写真:木村 岳人
地図を見る江戸時代、日本海沿岸をつたって北陸、東北へと向かう北前船の航路が開かれると、宿根木の東に位置する小木港がその寄港地として盛大に繁栄しました。
小木に近い宿根木には、北前船の船主や船員、船大工といった廻船業の関係者が住んでいました。北前船の最盛期である江戸時代後期から明治時代にかけて、小木と共に賑わったのです。
明治の中頃になると、鉄道など陸上交通網が整備されたことにより北前船は衰退しました。しかし、宿根木には今もなお船大工によって建てられた家屋が残っており、往時の風情を今に残しています。
写真:木村 岳人
地図を見る宿根木に建ち並ぶ家屋は、地元の船大工によって建てられました。
狭い土地を最大限に利用するため庭はなく、敷地いっぱいに背の高い総二階建ての家屋を建てているのが一般的です。連続する家々に囲まれた細い路地を歩いていると、まるでヨーロッパの古い町並みを歩いているような感覚さえします。
必見なのは集落の中心に立つ「三角家」。約150年前に建てられたこの家は、その名の通り三角形の土地に建てられた三角形の家なのです。土地の形にぴったり合った家を建てられる、当時の船大工の技術に驚かされます。
また主屋の他に土蔵を持つ家も多いのですが、潮風から漆喰を守るために板張りの覆屋の中に納められており、一見すると他の家屋と区別がつきません。路地を歩いていると、家屋の入口から土蔵の扉が顔を覗かせ、なんとも驚かせてくれます。
写真:木村 岳人
地図を見る宿根木の町並みは、すべて縦板張りで統一されているのが特徴的です。この板張りに使われている板や釘は、なんと船材からのリサイクル。
木造船は、海に浸かっていると「船食い虫」と呼ばれる二枚貝によって穴をあけられてしまいます。なので「包み板」と呼ばれる板材で船体を覆うのですが、この包み板は定期的に張り替える必要があるので、その古材を建材として再利用しているのです。
通常の板張りは、雨水が板の下に入り込まないよう、横板を少しずつ重ねて張る「下見板張り」という張り方が基本。縦板張りにできるのは、防水性の高い船材を使っているからなんですね。
まさに船主・船大工の集落ならではの町並みといえるでしょう。
写真:木村 岳人
地図を見る宿根木には北前船に関わる様々な人々が住んでいましたが、その中でも膨大な財を成した船主たちの家はとにかく豪華。
外観こそ他の家屋と同じく板張りでやや質素な印象ですが、内部は財力を惜しみなくつぎ込んでおり、立派そのもの。漆や弁柄、柿渋が塗られた柱や戸は深いツヤを見せ、重厚かつ豪壮な雰囲気を醸しています。
外観は質素だけど、内部は豪華に飾るというのは、なんとも粋な船主たちの精神性が感じられます。
【公開民家「清九朗(せいくろう)」】
開館期間:4月上旬〜11月下旬(期間外は予約時のみ開館)
開館時間:9時〜16時(時期によって変動)
拝観料:大人400円、小・中学生200円(団体15名以上2割引)
写真:木村 岳人
地図を見る集落の南側を通る「世捨小路(よすてこうじ)」は、昔ながらの石畳が残る、風情たっぷりな路地。擦り減った石畳を歩いてみると、集落の歴史をしみじみ感じることができます。
世捨小路という奇妙な名前の由来ははっきりしていませんが、一説によると集落の最奥に位置する称光寺で葬式を終えた死者が最後にこの小路を通って村に別れを告げることからその名が付いたとか。
この世捨小路以外にも、宿根木には雰囲気抜群な路地がたくさんあります。住民の方に迷惑にならない程度に、集落内をくまなく散策してみてください。思わぬ発見があるはずです。
佐渡島の南端に位置する宿根木は、佐渡市の中心部や金山のある相川からだとやや距離があります。しかし、宿根木のユニークな町並みはわざわざ足を運ぶだけの価値十分。
宿根木の周囲には「南仙峡」や「琴浦洞窟」などといった小木海岸の見どころもありますし、それらとセットで楽しむのが良いでしょう。
また近くには直江津港からのフェリーが到着する小木港もあります。行きは小木港から佐渡島に入り、帰りは両津港から新潟港に出るなど、ルートを工夫するとより行きやすくなります。
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(2024/4/24更新)
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