写真:乾口 達司
地図を見る「大宿所祭(おおしゅくしょさい)」のとりおこなわれる大宿所は「もちいどの商店街」に面した一角にあります。大宿所とは、おん祭に参勤する「大和士(やまとざむらい)」が祭礼の奉仕のために宿泊し、精進潔斎をした場所。つまり、大宿所祭は17日に本番を迎えるおん祭が無事に執行されることを祈願した祭事であり、その意味でおん祭の実質的なスタートを切るものであるといえるでしょう。
神事のなかで参拝者のもっとも注目を集めるのが「御湯立の式(みゆだてのしき)」。湯の煮えたぎった大きな釜の前で巫女が奉祭し、熊笹の束を使って釜の湯を周囲にまきちらします。左右を意味する「サヨーサ、サヨーサ」という掛け声とともにおこなわれるその行為には、おん祭に参画する関係者の身を清めるという意味合いがこめられていますが、実は、その恩恵は神事を見守る一般の参拝者にも授与されるのです。祭をとりおこなう関係者と参拝者とが一体となり、おん祭の無事を祈願するという点に「御湯立の式」の特色があるといえるでしょう。
「御湯立の式」は午後2時半、午後4時半、午後6時から計3回にわたってとりおこなわれ、その祈願の対象は大宿所に詣でた地元各商店街の方々、祭礼に奉仕する大和士の方々、そして、一般の参拝者とそれぞれ異なります。
写真:乾口 達司
地図を見る「御湯立の式」の際、注目していただきたいのが、神事をとりおこなう巫女の身につけているもの。巫女の腰まわりに注目すると、何やら藁のようなものが巻かれていることにお気づきになることでしょう。これは「サンバイコ」と呼ばれるもので、安産の霊験あらたかなものとされています。同じものは、当日、敷地内にある授与所に並べられていますので、特に妊婦の方は、ぜひ、お求めください。
写真:乾口 達司
地図を見る大宿所に参拝したら、御殿に所狭しと並べられた装束類や器具にも目を向けましょう。これらは17日の「お渡り式」などで使われるもので、公家が身にまとう平安衣装から武士が身にまとう甲冑類まで実にさまざま。神前には乳房の形をした「稚児の餅」なども献じられていますが、こういった数々のものからは、おん祭を奉祭する人たちがさまざまな時代を生きた、さまざまな階層の人たちであったことを教えられます。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は展示されている大きな花笠。「お渡式」や松の下式、お旅所で芸能奉仕をおこなう田楽座の持ち物で、当日は田楽座のメンバーの一人がこれを頭にのせます。花笠の上に立つ人形は奈良の伝統的な木彫人形である「奈良人形」の起源であるとされています。
写真:乾口 達司
地図を見る屋外には雉や塩鯛、塩鮭など地元の篤信家から奉納された供物もずらりと並べられています。昔は野生の兎なども奉納されていたようですが、このうち、雉だけは剥製。このご時世、毎年、野生の雉を捕獲するのは難しいので、こればかりは致し方ありませんね。いずれにせよ、供物としては珍しいものなので、ぜひ、顔を近づけてご覧ください。
大宿所祭がどのようなものか、おわかりいただけたでしょうか。なお、境内では奈良の伝統的な郷土料理である「のっぺ汁」やしょうが湯も振舞われていますので、冬空のもと、身体を暖めて神事を拝観することをお勧めします。大宿所祭を見学することで、翌々日のおん祭本番に向けて、身も心も引き締めてください。
2023年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/3/29更新)
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