かつての農風景がここに! 神奈川・茅ヶ崎里山公園で鳥探し

かつての農風景がここに! 神奈川・茅ヶ崎里山公園で鳥探し

更新日:2014/11/15 14:29

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
秋から春先にかけての日本の里山には、涼しい海外や山奥で夏を過ごした様々な鳥たちが冬鳥として飛来します。神奈川屈指の里山・茅ヶ崎里山公園もバードウォッチングに最適のスポット。紅葉、そして落葉により枝が露出し視界が開けてくると、毎年大勢の鳥好き達が集まってきます。木の枝にとまる美しい小鳥から上空を優雅に舞う猛禽類まで、毎年数十種類の冬鳥が観察される茅ヶ崎里山公園。冬ならではの命の息吹を堪能できますよ。

広々とした田畑に隣接する開放的な園路

広々とした田畑に隣接する開放的な園路

写真:鷹野 圭

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バードウォッチングの前に、里山らしい風景写真を1枚。

ここは公園の北側に広がる『畑の村』。その名の通り畑や田んぼが目の前にあり(写真左側・ちなみにここの田畑は私有地です)、まさに在りし日の里山そのものです。昔、子どもたちはこうした環境でトンボやカエルを追いかけたりしたものでしょうが、実際このエリアにはアキアカネやトノサマバッタ、アマガエルなどがたくさん暮らしており、時には首都圏では珍しいニホンアカガエルなども顔を見せてくれます。その分、毒ヘビのヤマカガシなど危険な生きものもいますので、草むらに入ったりするときは要注意。それさえ気を付ければ、のどかな里山の雰囲気と豊かな生物多様性を存分に楽しめることでしょう。

また、このエリアには季節の花が咲くお花畑があり、園の名物となっています。写真は3月に撮影したものですが、菜の花が群生しているのがわかりますでしょうか? このお花畑は、秋になるとコスモス畑に大変身。公園スタッフや地元のボランティアの皆さんによって大切に育てられ、管理されています。すぐ近くにある高台から見下ろすと、まさに花の絨毯が広がっているようで圧巻ですよ。

『芹沢の池』に飛来する冬のカモを撮ろう

『芹沢の池』に飛来する冬のカモを撮ろう

写真:鷹野 圭

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留鳥としてオールシーズン目にすることができるカルガモを除くと、首都圏で観察できる多くのカモは冬場に飛来します。つまり冬鳥。大体紅葉の始まる季節から、菜の花が終わる4月上旬くらいまで池や沼に留まります。ここ茅ヶ崎里山公園では、園のちょうど中央付近にある『芹沢の池』が絶好の観察スポット。冬のカモとしては定番のコガモやマガモのほか、運が良ければ写真(中央)のヨシガモが見られます。ヨシガモのオスは、メタリックな緑色の頭部と燕尾服を思わせる長い尾羽が特徴の、とてもお洒落なカモ。首都圏では飛来する地域がかなり限られますので、これもまた公園の自然環境が健全に保たれている証といえるかもしれません。カモ以外にはカワセミがよく飛来し、魚を捕らえるシーンを見かけます。

ちなみにこの写真は2014年2月に撮影したもの。この時ちょうど関東で大雪が降り、かなり冷え込んで『芹沢の池』にも氷が張ったのですが、こういう時でもカモ達は相変わらず池にぷかぷか浮かんでいます。寒くないんでしょうかね(汗)。

里山生態系の頂点に立つ、カッコいい猛禽類を探そう!

里山生態系の頂点に立つ、カッコいい猛禽類を探そう!

写真:鷹野 圭

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生きものの「食う・食われる」の関係をピラミッド状にまとめた生態系ピラミッドという言葉を、耳にしたことはありますでしょうか? あるいは「食物連鎖」といった方がしっくりくるかもしれません。ここ茅ヶ崎里山公園には植物、昆虫から小動物、それを狙う大型動物など実に様々な生きものが暮らしており、その頂点に立つのがタカなどの猛禽類と、イタチやタヌキなどの哺乳類です。とはいえ哺乳類は夜行性のものが多いので撮影は困難……。一方猛禽類は『芹沢の池』より北側にある『谷(やと)の村』『丘の村』そして先に紹介した『畑の村』によく出没します。

猛禽類はかなり高いところを飛びながら小鳥や小動物を狙うことが多いですが、時には木の枝や地面に降りてくることもあり、そういう時は結構近くで見ることができます(それでも近付き過ぎると逃げてしまうので、ぜひ双眼鏡をご準備ください)。写真は、谷の村の杭の上に降りてきたノスリ。トビを除くと首都圏でもそれなりに見る機会の多い猛禽ですが、それでも自然環境が健全で獲物となる小動物(ネズミやカエルなど)の多い環境でないと暮らせません。まさに自然豊かな里山の象徴といえる生きものですね。

ノスリ以外では、チョウゲンボウやオオタカなどがよく観察されます。可愛らしい小鳥たちとはまた違う、射すくめるような眼光と鋭いクチバシ。足の爪も大きく尖っていて、いかにも痛そうです。そのビジュアルゆえにバードウォッチャーからの人気も高く、茅ヶ崎里山公園は首都圏でも有数の猛禽観察に適したスポットとなっています。

茅ヶ崎里山公園に暮らす、その他の鳥たち

茅ヶ崎里山公園に暮らす、その他の鳥たち

写真:鷹野 圭

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写真はキジ。『谷の村』のバードサンクチュアリのほか、『畑の村』の開けた草原などによく姿を現します。茅ヶ崎里山公園では最も大きい鳥の1つで(時には全長1メートルに及ぶものも)、その豪華な羽の色もあって非常に強いインパクトを残します。一方で臆病な性格をしていますので、見かけたとしても急接近するのは禁物。脅かさないように一定距離を保ち、静かに観察するといいでしょう。主に初春〜初夏にかけて姿を見せてくれます。

この他に小鳥の種類も非常に多く、特に秋から初春にかけては冬鳥たちが園内のあちらこちらに飛来します。黄色い羽根のかわいらしいアオジに、地面に降りて種や木の実を探すアカハラやシロハラ、青い羽根が美しくバードウォッチャーの間でもとりわけ人気の高いルリビタキなど、定番のものから珍しい種までその数は膨大! バードサンクチュアリで定点観察するもよし。園内をぐるりと巡りながら、どの鳥がどんな環境を好むのかを学ぶもよし。ぜひたっぷりと時間をかけて、鳥探しをお楽しみください。

※冬場は冷えますので、防寒用の上着などは忘れずに!

茅ヶ崎里山公園をもっともっと楽しみたい方は……

茅ヶ崎里山公園をもっともっと楽しみたい方は……

写真:鷹野 圭

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写真は、芹沢の池の間近にある『谷の家』。里山の農家の風情を残す展示施設です。9:00〜16:00の時間限定で一般開放されており、大きな蔵や農具の倉庫を始め、建物の中には土間が広がり、かつての農文化を体感できます。カカシ作りなどの農業体験イベントもよく実施されており、中には一般参加できるものもあります(イベント実施日程等につきましては本文下のMEMOをご参照ください)。

この他には、公園の開園を記念してプロのガーデンデザイナーがデザインした、里山ならではの和の情緒を漂わせる記念ガーデン。全長70メートルに及ぶ巨大なすべり台を始め、トランポリンなど様々な遊具があり子どもたちに大人気の『風の広場』。芝生が広がりピクニックに最適な多目的広場など、自然観察の場というだけに留まらない様々なコンテンツが散りばめられています。2014年10月には新しく里山BBQ場がオープン。食材付きで手ぶらでバーベキューを楽しむこともでき、早速大人気の模様です(BBQ場は要予約・期間限定です。詳細は本文下のMEMOをご参照ください)。

1人でも、ご家族や友達と一緒でも、たっぷり時間をかけて楽しめる茅ヶ崎里山公園です。

最後に……

手つかずの自然とは違い、里山とは農家や林業といった「人の手」が加わることで成り立つ環境です。里山は人が暮らす環境ながらも生きものの数が多く、むしろ生きものたちは田んぼや用水路、雑木林などの人の介入によってつくられた空間を巧みに利用して生活しています。言うなれば、人と野生の生きものが共存する理想のスタイル、それが里山なのです。近年そうした里山環境は随分少なくなってしまいましたが、近年では2010年のCOP10などの影響もあり、徐々にその重要性が注目されるようになってきました。特に、今日本のレッドデータブックに掲載されている動植物(すなわち絶滅危惧種)のうち、実に50%近くが里山環境に依存しているというから驚き! 生物多様性の観点から見ても、里山はトップクラスに重要な環境なのです。

ここ茅ヶ崎里山公園は、そうした里山の景観をぎゅっと凝縮して再現したスポット。首都圏では近年あまり見られなくなった生きものが、ごく当たり前のように生息しています。バードウォッチャーの集まる冬場はもちろんですが、春夏秋冬とそれぞれ季節を代表する動植物が姿を見せてくれるため、年間を通じて楽しめます。

「里山は大切だ」「自然との共生を……」と頻繁に叫ばれる昨今、ただそうした声を聞くだけでは実感がわかないかもしれません。そんな方はぜひ一度、茅ヶ崎里山公園を訪れてみてください。里山のどこが魅力か? 何が大切か? 自然と共に暮らすってどんなことか? そうした疑問が一気に解決するはずです。


【所在】
茅ヶ崎市芹沢1030(茅ケ崎里山公園パークセンター)
【アクセス】
JR「茅ヶ崎駅」北口より茅50系統小出二本松経由文教大学行バスで「芹沢入口」下車・徒歩約5分。または小田急・相鉄・横浜市営地下鉄「湘南台駅」西口より湘17系統文教大学行バス「芹沢入口」下車・徒歩約5分

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/11/02 訪問

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