広島県・鞆の浦で酒蔵めぐり〜あのペリー提督も飲んだ?保命酒って

広島県・鞆の浦で酒蔵めぐり〜あのペリー提督も飲んだ?保命酒って

更新日:2018/10/26 14:56

村井 マヤのプロフィール写真 村井 マヤ 中国・九州文化的街並探検家
福山市鞆の浦は、潮待ちの港として古代より栄え、歴史ある港町です。この鞆の浦に幕府にも献上された「保命酒」というお酒があります。
保命酒は、大阪の漢方医・中村壌平利時の息子吉兵衛吉長が、家伝の薬法をもって万治2(1659)年3月に製造販売したのが始まり。元々鞆の浦で造られていた「吉備の旨酒(味醂酒に準ずるもの)」に16種の薬味を加えた薬味酒です。
今回は、この「保命酒」の蔵元を4軒巡る旅をご紹介♪

禁裏・幕府への献上品「保命酒」は、黒船来航の際は接待酒だった?!

禁裏・幕府への献上品「保命酒」は、黒船来航の際は接待酒だった?!

写真:村井 マヤ

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江戸時代初期、万治2(1659)年に大阪より移住した漢方医の息子中村吉兵衛が初めて保命酒の製造販売に着手しました。当時の鞆の浦は、瀬戸内海の港町として人や物が集まっており、醸造のノウハウも集約され醸造業が栄えていたそうです。そこに漢方の知識が加わって「保命酒」が誕生したのです。

写真の蔵元は「岡本亀太郎本店」です。こちらの立派な門構えは、なんと「福山城東長屋門遺構」を移設したものです。そういう観点からも見応えのあるお店です。
岡本家は、江戸時代後期の安政2(1855)年に清酒業をおこし、明治を迎え、明治時代後期の明治33年に暖簾を下ろされた中村家から、伝統の技や道具一式も譲り受け、保命酒醸造に本格的に乗り出したのです。岡本亀太郎本店には、「龍に守られた大きな保命酒の看板」もありますが、これは中村家より譲り受けた由緒正しいものです。

ちなみに、中村家の住宅でもあったお屋敷は、明治に入って廻船業を営んでいた太田家に継承されました。現在は、「太田家住宅」として鞆の浦の豪商の暮らしぶりを垣間見る展示施設として、重要文化財にも指定されています。保命酒を造っていた蔵元のお屋敷で、七卿落ちの舞台でもあり、拝観(有料)できますので、是非豪商の邸宅をご覧下さい。江戸時代の鞆の浦の繁栄ぶりを知ることができるでしょう。

保命酒は、福山藩主阿部正弘公の時代に禁裏幕府への献上品となりました。諸大名間の贈答用にも用いられたようです。黒船ペリー来航の際には、老中首座でもあった阿部正弘公は、ペリー提督や初代領事ハリスらの「幕府接待酒」として保命酒を用意したそうです。ペリーはどんな感想を抱いたのでしょうね・・。

保命酒の生薬ってどんなもの?

保命酒の生薬ってどんなもの?

写真:村井 マヤ

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保命酒は、体のバランスを整える生薬16種の草根木皮を酒精に浸し、時間をかけてじっくり抽出したもの。写真左側の「保命酒屋」鞆酒造株式会社さんで販売されている保命酒は、「十六味保命酒」とシンプルな瓶に商品ラベルが貼られているので、それが目印。

伝統の味を受け継いだ素朴な味わいです。使われている生薬をちょっとだけご紹介します。
・地黄(じおう)・・保命酒の主薬。貧血、吐血、子宮出血、解熱鎮静剤として利用されます。
・沢瀉(たくしゃ)・・サジオモダカ。漢方では、重要な水の代謝が悪いものに効く薬剤で、胃アトニーを訴える方、低血圧症の方にも用いられます。
その他、丁子(ちょうじ)、縮砂(しゅくしゃ)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)など全部で16種。

明治まで専売制だった保命酒が複数の業者に引き継がれ、鞆酒造株式会社は明治12年より保命酒を造り始めたそうです。鞆酒造株式会社の保命酒屋のお隣は、先述した重要文化財の太田家住宅です。
この住宅の一部を改装した保命酒屋の店構えは、風情がありますよ。
保命酒屋につきましては、下記MEMO「鞆の浦 保命酒屋」HPを参照のこと。

就寝前の薬酒としての「保命酒」

就寝前の薬酒としての「保命酒」

写真:村井 マヤ

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『日経ヘルス』という雑誌はご存知ですか?日経BP社発行の雑誌で、特に女性の人生を豊かにし、楽しく過ごすための「健康と美」に関する情報を扱った雑誌です。様々な美と健康の特集をされていますが、なんと保命酒もこの雑誌に紹介されました。
『日経ヘルス』の平成18(2006)年7月号と平成19(2007)年4月号に「薬酒」の特集があり、保命酒が紹介されています。

雑誌に掲載された保命酒は、「赤たる本格保命酒」というもの。写真は、明治41(1908)年創業の八田保命酒舗です。このお店には、「官許保命酒」と刻まれた立派な看板がありますので、それも見せてもらいましょう。こちらの保命酒には、サフランや高麗人参、黄精といった生薬合わせて16種を使用しています。

「赤たる本格保命酒」は、酒類総合研究所主催の「洋酒・果実酒鑑評会・薬味酒部門」に平成11年以来出品しており、平成16年度には高い評価をもらったそうです。

日経ヘルスによると、「薬酒」は夜寝る前に飲むのがお勧めなんだそうです。「夜、体の中で肝臓での解毒や代謝、吸収、ホルモン分泌などの機能が活発になる・・薬酒はこれらの働きを応援してくれる」(『日経ヘルス』2007-4p104)ものなんだとか・・。寝酒にいかがでしょう?

保命酒匂袋や飴やサイダーなど、保命酒ジュレも・・♡

保命酒匂袋や飴やサイダーなど、保命酒ジュレも・・♡

写真:村井 マヤ

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保命酒の4つの蔵元では、様々な商品を販売しています。製品も蔵元ごとで、保命酒をもとにサイダーや飴、ジュレなどバリエーション豊かです。
写真のトモエ印の「入江豊三郎本店」は、明治19(1886)年に創業しました。こちらでは、「保命酒サイダー」や「保命酒の花」という酒粕、「保命酒のど飴」などの製品があります。保命酒は薬酒ですが、原酒の製造工程の過程は「本味醂」と途中まで同じです。

株式会社入江豊三郎本店では、保命酒の原酒作りで培った技術で本味醂も製造販売しています。高級な本味醂ですが、贈答品としても家庭用としても最高の品物です。

また、入江豊三郎本店には、美しい焼き物の徳利のコレクションがあります。HPでもご覧いただけますが、江戸時代の備前焼や鞆焼、砥部焼といった焼き物でできた美しい徳利は、素晴らしいコレクションです。

また、こちらの保命酒には、「コモ包み」された丹波焼の徳利に入った商品もあります。コモとはイグサのことで、そのコモを利用した伝統的な梱包形態です。そのほかにも有田焼や備前焼の徳利に入った珍しい保命酒もあり、レトロな感じで面白いですよ。

お土産に自宅用に!バラエティ豊かな保命酒で元気に♪

お土産に自宅用に!バラエティ豊かな保命酒で元気に♪

写真:村井 マヤ

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写真の保命酒は、ほんの一例です。4つの蔵元の保命酒は味も商品のデザインも全然違いますので、お好きなパッケージのものやお味を選んで購入されるといいでしょう。蔵元へのアクセスや商品については全て下記MEMOを参考にして下さいね。

女性の方には寝酒としてお勧めです。寒い季節には体を温めてくれるし、暑い季節には夏バテ防止になるそうです。保命酒は、福山駅でも購入できますので、街歩きの際は試飲だけか、小さいサイズのものを購入されると荷物にならなくて良いでしょう。ただし、駅にある商品は限られていますので、まず駅で確認して駅にないような珍しいものを鞆の浦の蔵元で購入されると効率が良いかもしれませんね・・。

鞆の浦のもう一つの歴史・・保命酒

歴史ある町鞆の浦で、歴史あるお酒「保命酒」を味わうって素敵ではありませんか?保命酒は、福山を代表するお酒です。是非、鞆の浦の歴史ある街並みを歩きながら、4つの蔵元を訪ねていただきたいです。

まだまだご紹介しきれていない「素敵」を、きっと見つけることができますよ。でも、保命酒だってお酒でアルコール分は14%もあるリキュールですので、飲み過ぎにはご注意を!

保命酒から、鞆の浦の歴史を紐解くのも楽しい旅になりそうですよね。鞆の浦については、下記MEMO「癒される港町・鞆の浦〜歴史ある建物でくつろげる贅沢な時間」も併せてご覧ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/08/12 訪問

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