オシドリもくる東京 渋谷区の自然地。冬の明治神宮に行こう

オシドリもくる東京 渋谷区の自然地。冬の明治神宮に行こう

更新日:2014/12/24 14:56

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
山手線「原宿駅」のすぐ目の前に見える明治神宮。海外からの旅行者にも人気の、言わずと知れた東京の名所です。その名の通り明治天皇を祀っている神社で、和の情緒にあふれる落ち着いた空間。しかし同時に、首都圏有数のまとまった森を有する自然地であることをご存知でしょうか? 特に内苑では春夏秋冬の日本の自然を堪能でき、とりわけ冬には美しいカモ、オシドリを始め、多彩な冬鳥が飛来して私たちの目を楽しませてくれます。

新緑も、深緑も、紅葉も、そして雪景色も魅力の明治神宮

新緑も、深緑も、紅葉も、そして雪景色も魅力の明治神宮

写真:鷹野 圭

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原宿駅を下車してすぐに見えてくる巨大な鳥居、明治神宮のシンボルの一つです。その大きさには驚かされますが、ここで注目してほしいのが両サイドを挟む巨木。鳥居よりもさらに巨大で、実際原宿駅側から見ると鳥居がすっぽり木に包まれていて見えないほどです。密度の濃い、それでいて自然林さながらの森林景観は、圧倒的な存在感を放ちながらも来苑者を優しく包み込むように迎えてくれるのです。

そんな明治神宮の豊かな森ですが、大正時代に整備が始まった当時は開けた荒れ地のような場所でした。それでも、国内外から様々な樹木を集めて植栽し、単一樹種だけではない自然林に近い景観づくりを目指して約100年……今では面積・樹高両方の意味で東京23区指折りの「巨大」な雑木林へと変貌しました。近年、街路樹のような均一化された植栽でなく多様性を重視した森づくり・緑づくりが注目されてきていますが、まさに明治神宮は100年も前に時代を先取りしていたと言えるでしょう。

樹種の多い自然林さながらの景観だけに、四季折々の変化も顕著です。若葉の春に始まり、緑が一層濃くなる夏、紅葉に覆われる秋、そして葉が落ちて巨大な樹形が露わになる冬……それぞれの季節ごとに明治神宮の森は姿を変化させ、都会の真っ只中でありながら私たちに季節の移り変わりを実感させてくれるのです。

ちなみにこの写真は2014年2月、東京で大雪が降った時に撮影したもの。時に視界が遮られるほどの吹雪でしたが、それでもなお多くの来苑者が集っていました。寒さが身に応えますが、雪景色というのもまた一興。より冬らしい明治神宮の姿を堪能できますよ。

オシドリは、冬の神宮のシンボル!

オシドリは、冬の神宮のシンボル!

写真:鷹野 圭

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オシドリといえば、日本に飛来するカモの仲間の中でもとりわけ美しく、バードウォッチャーからも大人気の鳥です。「おしどり夫婦」の元になった鳥なので、名前を耳にされたことはあるのではないでしょうか? 写真は雪が降っているので少々不鮮明ですが(汗)、まるでおもちゃのようなカラフルな配色(ただしオスのみ)は大変良く目立ち、一度目にしたら思わず虜にされてしまうことでしょう。もちろん、他のカモと見間違えることはありません。

可愛らしい外見に反して、実は結構喧嘩っ早いオシドリのオス。縄張り争いやメスの奪い合いになると、水面を激しく蹴って高速で体当たりを仕掛け、追い払おうとします。また、水に潜って水草などを食べようとするシーンも見られますが、水面に戻ってくると特徴的なトサカ(冠羽)がオールバックのようにぺちゃんこになってしまい、これもまた可愛らしい姿だったりします。かなり近い距離で様々なオシドリの生態を観察できますので、明治神宮に来た際にはぜひ探してみてくださいね。特に、JR代々木駅に近い北池でよく見かけます。

御苑では、人懐っこい小鳥も?

御苑では、人懐っこい小鳥も?

写真:鷹野 圭

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皆様はヤマガラという小鳥をご存知でしょうか?

腹部が鮮やかなオレンジ色で、自然の豊かな公園などなら首都圏でも1年を通じて見られる小鳥です。大きさはスズメよりも少し大きいくらい。比較的なの知れたシジュウカラと同じ仲間で、ツェーツェーという特徴的な鳴き声をあげます。

明治神宮の内苑にはこのヤマガラが数多く生息しているのですが、どういうわけか非常に人懐っこく、写真のように社務所のカウンターにとまってしまうこともしばしば。むしろ向こうから人に近づいてくることすらあります。さすがに手乗り文鳥のようにはいきませんが、かなり至近距離で観察や撮影が可能! 鳥好きの方にはおススメです。

ちなみに小鳥の種類自体もとても豊富で、年間通じて見られる留鳥ならヤマガラの他にシジュウカラやカワセミ、冬鳥ならばアオジやクロジ、シロハラやアカハラ、あるいはバードウォッチャーからの人気が高いルリビタキなども観察できます。

東京の真っ只中にタヌキがいる!?

東京の真っ只中にタヌキがいる!?

写真:鷹野 圭

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ええ、実はいるのです。
まとまった森林のある明治神宮ならではですね。

写真はホンドタヌキ。本来は里山などで暮らしていた哺乳類なのですが、近年は神宮の環境に順応したらしく、明治神宮内苑を散策しているとまれに姿を見かけることがあります。四季を通じて絶えず人が足を運ぶ環境だからか、今ではすっかり人間慣れしてしまっている様子で、結構近い距離からカメラを向けても逃げ出しません。写真のように兄弟(?)で毛づくろいを始めてしまうこともあるんですよ。

タヌキは雑食性のイヌの仲間で、苑内ではドングリや植物の葉、昆虫を含む小動物などを食べて暮らしています。あまり人を怖がらず可愛らしいのでついついエサなどをあげてしまいたくなるかもしれませんが、そこはグッと我慢。ここは自然が豊富で生きていくのに十分な食料を得られる環境ですから、野生の力を損なわせないためにも最低限度の距離を保ち、そっと見守っていきましょう。

ちなみに基本的に冬眠はしない模様。
四季を通じて観察できるチャンスがあります。

雪が降れば、一面の白銀世界に……

雪が降れば、一面の白銀世界に……

写真:鷹野 圭

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写真は、2014年2月の大雪の時のもの。
この辺りは普段は起伏のある芝生広場なのですが、雪が降ればこの通り。この日は吹雪のせいで奥の新宿ビル群が見えないということもありますが、広場の広さもあって、あたかも北海道の原野のような景観が広がります。お手軽に北国気分を味わいたい時におススメです(笑)。

密度の濃い森ももちろんですが、こうした見晴らしのいい空間もまた明治神宮の魅力。夏場には青々とした芝生が広がり、ピクニックなどに最適です。

大都会の緑地で、冬ならではの魅力を堪能しよう

ご存知の通り、明治神宮は東京都の真っ只中にある緑地です。確かに高木・低木が豊富で森の密度は相当のものですが、周囲はほぼ完全にビル街。言うなれば明治神宮は都会に取り残された緑の孤島のようなものです。にも拘らず、オシドリを始めとして、ルリビタキやアカハラ、クロジなど、都心部では結構珍しい冬鳥が毎年のようにはるばる遠方から飛来します。東京のビル街を超えてわざわざここまで飛んでくるということは、それだけ明治神宮には棲み家となる場所や食料が豊富であり、野鳥たちにとって魅力的だということでしょう。

冬鳥の観察を楽しめるのは、基本的に11月〜4月頃までです(気温等により毎年変動します)。特に内苑は周囲を広い高木林に囲まれていることもあり、冬鳥の飛来数・種数が多く、園路を歩いている途中でばったり鳥に遭遇することもあります。内苑は入園料がかかりますが、中を散策する価値は十分にあるはずです。

【アクセス】
JR「原宿駅」、東京メトロ「明治神宮前駅」より徒歩1分
【入園料】
内苑:500円

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/02/08 訪問

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