イスタンブール旧市街のガラタ橋にほど近い、エジプシャンバザールを抜けた問屋街の一角にひっそりと建つのがリュステム・パシャ・ジャミイ。写真の手前にあるドームがその建物だ。
後方の丘の上に建ち、優雅な姿を見せるのはシュレイマニエ・ジャミイ。
実はシュレイマニエ・ジャミイを建てた第7代スルタンのシュレイマン1世とリュステム・パシャ・ジャミイを建てたリュステム・パシャは主従の関係。シュレイマンに引き立てられたパシャは大宰相にまで出世し、莫大な富を築いたという。
控え目な姿は主人への遠慮があってのこと。そういう視線で見ると、この風景もまた違って見えるのでは?
リュステム・パシャ・ジャミイは、シュレイマニエ・ジャミイをはじめ、いくつものモスクや橋を設計した著名な建築家であるミナール・スィナンによって設計され、1563年に完成した。
問屋などの商店が立ち並ぶ街の複雑な通路に囲まれ、迷わず行き着くのは至難の業。ようやく辿り着いても、今度は入り口が見つからない。それというのも、このモスクは1階が商店になっており、2か所しかない登り口も目立たず、広くもないので、初めて来た者には極めて分かりづらい構造になっているのだ。
しかしこれは、周りを建物に囲まれた中で高さを稼ぎ、大きく見せることができるという効果があり、しかも階下にテナントをいれることでモスクの修繕などの維持費を確保するという、設計者スィナンの計算があってのことなのである。
雑然とした周囲の雰囲気とは裏腹に、一歩中に入ればそこには清浄な祈りの空間が広がる。
1日に数回行われる地元の人たちの祈りの時以外は、訪れる人もまばらなリュステム・パシャ・ジャミイには、ただただ静かな時が流れる。
ドームはモスクを特徴づける重要な部分である。どのモスクも、それぞれ個性的な装飾がなされたドームを持ち、訪れる者の目を引き付ける。
ここリュステム・パシャ・ジャミイのドームは、ご覧の通りシンプルにして荘厳。過度な装飾を排し、澄んだ空気を醸しながら、重厚さを失っていない。いつまでも眺めていたくなることだろう。
この窪み状のものはミフラープ。
ムスリム(イスラム教信者)たちにとって最も聖なるものであるカアバのある方向(キブラ)に向かう壁にあるものである。いわば礼拝する方角の目印といったところだろうか。
ミフラープそのものは聖なるものではないということだが、モスクには無くてはならない象徴的な存在。あなたには、ミフラープの向こう側にあるものが見えるだろうか。
離れてみていると、青い色のイメージが強いリュステム・パシャ・ジャミイだが、近づいてよくよく見ると、細かく配色された赤色こそが全体を引き締める重要な役目を果たしていることが分かる。
壁面や天井を覆うのはイズニックタイル。トルコのイズニクでつくられたもので、16世紀が最盛期であったという。このタイルの柄はチューリップをあしらったものだが、意匠の素晴らしさはもちろん、注目すべきは赤色の発色。この色は最盛期以降には出すことができなくなり、幻の赤となったという。
最も美しかったころのイズニックタイルがこれだけ贅沢に使われている例は、他にはないという。時間をかけて、じっくり眺めたいものだ。
目立たない外観と裏腹に、内側の清冽な輝きは訪れる者の目を覚ます。イスタンブールの宝石といっても過言ではない。
観光の慌ただしさや街の騒がしさからしばし離れ、リュステム・パシャ・ジャミイでこころ静かなひと時を過ごしてはいかが?
もちろん信仰の場であるので、服装その他の心得もお忘れなく。
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(2024/4/26更新)
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