クラシカルホテル建物探訪 箱根・宮ノ下「富士屋ホテル」

クラシカルホテル建物探訪 箱根・宮ノ下「富士屋ホテル」

更新日:2014/08/12 12:58

鮎川 キオラのプロフィール写真 鮎川 キオラ 子どもの好奇心を育てる旅育ライター、ホテル朝食研究家
創業明治11年、箱根・宮ノ下に威風堂々と佇む「富士屋ホテル」。5,000坪の敷地には、本館、西洋館、花御殿、フォレストロッジ、別館・菊華荘の5つの建物があり、その内4つが国の文化財に指定されています。日本が誇るクラシカルホテルへ建物探訪の旅へ出かけてみませんか。130余年の歴史を優しく語りかけてくる上質な空間をお楽しみください。

関東大震災に耐えた本館

関東大震災に耐えた本館

写真:鮎川 キオラ

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箱根・宮ノ下においてひときわ異彩を放つ「富士屋ホテル」は、各国の皇室をはじめ、ヘレンケラーやチャップリン、ジョンレノンなどの著名人も宿泊した由緒あるクラシカルホテルです。

旅の醍醐味は、非日常を感じること。クラシカルホテルが持つ独特の雰囲気は、時計の針を巻き戻してくれます。旅行という娯楽がまだ庶民に許されていなかった時代の上流階級の香りが漂う上質な空間は、日々の喧騒を忘れてしまう非日常を演出してくれます。

お客様をお迎えする正面玄関となる本館は、明治24年に建てられました。瓦屋根のどっしりとした社寺建築です。あの関東大震災の際も窓ガラス1つ割れなかったそうですよ。

「富士屋ホテル」との名前から、さぞかし美しい富士山を望むことができると思われる方も多いようですが、実は富士山をホテルから望むことはできません。創業当時、箱根の老舗「藤屋旅館」を買い上げて営業を開始したことからこの名前が付けられたそうです。創業時の建物は大火に遭い、消失してしまいましたので、その後に建てられた本館が一番古い建物になります。

格調高いロビー

格調高いロビー

写真:鮎川 キオラ

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レトロな回転ドアを抜け、建物の中に足を踏み入れてみると、とってもいい香りがすることに驚きます。「何だろうこの香り」と香りの正体を突き止めたくなってしまいます。ホテル全館、「富士屋ホテルブレンド」と呼ばれるアロマを焚いてお客様をお迎えしています。ヒノキと柑橘系の香りをブレンドした心地よい香りです。リピータの方は、この香りを嗅ぐと「富士屋ホテルへ来た!!」と思うほど控え目ながら思い出に残る香りです。

フロント前には、優雅な曲線の手すりが印象的な大階段、源頼朝が富士の巻狩りをする様子を描いた一枚板の彫刻など、格調高い彫刻やインテリアに彩られた空間に心がときめきます。じっくり時間をかけて鑑賞したくなる格調高いロビーです。

毎日午後4時、ロビー集合でホテルスタッフによる館内案内ツアーが開催されています。ホテル創業のエピソードや建物の特徴などをわかりやすく説明してくれますのでお勧めです。ホテル主催の案内ツアーは宿泊者限定となりますが、館内案内付き日帰りツアーを企画している旅行会社もありますので確認してみてくださいね。

窓辺が一枚の絵になる

窓辺が一枚の絵になる

写真:鮎川 キオラ

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建物そのものが文化財の歴史ある富士屋ホテルは、館内探検が楽しいホテルです。ロビーやレストラン、庭園などは、日帰りでも自由に見学、利用できますが、それ以外の場所は宿泊者限定の空間となりますので、ぜひ宿泊して思う存分探検することをお勧めします。

花御殿へと続く廊下には、三井萬里が描いた絵や宿泊した著名人のセピア色の写真が飾られ見所満載です。西洋館の格子の上げ下げ窓や、花御殿の大きな窓から眺める箱根の自然は、うっとりするほど美しいですよ。

探検していると面白いことに気がついたりします。西洋館の客室のドアノブは、ありえないくらい下についていて、反対に花御殿のドアノブは、かなり高い位置についています。「なぜ??」。下についているのは、給仕する方が正座してドアを開閉した名残とされ、上についているのは、背の高い外国人に配慮されたからだそうです。

花をモチーフにした花御殿

花をモチーフにした花御殿

写真:鮎川 キオラ

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昭和11年に建てられた「花御殿」は、全ての客室にはそれぞれ花の名前がつけられています。各部屋のインテリアは、名前のついた花のモチーフで統一されています。客室のドアには、三井萬里が描いた花のモチーフが描かれていますので、各部屋のドアをひとつずつ巡ってみるのも楽しいですよ。

伝統を受け継ぐ「おもてなしの心」

伝統を受け継ぐ「おもてなしの心」

写真:鮎川 キオラ

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昭和5年に建てられたメインダイニングルーム「ザ・フジヤ」のある食堂棟は、ホテルのおもてなしの心が詰まった建物です。

ゆったりした空間を演出する天井高5.5m、サーブされるコース料理のお皿とお皿の間も退屈させない格天井に描かれた636種類の植物、573匹の鳥の彫刻が見事な空間です。

部屋の柱には、このクラシカルな空間に不釣合いな鬼の形相でギロリと睨む彫刻がほどこされています。この食堂棟や花御殿を建設し、富士屋ホテルを盛り上げた三代目山口正造氏の顔になるそうです。

何でこんな怖い形相で睨むのでしょう?その睨みは、お客様ではなく働くホテルマンへ向けられているそうですよ。どんなにすばらしい施設や美味しい料理が用意されていてもお客様をお迎えするスタッフのサービス如何で良くも悪くもなることを常々説いていたそうです。

確かに、伝統や格式の人気にあぐらをかかないホテルマンのお客様への対応は素晴らしいものでした。今なお憧れのクラシカルホテルとして伝統を受け継ぐ為にはスタッフひとりひとりのおもてなしの心があってこそなのです。

箱根の宿泊先に悩んだらぜひ選んでみてはいかがでしょうか。ゆったりとした時間の流れと心地よいサービスで出迎えてくれる期待を裏切らないホテルです。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2012/11/16−2012/11/17 訪問

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