長崎街道の脇街道にあたる多良海道の宿場だった「肥前浜宿」は伝統的な町並みがよく保存されていて、「鹿島市浜中町八本木宿地区」・「鹿島市浜庄津町浜金屋町」の2地区が重要伝統的建造物群保存地区として国の制度のもとで保護されています。
まずは浜中町八本木宿地区へ行ってみましょう。JR長崎本線肥前浜駅から徒歩5分ほどで、交通の便も比較的いいです。重要伝統的建造物群保存地区になる際の種別は醸造町。江戸時代になって街道が整備されると宿場町として栄えた町ですが、のちに酒造が盛んになりました。酒造は現在も行われており、古い大型の酒蔵も見ることができます。見学のできる酒蔵もありますよ。ちなみに醸造町として重要伝統的建造物群保存地区になった町はここが初めてです。文政11 (1828)年にあった大火を契機に防火構造の居蔵造の町家がつくられるようになり、現在にも多く残っています。洋風建築なども残っていて多彩な町並みになっています。
「浜中町八本木宿地区」は集落中心を通る旧街道沿いが見事な町並みですが、ぜひ脇道にも入ってみて下さい。水路と煉瓦壁の間の細い道を進むと、こんな茅葺の建物が。19世紀初期の建築で、宿場には珍しい武家住宅です。
「浜中町八本木宿地区」は浜川左岸の集落ですが、右岸側にも古い町並みが残っています。これが鹿島市のもう一つの重要伝統的建造物群保存地区の「浜庄津町浜金屋町地区」です。浜庄津町と浜金屋町の2つの字からなる集落で、両方から1字ずつとって「庄金」ともよばれる町。全国に残る古い町並みの中でもかなり変わった景観の町で、茅葺の町家が多く残っているのが特徴です(一部はトタンがかぶせてあります)。
町の起こりは浜川の川港の周辺にできた港町で、江戸時代になると商人・船乗りや,鍛冶屋などの職人が住むようになりました。商人が住んだ浜庄津町と職人が住んだ浜金屋町が一つの集落をなして、川港のある在郷町として発展しました。ということで、こちらの重要伝統的建造物群保存地区の種別は港町と在郷町の両方です。
庄金は港町なので、全国的に船乗りが広く信仰する金毘羅さんの神社があります。庄金の集落から国道をはさんですぐ西側の高台にある「事比羅(ことひら)神社」がその神社で、ここからは庄金の町が一望できます。この写真のアングルだとあまり茅葺き屋根が見えませんが、大きな茅葺きの建物が1棟見えると思います。
この写真中心の茅葺民家は棟筋がコの字になったクド造の建物です。「クド」とはかまどのことで、かまどに見立てたコの字型の民家の造りを「クド造」とよびます。「クド造」は佐賀県と周辺県の一部でのみ見られる全国的にも珍しい建築様式です。庄金の町では他にもあるのでぜひ探して見て下さい。ここからは離れますが、クド造民家では「川打家住宅」(多久市)と「平川家住宅」(福岡県うきは市)が国の重要文化財に指定されています。あわせて訪れてみてはいかがでしょうか(うきは市はちょっと遠いですが)。
鹿島市に隣接する嬉野市にも重要伝統的建造物群保存地区があるので、こちらもあわせての訪問をおすすめします。
「嬉野市塩田津地区」は、長崎街道の宿場と塩田川の川港の港町の両方の役割を備えた町でした。写真は旧街道沿いの町並みで、宿場町らしく町家が多く残っています。先に紹介した「浜中町八本木宿」と同様に居蔵造が多いです。写真右手前の町家は重要文化財の「旧西岡家住宅」。江戸末期の建物です。ちょっと前まではあらかじめ連絡をしないと見学できなかったのですが、最近は土・日曜に公開されるようになったのでぜひ見学していって下さい。
この通りの東側(写真右側)にはすぐ川があって、この川に川港の機能が整備されていました。現在にも石垣や石段、洗い場などが残されていて、川港の町の独特な景観となっています。この川港を拠点に米、陶磁器、陶石などが運ばれていました。
塩田津はJRの駅からは少し遠く、肥前鹿島駅前の鹿島バスセンターから祐徳バス嬉野線でのアクセスとなります(嬉野市役所下車)。時刻表は下のメモ欄のリンク参照。
佐賀県の重要伝統的建造物群保存地区3件を紹介してみました。時間があれば佐賀県のもう1件の重要伝統的建造物群保存地区の「有田町有田内山」も訪れてみて下さい。焼き物で有名な製陶町なので、ここで紹介した町とはまた違った雰囲気です。
3地区への交通は鉄道とバスも使えますが、本数が限られるのであらかじめ発着時刻を確認しておいたほうがいいです。車の運転ができるのであればレンタカー使用などが便利です(どちらも無料駐車場あり)。
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(2024/4/20更新)
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