台北の「総統府」は自由参観できる!内部見学レポ

台北の「総統府」は自由参観できる!内部見学レポ

更新日:2018/07/23 13:21

吉川 なおのプロフィール写真 吉川 なお 台湾在住ライター、元旅行会社勤務の旅行マニア
現在、日本と良好な関係にある台湾は、かつて日本の統治下にありました。日清戦争後の下関条約(1895年)によって清国から割譲され、1945年の太平洋戦争の敗戦で中華民国に編入されるまでの50年間、日本人はこの地に数々の建築物を建てました。戦後70年を経た現在も保存され、現役使用されている建物の中から、是非訪れてもらいたい「総統府」をご紹介します♪

「総統府」の歴史

「総統府」の歴史

写真:吉川 なお

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総統府は、台北駅南側の「博愛特区」と呼ばれる地区にあります。このエリアは中央官庁が密集する『台湾の霞ヶ関』で、許可なく上空飛行はできない軍事管制区域となっています。このエリア内にある官庁のいくつかは、今なお日本統治時代に日本人が建てた建物を使用しています。

現在、台湾の総統が執務を執る「総統府」は、かつて台湾を統治するために日本が設置した台湾総督府でした。かつての旧台北州庁舎は「監察院」、旧台北地方法院・高等法院は「司法院」、旧台北市役所は「行政院」として現在も当時の威容を残したまま、政府によって使用されています。

「総統府」は赤レンガと白い花崗岩で造られたルネッサンス様式の風格ある建物です。設計はコンペによって競われ、日本銀行の本支店の設計を多く手掛けた長野宇平治の案が選ばれ、それに総督府営繕課の森山松之助が修正を加えて、1919年に完成しました。太平洋戦争時に空襲で一部損壊しましたが、1948年に修復され、文化資産保存法により国定古蹟となっています。

当時の最新技術を投入

当時の最新技術を投入

写真:吉川 なお

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日本の方角に向かって東向きに建つ総統府は、上空から見ると【日】の字の構造になっています。建物の真ん中にそびえる60メートルの中央塔には台湾初のエレベーターが設置されました。耐震構造で、亜熱帯特有の疫病を防ぐため、中庭を作って採光と風通しも良くしました。防火のために館内禁煙とした一方で建物の四隅に喫煙室を設けるなど、当時としては最新のアイディアも導入されていました。

総統府は台湾の大統領府に当たるため、普段はとても警備が厳重ですが、平日の午前中と特定日に限って一部が開放され、内部を見学することができます。

平日の参観は月曜〜金曜日の午前9時から12時まで(入場は11:30まで)で、無料で入場することができます。しかし自由見学はできず、日本語を話すガイド同伴で1階のみの開放、館内は撮影禁止です。

しかし、月に1日だけ自由参観日が設けられています。この日は平日の見学コースでは立ち入れない3階の部屋も見学でき、写真撮影も可能です。スケジュールは総統府のホームページで確認できます。参観時間は午前8時から午後4時までの間で、予約は不要、無料で参観できます。

自由参観日に見られるところはココ!

自由参観日に見られるところはココ!

写真:吉川 なお

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平日参観、自由参観ともに、入り口は宝慶路と博愛路の交差点に面した入り口です。パスポートなどの身分証明書を提示し、荷物検査とボディチェックを受けた後、自由参観の時のみ、通常は総統と副総統、並びに面会の賓客しか利用できない正面玄関から入館します。

まず見えてくるのは、美しい白壁に囲まれた16.5メートルの吹き抜けの大広間。真ん中に赤いじゅうたんが敷かれ、明るくかつ重厚な雰囲気です。記念撮影用に現政権の総統と副総統の等身大パネルも用意されています。正面の大理石の階段の中央には、国父と称えられる孫文の胸像が置かれていて、台座には「天下は民の為に」と刻まれています。

3階の2部屋を開放

3階の2部屋を開放

写真:吉川 なお

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階段はYの形で、右手に上がるとそこは3階です。この階で参観できるのは「大礼堂」と「台湾虹庁」の2部屋。「大礼堂」は400人を収容できる大ホールで、ドーム状の屋根と弧を描いた円窓が明るい印象を与えています。中央には国旗と孫文の肖像画が飾られ、国賓をもてなすパーティや音楽会、総統府職員の集会所として使用されています。

「台湾虹庁」は政府主催の宴や報道陣とのインタビューが行われる部屋です。特徴ある四角い照明が壁に掛けられた台湾の風景画を照らしています。

自由参観で見られる範囲はここまでですが、自由参観日は開放区域内の写真撮影は自由で、時間制限もないため、思う存分見学できます。

平日参観で見られるのはココ!

平日参観で見られるのはココ!

写真:吉川 なお

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そこから階段を下り、平日の見学コースの1階の回廊に向かいます。「建築の物語、総督の物語、総統の物語、台湾の物語」という4つのテーマで各部屋の中にパネルや資料が展示され、総督府から総統府への変遷がわかりやすく紹介されています。日本の歴代総督の案内や下関条約の議定書など興味深い史料も数多く展示されています。

横に見える中庭は、緑が多く憩いの空間となっています。北庭園は当初は職員の自転車置場でしたが、1995年に国花である梅の5枚の花びらをモチーフにして庭園に造り変えられました。南庭園は12の光を放つ国章を元にデザインされ、パラソルの下で休憩もできます。

そこから先は台湾と国交がある33カ国の紹介ブースで、友好の証しとして贈られた品々の展示を見た後、出口に向かいます。

台湾と日本の結びつきを象徴

外国で過去に先人が建てた建物が、今も現役で使用されているのを見るのは、日本人としてうれしいことです。日本と関わりが深い台湾の歴史をより深く理解するためにも、総統府は是非参観してもらいたいスポットです。

台湾に日本統治時代に建てられた建物が数多く残されているのは、日本が台湾の近代化に寄与した功績が評価されているからこそなのかもしれません。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/08/02 訪問

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