

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
埼玉、群馬、栃木、茨城の4県にまたがる渡良瀬遊水地。赤城山を彼方に望む抜群のロケーションに、地平線が望めるほどの広大なヨシ原を有する関東平野指折りのの自然地です。そのスケールの大きさは、日本にいることを一瞬忘れてしまうほど。それだけに生きものの数も多く、冬場には小鳥やカモなど様々な鳥が訪れます。特に、生態系のトップに君臨する猛禽類(ワシ・タカ)が多いのが魅力! 精悍なその姿をぜひ観察してください。

果てしなく広がる、巨大なヨシ原に感激!

果てしなく広がる、巨大なヨシ原に感激!

写真:鷹野 圭

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写真は渡良瀬遊水地の一角。延々と広がるヨシの草原に、このように樹木が散見されます(右の木にアオサギ、左の木にトビがとまっているのがわかりますでしょうか?)。これだけですと、それこそアフリカの大平原か何かに見えるかもしれません。ヨシ原の中を通る遊歩道から周囲を見回すと、本当に関東にいることを忘れてしまいそうになります。さすがにヨシ原の中にまで入っていくことはできませんが、特にフェンスなどの視界を遮るもので仕切られているわけでもなく、遊歩道の目の前に自然景観が広がっていますので、冬場のバードウォッチングにはもってこいです。

4つの県の境目に位置する渡良瀬遊水地は、2012年に多数の水鳥が飛来する貴重な湿地としてラムサール条約に登録されました。関東では奥日光の湿原(栃木県)と谷津干潟(千葉県)に続く3番目の登録地。今は水鳥を含めて様々な生きものの暮らしを支える自然地として、大切に保全されています。後述する「道の駅 きたかわべ」に隣接するスポーツ遊学館という施設では、渡良瀬遊水地の歴史や自然に関する情報が色々と入手できますので、歩き回る前にまずはここに立ち寄ってみるといいでしょう。

野鳥の姿が水辺にも、草原にも、上空にも……

野鳥の姿が水辺にも、草原にも、上空にも……

写真:鷹野 圭

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巨大な水場である谷中湖が南に広がり、北にはヨシ原を中心とした草原が広がる渡良瀬遊水地。水場と草地をバランスよく尚且つ豊富に有するため、それぞれの環境を好む生きものが多く暮らしています。冬場に姿を現す野鳥たちもそのひとつ。草地ではアオジやカシラダカ、オオジュリンなどの冬の小鳥が観察でき、運が良ければ美しいキジを見かけることもあるでしょう(警戒心が強いのですぐ逃げてしまいますが)。一方で水場は、カモやサギなどの水鳥の楽園に! ヨシガモやミコアイサなど、首都圏ではなかなか見る機会のない珍しいカモに遭遇することもあるでしょう。さすがはラムサール条約登録地だと納得できるはずです。

特に注目すべきは、上記の通り猛禽類の数がかなり多いということ。写真のチョウゲンボウのように、他の動物や鳥を捕らえて食べるタカの仲間が多く、渡良瀬遊水地が如何に自然に恵まれているかがよくわかることでしょう。ちなみにこのチョウゲンボウがとまっているのは、谷中湖の南端にある水門。猛禽たちは獲物を探すために周りよりも高い場所を狩りの拠点とすることが多く、そのためなら樹木はもちろん、こうした人工物までも利用するのです。彼らは思いがけないところに現れることがありますので、バードウォッチングに訪れた際にはくまなく目を光らせましょう。

絶滅の心配されるヨシ原の猛禽 チュウヒを探そう

絶滅の心配されるヨシ原の猛禽 チュウヒを探そう

写真:鷹野 圭

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写真は、2014年2月に撮影したもの。
ヨシのすぐ上を低空飛行でこちらに向かってくるチュウヒの姿です。

チュウヒとは、冬のヨシ原を訪れる大型の猛禽類の一種。とはいっても相当広い面積のヨシ原がなければ滅多に飛来することはなく、首都圏で目にする機会はあまりありません。近年日本ではヨシ原の面積が全国的に減ってきているために飛来数が減少しており、国のレッドデータブックでも絶滅危惧TB類(絶滅の危険性が高いもの)に指定されています。

そうした中でここ渡良瀬遊水地では、ほぼ毎年のように複数の個体が訪れ、冬越しをします。ヨシ原の上を優雅に舞うチュウヒの姿は、冬の渡良瀬の風物詩といっても過言ではないでしょう。運も絡んできますがヨシ原近辺で粘っていれば、シーズンさえ外さなければかなり高確率で姿を見かけます。最大の特徴は、他の猛禽と比べてかなり低い位置を飛んでいること。配色はトビと似ていますが、この飛び方で結構見分けがつくことでしょう。

冷たい風が身に沁みる冬の渡良瀬ですが、ぜひともチュウヒの優雅な姿は一度は目にしていただきたいですね。

名物はナマズの天ぷら! お食事なら『道の駅 きたかわべ』へ

名物はナマズの天ぷら! お食事なら『道の駅 きたかわべ』へ

写真:鷹野 圭

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渡良瀬遊水地に隣接する『道の駅 きたかわべ』は、食事や地元特産品のお買物などを楽しめる便利なスポット。イチオシは写真のナマズの天ぷら定食。大ぶりなナマズ天が4枚ついてくるこのボリュームで、800円かからないのはかなりお得といえるでしょう(みそ汁の具など一部季節等により変動があります)。

肝心のナマズ天ですが、味は一般的なキスの天ぷらによく似ていますが、よりジューシーでふんわりとした食感。川魚独特の臭みなどは一切なく、とても食べやすい逸品です。このほか、手打ちそばやうどん、うな重などもメニューに並んでいます。

渡良瀬の野菜を使った漬物など、地元の特産品を購入できるのは道の駅ならではの醍醐味。花苗の販売もしており、冬場なら人気のクリスマスローズなども購入できます。渡良瀬を訪れた際にはぜひ一度立ち寄ってくださいませ。

夕暮れの渡良瀬遊水地は……

夕暮れの渡良瀬遊水地は……

写真:鷹野 圭

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渡良瀬遊水地は起伏が少なく見晴らしが良いため、夕暮れ時には広々とした空が鮮やかに赤く染まる様を楽しめます。写真は、谷中湖越しに望む11月のサンセット(中央にいる水鳥はカンムリカイツブリです)。水景と夕焼け空のコントラストは必見です。

冬鳥観察をとことん楽しみたいなら、ぜひ渡良瀬へ!

地平線が見えそうなほど広大なヨシ原に、大きな谷中湖、樹林帯など、ここ渡良瀬遊水地には様々な冬鳥が飛来する環境があります。最大の醍醐味はやはり猛禽類ですが、その他にも首都圏で見られる代表的な冬鳥のほぼすべてがここで観察できるといっても過言ではありません。「とにかくいろいろな鳥を見たい」という方にピッタリ! 鳥に少しでも興味のある方なら、ぜひ一度は訪れていただきたいスポットです。

【アクセス】
≪鉄道をご利用の場合≫
東武日光線「新古河駅」より徒歩約5分
≪車をご利用の場合≫
国道354号線三国橋より北西約3km
東北自動車道 館林I.C.より東へ約20分

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/02/23 訪問

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