デパートが文化財!?素敵なバラの包の贈り物・日本橋高島屋

デパートが文化財!?素敵なバラの包の贈り物・日本橋高島屋

更新日:2014/10/02 15:16

Naoyuki 金井のプロフィール写真 Naoyuki 金井 神社・グルメナビゲーター
「今、百貨店が面白い」といった使い古されたコピーが再び使われるようになった百貨店業界。あの手、この手でオリジナリティを演出し集客に結び付けようと躍起になっています。
その中で、日本橋の老舗百貨店「高島屋」は、百貨店としては日本で唯一国の重要文化財に指定され、これを機に実施されている「高島屋東京店重要文化財見学ツアー」が人気を呼んでいます。
今回は、デパートでは珍しい見学ツアーをご紹介いたします。

建築家の贈り物

建築家の贈り物

写真:Naoyuki 金井

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江戸時代末期に大阪で創業した高島屋が、高島屋日本橋店を開店したのが昭和8年。当時のキャッチコピー「東京で暑いところ、高島屋を出たところ」は、当時としては珍しい全館冷房装置がついていたことをアピールしていました。

当初は日本生命のビルでしたが、日本生命が転出後、高度成長期と相まって増築を4期に亘り行いました。
創業時の設計は高橋貞太郎で、増築の設計は村野藤吾という違う設計士でしたが、結果としてこれが現在の重要文化財に指定される要因となったのです。
つまり、高橋による和洋折衷の意匠を継承しつつ、近代建築の手法で4期に亘る増築が、初期の設計と一体となった高い完成度をもつ建築物であるという理由で評価されたからです。

その増築跡は外観からは、説明されなければ判らない程の跡しか残されておらず、建築に詳しくない人でも充分その魅力を感じられるのです。
一方、館内も大理石の柱の並ぶ吹き抜けや、案内係が手動で操作するエレベーターなど、創業時から変らない魅力も沢山残されており、建築の美を充分堪能できる文化財なのです。

クリスマスの贈り物

クリスマスの贈り物

写真:Naoyuki 金井

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高島屋の隠れた人気キャラクターが「ローズちゃん」です。
昭和34年に宣伝部の発案により、クリスマスセールの装飾用マスコット人形として誕生した「ハッピーちゃん」が前身で、昭和37年の聖歌隊のキャラクターから「ローズちゃん」の愛称となり、現在でも続いており50数年の歴史を誇ります。

コンセプトは「頭でっかちで大きな出っ尻」の三頭身で、歳時記にあわせたローズちゃんが出現しました。
カルダンローズちゃん(66年)、舞妓ローズちゃん(73年)、サッカーローズちゃん(日韓W杯/01年)、アスリートローズちゃん(アテネ五輪/04年)、千利休ローズちゃん(06年)といったように、現在までに少なくとも120種類のローズちゃんが世相や地域とともに親しまれたのです。
また、かつてはTV番組「ロンパールーム」のスポンサーだったことから、番組の最後に、歌を唄ううつみみどり先生に抱かれていたこともありました。

一般には販売されていないながら、隠れた人気を呼び、現在、オークションなどで高値がついているそうです。
写真は冬服ですが、季節によって変るファッションも見逃せませんね。

古代の贈り物

古代の贈り物

写真:Naoyuki 金井

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「アンモナイト」は、古生代の中頃に出現し、約3億5000万年ほど海中に生息していた有殻の頭足類の化石で、全ての種類が平らな巻き貝の形をした殻を持っているのが特徴です。
この化石がイタリア産の大理石に多く見られるのは、アンモナイトが生きていた当時のアルプス山脈や、その南側の地域が深い海になっていて、そこに石灰質の泥がたまり、時折アンモナイトの遺骸が紛れ込んだためなのです。

そのイタリア産の大理石を多く使用したのが、この高島屋で、特に階段には大小さまざまな約200〜300の化石が見られます。
また、大理石の中には「ベレムナイト」と呼ばれる、アンモナイトと同様の頭足類に属する、いわゆる「イカ」の祖先のような化石も見ることが出来ます。

文化財のみならず、当時の贅を尽くした建築の歴史と、太古の歴史を一緒にデパートで垣間見られるのも珍しいことで、階段の横にある木のように見える大理石の壁などとともに、建築資材に驚かされます。

タイの贈り物

タイの贈り物

写真:Naoyuki 金井

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戦後、日本に残った象は殺処分を逃れた名古屋東山動物園のマカニー、エルドの2頭だけでした。
都内に象がいないということで、1949年にタイから贈られた3頭の像のうちの1頭が、当時取引のあった高島屋にやってくることになりました。
生後8ヶ月、体重約560キロの小象は、一般公募で「高子」と命名されました。公開前に飼育小屋のある屋上までクレーンで吊り上げられたことが話題を呼び、初日にはなんと約17万人が押し寄せたのです。

高子は非常に芸達者で、おすわり、ラッパ吹き、旗振りなど数多くのレパートリーを持ち子供に大人気でしたが、高子の体重が1トンを超えるようになると屋上で飼うのは困難となり、4年後、上野動物園に引き取られたのですが、その際は、階段を歩いて降りたのです。その後、多摩動物公園へ移り1990年に亡くなりました。

その高子の名残が屋上にあります。
屋上の搭屋のフォルムが、まさに高子そのもので、上野動物園に引き取られる際に記念して作られたものです。
子供達の笑顔と歓声、そして得意顔の高子が見えるかも知れませんね。

高島屋の贈り物

高島屋の贈り物

写真:Naoyuki 金井

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ご紹介したほかにも、鉄扉のデザイン、水飲み場跡、漆喰の格天井、バルコニーの塑像、エレベーターの絵画などなど見所は沢山あり、歴史とアートを充分堪能できること間違いありませんが、参加の際に頂く資料にも見所があります。

資料の中には高島屋催事の招待券などとともに、与謝野晶子の短歌が添えられている開店当時の建物の絵葉書があります。
これは与謝野晶子が、大正7年から高島屋の新作着物の発表会「百選会」の顧問を務めていたことから詠われたものです。

「高島屋 光る都の面積を 加へたるかな 楼を重ねて」

苦労の「労」と楼閣の「楼」をかけて詠ったそうで、当時の壮大さと歴史を感じさせる短歌です。
写真と共に、全集などには掲載されていない貴重な和歌の嬉しいプレゼントです。
また、最後には参加の記念として、高島屋のピンバッチもいただけるサプライズもあります。

決して高価なものを戴くわけではありませんが、デパートらしいホスピタリティに溢れた大満足のツアーです。

おわりに

この「高島屋東京店 重要文化財見学ツアー」は、毎月第2金曜日に実施されています。勿論、無料ですが予約が必要です。
オフィシャルに告知はしていないようなので申し込み先を記載しておきます。

日本橋高島屋 重要文化財見学ツアー
■毎月第二金曜日 午前11時/午後3時
■ご予約:(03)3211-4111 重要文化財見学ツアー係まで

今回ご紹介した場所は、特別な場所ではなく店舗フロアですので、説明はありませんがツアーでなくとも見ることはどなたでも可能です。しかし、ショッピングのついでに見学されるのも良いですが、都合が付けばツアーに参加されたほうが、2倍、3倍楽しめること請け合いです。

※上記連絡先や今回ご案内した内容、及びプレゼント品などは、あくまで取材時のもので変更になることもありますので、予めご承知置きください。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/09/12 訪問

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