しまなみ海道・生口島〜平山郁夫画伯を育んだアートな島〜

しまなみ海道・生口島〜平山郁夫画伯を育んだアートな島〜

更新日:2018/10/26 15:12

村井 マヤのプロフィール写真 村井 マヤ 中国・九州文化的街並探検家
平山画伯の故郷がある生口島は、広島県尾道市瀬戸田町にある島で、しまなみ海道の本州側から3番目の島になります。平山郁夫画伯が生まれ育ったこの美しい島は、有名な寺も多く寺巡りも楽しめる場所です。最近はレモンで有名な島になりました。平山郁夫美術館では画伯の子供のころの作品なども見ることができますよ。今回は、そんな平山画伯が見たであろう美しい風景や、島と海に点在する芸術作品を見ながら島を巡る旅です。

あれ?遠くに見えるのはひょうたん島・・「波の翼」きらめく

あれ?遠くに見えるのはひょうたん島・・「波の翼」きらめく

写真:村井 マヤ

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尾道市瀬戸田町の生口島(いくちじま)をサイクリングやドライブをしていますと、海岸や島の至るところにオブジェを見つけることができるでしょう。

これは、「島ごと美術館」の作品なんですよ♪全部で17の作品があるのですが、作品を巡りながら島を一周することができるんです。この素敵な試みは、1989(平成元)年から始められました。世界一小さなアートプロジェクト「瀬戸田ビエンナーレ」によって設置された、遊び心あふれ、島の風景に溶け込んだ芸術作品ばかりです。

生口島の「島ごと美術館」の特徴のひとつは、作家自らが作品の設置場所を選び、その場所にふさわしい・・もしくは自分の作品のイメージに近い場所を選んで設置されている点。

写真の作品は、作品番号でいうと9番の「波の翼」、新宮晋(しんぐうすすむ:1937-)氏の作品です。新宮氏は、風と水の彫刻家として知られています。白い三角の帆を組み合わせたようなこの作品は、ほんのわずかな風にもひらひら舞い、幾何学的な形が、海や空、島々や船などの風景に溶け込んで、見る側の想像力を刺激してくれます。

穏やかな瀬戸内海に浮かぶオブジェから、訪れた方が思い思いに空想できるのも素敵♪

美しい橋も一緒に〜空に線を描く彫刻ステンレスワイヤーの美

美しい橋も一緒に〜空に線を描く彫刻ステンレスワイヤーの美

写真:村井 マヤ

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橋を見渡せる防波堤の上に設置された写真の作品は、10番の「うつろひ」。

宮脇愛子(みやわきあいこ:1929-)氏のステンレスワイヤーを使った作品。「秋草の美学」や「うつろひの美学」など、日本美術史の中にある概念の一つを作品のタイトルにしたのだそうです。宮脇氏の作品は、線の彫刻で、空間に自由に線を描くイメージで作られているとか・・。不思議だけど違和感なく、風景も含めてまた別の芸術作品としての存在感もあり!遠くに見える多々羅大橋も含めて美しい・・。

サンセットビーチにすくっと立つ青いメガネ?何が見えるの?

サンセットビーチにすくっと立つ青いメガネ?何が見えるの?

写真:村井 マヤ

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「波の翼」を海沿いにサンセットビーチへ向けて行くと、ビーチの外れに何やら見えてきますよ。青いのっぽなメガネ?と両脇に小さな黄色いメガネ?

勝手にメガネといいましたが、こちらの作品番号8は、松永真(まつながしん:1940-)氏作「千里眼”のぞいてみよう、瀬戸田から世界が見える。”」です。松永氏の仕事は、グラフィックデザイナーとして資生堂のサマー・キャンペーン、ベネッセ、身近なところでは、ティッシュペーパー「スコッティ」のデザインを手掛けるなど多数あります。

海を背景に、遠くに見える「何か」を感じることができるのではないでしょうか?海には、そんな力があるのかも知れませんね。

夏は飛び込み台!秋は観月会の舞台に?「ベルべデールせとだ」

夏は飛び込み台!秋は観月会の舞台に?「ベルべデールせとだ」

写真:村井 マヤ

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「島ごと美術館」16番の作品。実はこの作品砂浜から近い場所に設置されていて、よーく見ますと階段があります。少し泳いで階段から作品の輪っかの部分に上ることができるのです。

夏の海水浴シーズンに訪問されて、水着をお持ちなら近くまで行ってみてくださいね♪

作品を作ったのは、建築家で彫刻家の川上喜三郎(かわかみきさぶろう:1945-)氏。1979年に王立英国建築家協会会員となって以降、81年ロンドンにある世界有数の建築教育大学AAスクールで紙彫刻展を開催し彫刻家デビュー。82年から94年までAAスクール教授も務めています。主にイギリスと日本を拠点に建築、彫刻作品を制作しています。

この作品は、川上氏のお気に入りの作品なんだそうです。

平山画伯が幼いころ見た風景・・瀬戸田水道と高根島を望む♪

平山画伯が幼いころ見た風景・・瀬戸田水道と高根島を望む♪

写真:村井 マヤ

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生口島の生んだ偉大な画家平山郁夫氏は、美しい瀬戸内海の風景を幼心に刻んで育ったのです。そんな平山画伯が眺めたであろう瀬戸内海の風景を眺めてみませんか?

瀬戸田町沢にある平山郁夫美術館から、瀬戸田町歴史民俗資料館に向かって行くと、オレンジ色の高根島にわたる橋が見えてきます。この橋の麓には、瀬戸内海に多く見られた「石風呂」跡なども見られます。

石風呂は、瀬戸内海沿岸地域に昔は多くあったという天然の岩などをくり貫いて作った蒸し風呂のこと。現在は、4つほど残っているようですが実際に営業しているのは、広島県竹原市の一か所だけです。

この石風呂については、下記MEMO「瀬戸内海の天然アマモを敷き詰めた、超貴重な石風呂「岩乃屋」【広島県竹原市】」を参照のこと。

瀬戸内海の様子を、平山氏は「海をじっと見ていると、潮の干満によって、海が流れるのがわかります。満ち潮の時は西から東へ、引き潮の時には東から西へ、厖大な量の海水がまさにとうとうと流れるのです」と表現されました。海は流れるものだとは、瀬戸内海の島々独特の表現ですよね。

写真は、平山氏の生家近くの海岸線から高根島方面を撮影したもの。流れる潮流を見ることができますよ。

「島ごと美術館」は、生口島の風景そのもの・・

「島ごと美術館」の17作品をすべてご紹介できませんでしたが、どれも素晴らしい作品です。下記MEMO「島ごと美術館MAP」を参考に巡ってくださいね。どの作品も、生口島の美しい風景と調和しています。

また、平山画伯が「海が流れる」と表現された瀬戸田水道(高根島と生口島の間)の様子もぜひご覧ください。「本当だ・・」ときっと思われますよ♡

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/08/19 訪問

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