「鹿の角切り」とは、ただ単に鹿の角を切る行為ではなく、江戸時代から脈々と受け継がれてきた奈良の秋を代表する伝統行事です。
奈良公園内に生息する鹿は国の天然記念物にも指定されており、春日大社では昔から神の使いである神獣として神聖視されてきました。
しかし秋になると牡鹿は発情期に入るため気性が荒くなり、牡鹿同士で角をつきあって死傷したり、人を傷つけてしまうという事故が多発。そのため、江戸初期から町の中で角切が行われるようになり、昭和4年頃からは鹿園の角切場にて神官がノコギリで角を切るという年中行事へと変わっていきました。
現在は、奈良の鹿愛護会の皆さんが公園内をパトロールしつつ、牡鹿をみつけ次第麻酔を打って角を切っていますが、そのうちの何頭かが神事用に捕獲されることになっています。
鹿の角切り神事は、昼12時から第一回が始まり15時頃に終了するまで、ほぼ30分間隔で客が入れ替わり、何度か行われます。一番混雑するのがやはり初回。開場は11:30ですが、30分〜1時間前にはすでに行列が出来始めるので、初回に入りたい場合は早めに並んでおくのがベター。
場内は完全入れ替え制ですべて立ち見席。段差があるので後ろの場所でもよく見えますし、場内には二本の杭が打たれており、どちらの場所でも角切りが行われます。
また、行事前にアナウンスがありますが、三脚や日傘は禁止です。秋とはいえ陽射しが強いので、帽子やサングラスなどがあるといいかもしれません。
だいたい30分ぐらいで終わりますが、鹿次第なので、なかなか捕まらない時など時間が押すこともあるので、この後のスケジュールには少し余裕をもっておくといいでしょう。
初回入場の場合は、開場後まず安全祈願が行われます。(二回目以降は角切神事がすぐに行われます)
祈祷後、すぐに法被を着た勢子によって複数頭の鹿が場内に入れられると、別の勢子が鹿を追い込みつつ十字と呼ばれる捕獲具を使って上手に縄を鹿の角にひっかけて捕獲します。
しかしながら、鹿も角を切られたくないため必死に逃げるのでなかなか捕まえられないことも多く、観客もドキドキしながら勢子と鹿の攻防を固唾を呑んで見守ります。そんなときは、解説の方がユーモアたっぷりに喋って場内を沸かせてくれます。
一頭捕獲するとすぐ場内の真ん中を紅白の幕で分け、他の鹿に見えないようにします。そしてゴザをひいたところに鹿を置いたら、神官が興奮した鹿を落ち着かせるため水を一口飲ませ、おもむろに二本の角をノコギリで切り落とします。これを他の鹿にも行い、最後は角を神前にそなえれば行事は終了です。
神事終了後には、奈良公園内にいる鹿との触れ合いも楽しんでみましょう。
公園内の鹿たちは野生の鹿なのですが、基本的に人懐こくてぐいぐい寄ってきます。特に鹿せんべい屋さんの周囲にいる鹿は、せんべいがもらえると知っているからか、持って近寄っただけでわらわらと寄ってきてよだれをつけたりシャツを噛んだりすることもあり、慣れていないとちょっと怖くなるほど。
初心者は鹿せんべいを買ったら、できるだけ隠しつつあまり鹿がいない場所に行って、一枚ずつそっとあげるようにするといいでしょう。
せんべいが無くなったら、すぐにぱっと両手を上にあげて「もう無いよ!」と教えてあげると、鹿もあっさりと諦めてくれますよ。
鹿の角は、カルシウムなどが沈殿し骨のようになったもので、人間でいうと爪のようなものです。ですので切っても痛みはありません。
実は放っておいても自然にぽろりと抜け落ち、毎年生え変わるものですが、前述のように放っておくと牡鹿同士が傷つけあったり人を傷つけたりするため、それを防ぐために角切りという行為が必要になります。
この神事は、鹿とともに生き、鹿とともに暮らしてきた奈良ゆえに生まれた伝統行事とも言えるかもしれません。ぜひ一度、300年以上続く儀式をその目で見てませんか。
[2014年の開催情報]
2014年10月11日(土)〜13日(月・祝)12:00-15:00
チケット料金 大人 1000円 子ども500円
※神事の詳細は公式サイトに掲載されています。チラシもpdfで用意されているので参考にしてみてください。
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(2024/4/19更新)
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