広大な田んぼと隣り合う神奈川県藤沢市・引地川親水公園へ!

広大な田んぼと隣り合う神奈川県藤沢市・引地川親水公園へ!

更新日:2014/08/14 11:24

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
「里山」という言葉を近年よく聞くようになりましたが、ここ引地川親水公園もまた首都圏有数の里山地域にある公園です。特筆すべきは、公園と隣接して広がる巨大な田園地帯。ここは、近年数が減り絶滅の心配されているトウキョウダルマガエルの一大繁殖地となっています。加えてカエルをエサとするヘビや、更にそれを狙うタカなど、かつての里山の生態系がそのままに残されている、関東でも有数の貴重なスポットといえるでしょう。

子どもたちの冒険と探索のステージが広がります

子どもたちの冒険と探索のステージが広がります

写真:鷹野 圭

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今も昔も昆虫採集は、子どもたちの外遊びの定番です。引地川親水公園には木道の通る湿地帯があり、主にザリガニなどを求めて、休日にはたくさんの子どもたちが集まります。背丈以上に大きく伸びたヨシの林には多くの生きものが暮らしており、猛スピードで飛び回りながらなわばりを主張するギンヤンマや、対照的にほっそりとした体形でひらひらと水面近くを舞うイトトンボの仲間など、様々な昆虫が確認できることでしょう。

昆虫が多いだけあり、それをエサにする鳥も多数生息しています。春〜夏後半にかけてはウグイスやオオヨシキリが、冬場にはオオジュリンなどの冬鳥が……そして四季を通じて、これらの小鳥を狙う猛禽類(タカなど)も姿を現します。上空や草木の頂など、よーく目を凝らして探してみましょう。

見渡す限りの水田地帯を散歩しよう(熱中症注意)

見渡す限りの水田地帯を散歩しよう(熱中症注意)

写真:鷹野 圭

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引地川親水公園は、東側に雑木林、西側に水田という異なった環境に挟まれており、森林と農耕地帯の緩衝帯とでもいうべき立ち位置にあります。中でも、川沿いに南北にわたって長く延びる水田景観は圧巻。その規模と美しさは、神奈川県でも有数です。あくまで個人の所有する土地ですので直接水田に踏み入るのはご法度ですが、写真のような田んぼ道を歩くだけでも風情があり、在りし日の里山の雰囲気を楽しめるはずです。

散歩しながら、時折道端の水路や草むらに目を向けてみましょう。バッタやトンボなどの昆虫やアマガエルなど、様々な生きものが顔を見せてくれます。場所にもよりますが、草むらを一歩歩くたびにカエルが2匹飛び跳ねる……などといったこともしばしば。決して大袈裟な表現ではありません。生きもの好きな方なら存分に楽しめるはずです。

解放的な環境である分日陰が少ないため、特に夏場は熱中症に気を付けましょう。

トウキョウダルマガエルと、カエルを狙う者たち

トウキョウダルマガエルと、カエルを狙う者たち

写真:鷹野 圭

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里山環境の減少によって姿を消しつつあるといわれるトウキョウダルマガエル。実際、絶滅の心配される生きものの情報をまとめた国のレッドデータブックでも準絶滅危惧種とされていますが、ここ引地川親水公園周辺では毎年繁殖が確認されています。やはりエサとなる昆虫等が多く、水質を始めとして良好な生息環境が整っているからでしょう。アマガエルほどではありませんが田んぼの随所で姿を見かけます。見た目は、有名なトノサマガエルに瓜二つ。しかし実は関東地方にトノサマガエルは生息していませんので、関東で目撃証言が出た際は基本的に本種が誤認されていると思っていいでしょう。(ちなみにトノサマガエルも国の準絶滅危惧種です)

そんな数多くのカエルを求めて、大型の肉食性の生きものも姿を現します。代表的なものがヤマカガシなどのヘビと、チョウゲンボウなどを中心としたタカの仲間。いずれも田んぼ周辺でよく姿を見かけます。カエルと比べると数は少なめですが、路肩や上空をくまなくチェックすれば見かける機会もあることでしょう。バッタなどの小さな草食性昆虫に始まり、肉食性のトンボ、カエル、ヘビ(ヤマカガシ)、チョウゲンボウといった「食う⇔食われる」の関係にある一連の生きものが、この田園地帯に生息しています。いわゆる食物連鎖というものを実感できる、首都圏では貴重なスポットです。

ちなみにヤマカガシは毒蛇ですので、くれぐれもご注意ください。

護岸のない自然な河岸は、自然散策や川遊びの格好のスポット

護岸のない自然な河岸は、自然散策や川遊びの格好のスポット

写真:鷹野 圭

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園名にもある通り、ここ引地川親水公園は川(引地川)に隣接した環境です。上流側には、都心の川にありがちなコンクリートの護岸がなく、河岸まで下りて水遊びをすることができます。ヨシやガマなどの注水植物が繁茂するナチュラルな河岸には生きものも多く、サギやカモ、カワセミなどが飛来することもしばしば。時折ヤマカガシなどの危険な生きものが出現することもありますので、その点はくれぐれも注意しましょう。

写真は、引地川に架かる天神橋。この橋の欄干には相撲をとるカエルの像がいくつか見られます。それぞれ全く違うポーズをとっており、水田と隣り合うこの公園とカエルの深い関わりがよくわかります。モデルはやはりトウキョウダルマガエルなのでしょうか?

緑豊かな園内に設置される、多彩なコンテンツ

緑豊かな園内に設置される、多彩なコンテンツ

写真:鷹野 圭

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園内では長いすべり台を始めとして、アスレチックスなどの数々の遊具が見られます。ごくシンプルなものが多いですが、子どもたちには嬉しいプロダクツ。大人の方でも童心に帰って遊んでみるのもいいかもしれません。

その他、園内には随所に木製の東屋やベンチが設置されており、ゆっくり一休みすることができます。腰を下ろして、周囲に広がる緑景観を楽しむのも乙な楽しみ方です。

引地川親水公園、如何だったでしょうか?

河岸に豊かな緑を湛えた川を軸に、周囲には水田あり、池あり、湿地ありと「水と緑」に密接した引地川親水公園。ぐるりと一回りするだけでも様々な自然景観を楽しめ、多様な生きものに出会えることでしょう。都市公園によく見られるレクリエーション施設や売店などはありませんが、純粋に里山ならではの自然を楽しみたい方にはピッタリです。自然散策や、子どもたちのための自然学習などに適した環境といえるでしょう。

その他、広々とした芝生広場やドッグランなどもあり、ピクニックにも適した環境です。休日は敷物を持って、ぜひ一度足を運んでみてくださいね。


【引地川親水公園】
所在/神奈川県藤沢市大庭字中沢6510
アクセス/神奈中バス停留所「天神社前」より徒歩3分

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/07/13 訪問

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