榛原(奈良)・甘南備のルーツ、伊那佐山麓の極上穴場スポットを巡る

榛原(奈良)・甘南備のルーツ、伊那佐山麓の極上穴場スポットを巡る

更新日:2014/06/24 17:57

近鉄榛原駅を中心とする榛原(はいばら)は、古くて良き時代の日本を彷彿とするなつかしさに満ちていて、しかも古代史ファンには尽きない魅力を湛えた町。
この駅から古代の甘南備・伊那佐山までの間に点在するマル秘スポットを紹介します。

けしからぬおいしさの波動水湧く墨坂神社

けしからぬおいしさの波動水湧く墨坂神社
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近鉄榛原駅から駅前商店街を南へ5分ほど歩くと宇陀川に出ます。その対岸の朱塗りの神社が墨坂神を祀る墨坂神社。
天の森(榛原駅北すぐの現・榛原町西峠)より移されたこの神社は、奈良盆地の西の端・二上山の大坂神とともに、古代大和の崇神朝が先住民と交わした国境画定のランドマークとなった地点でした。

日本書紀に「赤盾8枚、赤矛8竿をもって墨坂神をまつれ。黒盾8枚、黒矛8竿をもって大坂神を祀れ」とあるように、赤は宇陀地域の勢力源の真土・辰砂(水銀)を、黒は葛城地域の勢力源である鉄を表しています。神武東征の終章に近い戦闘の地が、この宇陀地方であったことを考えると、この地が先住民たちの一大勢力拠点であったことが見えてきます。
この神社の隠れた魅力は、本殿脇の竜王宮から湧き出る波動水。各地の名水など比較にならないけしからぬおいしさ。一度口にすれば病みつきになること請け合いです。

大和の分水嶺・宇太水分神社(下社)

大和の分水嶺・宇太水分神社(下社)
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宇陀川南岸の墨坂神社からさらに上流300mのところにある宇太水分神社は、墨坂神社とともに桜井地域と榛原地域を分ける分水嶺、すなわち古代大和王権の策定した国境ラインを示しています。祭神は国水分神(くにのみくまりのかみ)。
当社は、葛城、都祁、吉野水分と共に「大和・みくまり4大社」として崇敬の対象となっただけあって、とても森厳とした雰囲気に包まれています。くまりは「配り」で、水の分配を司る神さま。のちには、その名の通り五穀豊穣の農耕神として崇敬されるようになります。

ワールドカップにゆかりある元祖・八咫烏神社

ワールドカップにゆかりある元祖・八咫烏神社
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神武(歴史時代では崇神に比定)東征の最終章を飾る当地は、日本サッカー協会のシンボルマークとなった三本足の大ガラスの名を冠する元祖・八咫烏神社があり、境内にはサッカーボールを頭上に戴く黒御影石の八咫烏(やたがらす)像が奉納されています。

ここは、ワールドカップの日本チームの快挙を祈る人たちはもちろん、さまざまな球技ファンがお参りすることで近年にわかに脚光を浴び始めました。
祭神は八咫烏となって熊野より神武を先導した健角身命(たけつぬみのみこと)で、京都の下鴨神社と同じ葵の神紋を掲げ、葛城の古代豪族・賀茂氏と古代大和王権の深いつながりを感じさせます。
また、ここから見る伊那佐山は絶品です。

三輪山のモデル甘南備・伊那佐山

三輪山のモデル甘南備・伊那佐山
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八咫烏神社の高塚バス停から宇陀野方向へひと停留所歩き、比布バス停から伊那佐山(637.2m)を眺めながら西へ。伊那佐山文化センターまで来ると「伊那佐山あと1600m」の標識があり、次の十字路を越えると「十七丁」の石柱に出会います。
ここからスギ・ヒノキ林のゆるやかな勾配を小1時間登ると式内社・都賀那岐(つがなぎ)神社のある頂上に着きます。祭神は水神の「高おかみ神」。山名のいなさは南東から吹く風、とりわけ台風の時期の強風のことを意味し、俳句では夏の季語です。砂鉄を利用した古代の野たたら(製鉄)に必要な風で、この神社が製鉄に所縁のあることが分かります。

三角点は神社右奥にあり、そこから来た道を戻らずに北へ下るとほんの数分で林道に出ます。その林道を左にとり小一時間下ると集落へ出ます。そこから北方向へ進むと宇太水分神社を過ぎ、お水のおいしい墨坂神社へ出ます。集落から榛原駅まで徒歩約40分。
写真は八咫烏神社から望む伊那佐山の雄姿。

さいごに

奈良が京都と最も異なる点は、空の広さだと感じています。この榛原駅近くの墨坂神社から伊那佐山への半日をのんびりと歩いた往復路、人っ子ひとり出会うことはありませんでした。どこまで行ってもあっけらかんとした青空が広がり、日本列島にまだこんな人間(じんかん)距離の疎なところがあるのだと思うとなぜかホッとします。

墨坂神社の波動水は誰にも教えたくない穴場・名水スポットですが、この際教えちゃいます。おすすめは、榛原駅から奈良交通の1時間に1本しかないバスの時間をたしかめてから墨坂神社で波動水を汲み、再び駅南口から宇陀野行きバスに乗ること約10分。「高塚バス停」下車すぐの八咫烏神社からスタートして伊那佐山へ登る。そして、やや北の林道を西へと下り、集落にぶつかると北へ方向を転じて、宇太水分神社から墨坂神社へともどり、自宅用の波動水を汲み帰るコースです。足弱の方は、伊那佐山は割愛しても十分癒される一日を過ごすことができます。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/06/08 訪問

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