日本一の称号を持つ2つのケーブルカーで比叡山を横断

日本一の称号を持つ2つのケーブルカーで比叡山を横断

更新日:2014/08/11 10:43

SHIZUKOのプロフィール写真 SHIZUKO 舞台演出者
琵琶湖の付け根のあたりにドーンと鎮座する標高848メートルの比叡山は、京都の鬼門を守る霊山。滋賀と京都の境に立ち、京都側から見るとその端正な山容から都富士とも呼ばれる比叡山は、山の全域が世界文化遺産である『比叡山延暦寺』の寺域です。京都側には『叡山ケーブル』、滋賀側には『坂本ケーブル』があるので、涼しい山の中をゆったり散策し、比叡山を横断してみましょう。

『坂本ケーブル』は日本最長距離を11分で結ぶ

『坂本ケーブル』は日本最長距離を11分で結ぶ

写真:SHIZUKO

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『坂本ケーブル』は、延暦寺の表参道・琵琶湖側にある『本坂』に沿うようにして山を登って行きます。今からおよそ90年前の1927年に敷設された坂本ケーブルは、ケーブル坂本駅とケーブル延暦寺駅の間が2025m。日本最長を誇る長い距離を11分かけてゆっくりと進みます。途中に2箇所の駅があり、橋が7箇所にトンネルが2箇所とケーブルでは珍しい道をたどります。特に2本目のトンネルは長くて狭いので、かなりドキドキします。トンネルを抜ければ、車窓には見事な琵琶湖の風景が広がり、登るにつれて風が冷たくなっていくのも心地いい。

また、麓のケーブル坂本駅と山頂のケーブル延暦寺駅は、どちらも登録有形文化財に指定されているおしゃれな空間です。素敵な建物なので、ケーブルの待ち時間も楽しめます。

ケーブル比叡山駅の左側には、厳しい修行で有名な『千日回峰』の拠点となる『無動寺』があります。そして右側に進めば比叡山延暦寺の東塔(とうどう)エリアへ続きます。

『叡山ケーブル』は日本一の高低差を9分で結ぶ

『叡山ケーブル』は日本一の高低差を9分で結ぶ

写真:SHIZUKO

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一方、京都側にある『叡山ケーブル』は、その高低差が日本最大。なんと561メートルと断トツの数値。二番目の高低差を持つ筑波山ケーブルカーのそれが495メートルですから、叡山ケーブルの高低差の大きさに驚きますね。

麓のケーブル八瀬駅を出発して、急こう配の緑したたる木々の中を9分かけてゆっくりとケーブル比叡山駅へ向かいます。車窓からは京都市内の風景が楽しめます。ケーブルカーを降りると、比叡山駅に接続している、叡山ロープウエイが3分で山頂まで運んでくれます。眼下にぐんぐん広がる古都の風景。春なら桜、秋には紅葉が楽しめる空中散歩。叡山ケーブル・ロープウエイともに冬季は運休するので、いい季節を選んでお出掛けください。

『比叡山延暦寺』の三塔を東海自然歩道が結ぶ

『比叡山延暦寺』の三塔を東海自然歩道が結ぶ

写真:SHIZUKO

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坂本ケーブルで到着すると『東塔エリア』から、叡山ケーブルで行けば『山頂エリア』から比叡山を楽しむことになります。フランス印象派画家たちの絵をモチーフに設計された花々の庭園『ガーデンミュージアム比叡』は山頂にあるので、ここを目指す人は叡山ケーブル。比叡山延暦寺の中でも、もっとも有名な国宝『根本中道』のある東塔エリアだけを楽しむなら坂本ケーブルでと、使い分けることもできます。

実は世界遺産『比叡山延暦寺』は、単独のお寺ではなく、比叡山の山中に点在する『東塔(とうどう)』『西塔(さいとう)』『横川(よかわ)』という3つのエリア(比叡山三塔)から構成されている大きなお寺です。多くの人でにぎわう東塔エリアもさることながら、杉木立に囲まれた西塔エリアは、静かで清々しい空気が漂っています。西塔と東塔の境目のあたりにある『浄土院』は、比叡山を開いた最澄の御廟がある場所で、十二年籠山※の僧が日々、ご奉仕されているところです。

東塔から西塔、横川へは比叡山内シャトルバスが運行されていますが、車道に沿うように東海自然歩道が整備されていますので、ゆったりと歩くことをお勧めします。歩くことで、修行の山の空気を肌で感じることが出来ます。東塔から西塔へは徒歩25分、西塔から横川へは徒歩70分くらいです。

※十二年籠山とは、延暦寺で最も過酷と言われる修行で、十二年間一歩も浄土院を出ずに、まるで伝教(最澄)太師が生きているかのごとくお仕えする修行。

横川への途中にある『峰道レストラン』で休憩

横川への途中にある『峰道レストラン』で休憩

写真:SHIZUKO

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西塔エリアを離れると、横川まではやや長めのハイキング。実際に修行に使われている道は、踏み固められ、とても歩きやすい道です。夏なら蜩(ひぐらし)の涼しげな声だけが聞こえる林の中を歩いていると、本当に心が洗われます。途中に『峰道レストラン』という琵琶湖を一望できるレストランがありますから、休憩を兼ねて食事したり、お土産を買うことが出来ます。

横川エリアには、石垣の上に建てられた舞台造りの『横川中道』があり、深い緑と朱色のコントラストが美しいので、ぜひ、頑張って足を延ばしていただきたいです。帰りは、バスを使って、登ってきた時とは別のケーブルカーを使って下山。滋賀県と京都府を自分の足で横断して、比叡山を丸ごと楽しんでください。

日本仏教の母なる山

日本仏教の母なる山

写真:SHIZUKO

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比叡山に行くと、あちこちにいろんなお坊さんの生い立ちや歴史が書かれたパネルをたくさん見かけます。浄土宗の開祖・法然、浄土真宗の開祖・親鸞、日蓮宗の開祖・日蓮、臨済宗の開祖・栄西、曹洞宗の開祖・道元など、いろんな宗派の高僧の物語があるので、あれ? と思われることでしょう。ここ比叡山延暦寺は、宗祖と仰がれる多くの高僧を輩出してきた事でも有名なお寺で、日本仏教の聖地『日本仏教の母山』と呼ばれています。

開祖の最澄が行った仏教教育と修行は、当時は仏教総合大学的権威があり、それゆえ若き、後の開祖と呼ばれる多くの僧がここで学びました。そののちにそれぞれ独立していったので、多くの宗派が混在しているように感じるのだそうです。

おわりに

国宝の『根本中道』辺りだけをお参りするのもいいのですが、比叡山という山があってこその延暦寺。なので、ゆっくり歩いて山全体を感じてみませんか。800メートル超えの比叡山は、地上よりも4℃ほど気温も低く、爽やかな空気に包まれています。
京都から入って滋賀に抜けるか、滋賀から入って京都に抜けるか、どちらのルートでも下山してから立ち寄る場所も多いので、お好みでルートを決めてくださいね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/08/01 訪問

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