沖縄・久高島で自然に還る!島のガイドとまわる聖域

沖縄・久高島で自然に還る!島のガイドとまわる聖域

更新日:2014/11/11 11:20

沖縄本島の東側に位置する小さな島、久高島は、島内全体が聖域といえる特別な地です。今でも、年間30回近くの伝統行事が行われ、神様とともに人々の暮らしがあります。

かつて、12年に一度行われた「イザイホー」祭は有名です。島で育った女性が、神女となるための就任式。神女は、家族や島を守り、男たちは、海へ出て漁をし、生活を支えます。島のおきてや、歴史を教えてくれるガイドとまわれるスポットをご紹介します。

魂が帰る場所であるニライカナイをのぞむ、伊敷浜は海の畑!

魂が帰る場所であるニライカナイをのぞむ、伊敷浜は海の畑!
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久高島の観光の窓口となっているのは、事務所を久高島宿泊交流館に持つ、「久高島振興会」です。ここで、ガイドを紹介してくれます。時間に合わせてコースを組んでくれますので、ご相談くださいね。今回ご紹介するのは、3時間でまわれるコース。島の南から北までを案内してもらえます。

沖縄本島からの船で到着し、まず向かうのは島の東側にある、伊敷(いしき)浜です。久高島では、太陽が昇る方向は聖なるところとされています。この伊敷浜は、神聖な浜として、儀礼がおこなわれる場所となっています。魂が生まれ、帰る場所も東方であり「ニライカナイ」というあの世があると伝わっています。

浜へ出ると、自然ととても厳かな気持ちになります。サンゴの化石が砂浜にいくつもころがっています。きれいだな、と思っても決して持ち出してはいけません。島にある物はどんなものも、外部へ持ち出しできません。「決まりを破って、石を持ちだした人の車がパンクしたことがありますよ。」とガイドさん。地元の人でないとわからないことも、ガイドさんを通して聞くことができます。

伊敷浜は、潮が引くと波打ちぎわから2〜300メートルも歩けるようになります。浅瀬には小魚が泳ぎ、貝などがたくさん獲れることから、海の畑と呼ばれています。貝をひろうのは、主に女性の仕事だったそうです。イノーと呼ばれる、サンゴ礁の遠浅の海です。

大事な穀物を海から受け取った、大里家(うぷらとぅ)

大事な穀物を海から受け取った、大里家(うぷらとぅ)
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土が浅く、畑作には向かない久高島では、漁業が盛んです。それでも、麦、アワ、ヒエ、豆などの穀類はよく育ち、大切な食料でした。

この穀類伝来の神話が語り継がれています。昔、大里家(うぷらとぅ)にシマリバー(女)とアカツミー(男)が住んでいました。ある日、アカツミーが伊敷浜で漁をしていたら、白い壷が流れてきました。なかなか取れないので、一度家に帰ったところ、シマリバーが身を清めて、白い着物を来ていったら取れる、と教えました。アカツミーがその通りにしたところ、壷を取れたということです。その壷のなかには、麦、アワ、ヒエ、アラカ、豆などの種が入っており、島中にひろまったということです。

その大里家が今も残っており、五穀の神様が祀られています。周囲の雰囲気が神聖なだけでなく、家を取り囲む、しっかりと組まれた石壁は見事です。

琉球の始祖アマミキヨがやってきたという、カベール岬

琉球の始祖アマミキヨがやってきたという、カベール岬
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島の北端に、カベール岬があります。ごつごつごした岩肌がむきだしの、自然のままの岬です。琉球の創世神アマミキヨがこの岬にやってきて、国づくりを始めたと言い伝えられています。

ここでは、大漁祈願の行事が行われます。漁労のお祭を司るのは、ソールイガナシーと呼ばれる、漁労にたずさわる男たちを代表する神職者です。ソールイガナシーは、女性神職者であるノロに大漁祈願の依頼をして、行事をとり行います。

ヒータチと呼ばれるこの祈願は、旧暦の1月か2月吉日になされます。
女性しか入れない、島の拝み所である、フボー御嶽(うたき)で禊(みそぎ)をしたあと、カベール岬へと向かいます。全身を白に包み、頭には白ハチマキとつる草を巻き、つる草を束ねたものを持ち、海を背にして立った姿は神がかっていたといいます。岬に立って、神女たちが神歌を歌います。

そのさまは荘厳で、「神様がいるというのは考えなくてもあたりまえのことだと誰もが体に染みわたっていた」とガイドさんは語ります。

風がふきすさぶ、けれども穏やかで濃く青い海を眺めながら、偉大なものの存在を感じずにはいられません。

県指定の天然記念物の群生を楽しむ!

県指定の天然記念物の群生を楽しむ!
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島の北側に向かう道沿いは、ちょっとした森になっています。背が高い、ヤシに似た植物は、クバです。神様が降り立つ神聖な木とされています。独特な熱帯の雰囲気をかもしだしています。県の天然記念物となっています。

同じく、天然記念物に指定されているのが、モンパノキです。海岸の砂地に見られます。2〜5メートルの高さで、その幹は中が空洞なことから、水中メガネの枠の材料に利用されます。本当に真ん丸です。

パイナップルに似た実をつける、低い植物は、アダンです。熟すと実が落ち、ヤシガニのエサになります。アダンの実が落ちていたら、近くにヤシガニがいるかもしれません。

つる草の、トウツルモドキは、葉は笹ににていますが、濃い緑色をしていて、お祭のときの儀礼のときに頭に巻くなどして使われます。

ほかにもまだまだ多様な植物が生えています。ゆっくりじっくり、観察しながら歩いてみてくださいね。

島ならではの料理をいただきましょう!

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「食事処とくじん」では、島ならではの料理をいただくことができます。おすすめは、日替わり定食。お刺身や海ぶどう、もずくの天ぷらなど海の幸を存分に味わえます。

古くから食べられているお祝いの料理「ニガナ和え」もいただけます。島内どこにでも生えているニガナという、草の一種を独特の切り方で整え、お刺身と和えたものです。ニガナという名前の通り、苦みが特徴ですが、食べやすく調理されていますので、さっぱりおいしく楽しめます。体にも良いそうです。

体に良いといえば、島の名物・イラブー汁です。イラブーは海蛇のことで、食べると血のめぐりがよくなり、免疫力が高まります。久高島では、神様からの贈り物と考えられていたそうです。漁でとれたイラブーは、島にあるイラブー燻製小屋で生きたまま保管され、数日かけて男たちによって燻製にされます。燻製イラブーを煮込んだものが、このイラブー汁。旅で疲れた体に一杯いかがでしょうか。

周囲8キロの小さな島ながら、語りきれない歴史がたくさん!

久高島の島内には説明看板などはありません。ただ、海があり、植物があり、家があり、拝み所があり、広場があり――自然と生活空間がひろがっています。看板はないけれど、そこには語りきれない歴史と人々の思い、伝説が存在しています。また、守るべきこともたくさんあります。

地元の人でないとわからないことがたくさんありますので、ぜひ島のガイドさんと一緒にまわることをおすすめします。きっと濃く、魂に響く旅になることと思います。

島内には民宿が数件あり、島のガイドさんを紹介してくれる久高島振興会が運営する久高島交流館にも宿泊できます。ガイドさんを頼むときは、予約制となりますので、電話でお問い合わせくださいね。

久高島へのアクセスについては、沖縄本島南部の安座真港から定期観光船が就航しています。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/10/17 訪問

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