ため息の出るような美しい精進料理 〜長野・善光寺の宿坊「兄部坊(このこんぼう)」

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ため息の出るような美しい精進料理 〜長野・善光寺の宿坊「兄部坊(このこんぼう)」

ため息の出るような美しい精進料理 〜長野・善光寺の宿坊「兄部坊(このこんぼう)」

更新日:2013/01/11 17:40

えんべるのプロフィール写真 トラベルjpナビゲーター えんべる

ベジタリアンのカテゴリで言えば「ヴィーガン」か(笑)。肉、魚はもちろん、卵や乳製品も使わないのが精進料理。
一般に精進料理に持たれがちな「味気ない食材」「量が少なくて粗末」というイメージが見事に払拭される兄部坊(このこんぼう)の素晴らしい精進料理を紹介する。

見た目にも美しく品よく

写真:えんべる

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向付〜強肴〜焼き物:ごま豆腐、じゃがいものなます、焚き合わせ、もどきの四皿。

精進料理というとお酒が飲めないイメージがあるが、実はお酒も出る(笑)
お坊さんも実はちゃんとお酒を飲み、その酒は「般若湯」と呼ばれている。
というわけで、右下のお猪口は「般若湯」のあんずのお酒である。兄部坊の敷地の杏の木から採った自家製のお酒。

焚き合わせはよく和食の懐石料理にも出るが、色々な野菜を一緒に煮た料理のことではない。個々の食材をそれぞれに適した方法で別々に煮たものを、1つの器に盛り合わせたものを焚き合わせと呼ぶ。それだけに手間がものすごくかかる。

右奥にある皿は、善光寺の宿坊ならではのもの。切り胡麻、柚子、大根おろし、三つ葉を揉んで丸めたもの、かやの実の五種類の薬味なのだが、これは最後までとっておく。

精進料理ならではの「もどき」

写真:えんべる

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殺生のできない精進料理では、肉や魚の見た目だけでもそれらしく、という「もどき料理」がよく出る。中でも代表的なのが鰻の蒲焼を模したうなぎもどき。

大豆を潰して作った鰻の身に、湯葉と海苔を上手にあしらって鰻の皮に見立てている。驚くべき発想と手間を感じることができるのも精進料理の楽しみのひとつ。
食材をふんだんに使う豪華な料理とは違い、限られた素材に工夫を凝らしているので、精進料理を食べる時は、素材や料理法などを詳しく聞いてみると楽しい。

「もどき」でピンときた人もいるかもしれない。関西では「飛竜頭」、関東では「がんもどき」と言われるあの食材も、もとは精進料理で生まれたものなのだ。
字のとおり、「雁の肉」に例えて豆腐などを擦って丸め、揚げたもの。身近なところで意外な「精進」を発見することも。

現代の和食すべての元祖は精進料理。その根源には「もてなしの心」

写真:えんべる

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精進料理は食べたことがなくても、懐石料理なら食べたことのある人も多いだろう。熱いものは熱いうちにと、1品ずつ運ばれてくる料理だ。また、懐石料理に限らず、和食の特徴に「見た目の美しさ」があるが、これらの精神の根底にあるものは「客人へのもてなし」の心である。

精進料理は禅僧が食べる料理だが、禅僧は寒さと空腹のため、胃を冷やさないよう温めた石を暖房具として懐に入れていた。ある時客人が来たが、もてなそうにも食べ物がない。困った禅僧は、せめてものもてなしの気持ちとして、懐に入れてあった温かい石を客人に渡した。これが懐石料理の語源とされる。
その後、精進料理が客をもてなすための料理になるにつれ、殺生を禁じられた食材を使い、いかに美味しそうに美しく見せ、季節感を出すかを追求するようになった。ここから派生したのが現代で言われる懐石料理なのである。

写真は野菜の吹き寄せ。
吹き寄せとは精進料理の揚げ物によく使われる品。秋になると地面に落ちた紅葉や枯葉、木の実などが秋風に吹かれて一か所に吹きだまりのようになる光景を模したもの。色とりどりの野菜や栗などを薄い衣で揚げて美しく盛り付ける。もちろん、衣に卵は使われていない。

この目にも美しい料理もすべては「もてなしの心」から。

善光寺宿坊ならではの特別な〆「法飯」

写真:えんべる

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がんもどき、蓮根のすり流し、吹き寄せ、茄子田楽など、野菜の素材には事欠かない長野という土地柄を生かした料理が次々と出た後、信州名物の蕎麦が出る。
これでおしまいと思いきや、そういえば、最初から置いてあったあの五種類の薬味を使ってない。

そこへ、お櫃を持ってお給仕の方が現れた。軽く盛った飯にあの薬味を全部のせると、そこへ熱々のだし汁がたっぷりかけられる。

実はこれ、善光寺に伝わる、年に1度だけ食される法飯をアレンジしたもの。兄部坊で最も有名な〆の飯である。

見た目がちょっと美しくないが、出汁を一口すすって思わず唸ることうけあい。変に凝っただし茶漬けなど、足元にも及ばないシンプルにして深い味わい。

この出汁、昆布と干し椎茸、大豆などをじっくり時間をかけて水出しをしながら引かれたもの。精進なので、もちろん出汁に鰹などの魚介は使わない。魚介の出汁に頼れない分、植物系の様々な素材を使って、十分に手間ひまをかけて最高の出汁に仕上げるのだ。

現代の食生活を改めて見直す最高のきっかけ

写真:えんべる

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写真は兄部坊の翌朝の朝食。もちろん精進。

ひと昔前はスローフード、今はマクロビオティックという言葉が一部で流行っているが、欧米のそういった食嗜好よりも何百年も昔から、日本には素晴らしきベジタリアニズムが存在していたのだ。
ただ、欧米のそれと違い、精進料理は単なる食生活の節制奨励ではない。背景には殺生を嫌うという倫理的な戒律があるが、そこから生まれ、追求されたものは「手間」に尽きる。そこには「いかに見えないところで手間ひまをかけ、食べ手である客の目と舌を喜ばせるか」という精神がある。

精進料理を食べに行ったら、まずは料理をじっと観察してみよう。そして給仕の人にいかに手間がかかったものかを説明してもらおう。

作り手の気持ち、食べる側としての姿勢、大地の恵みへの感謝、いろいろなことが目から鱗が落ちるように実感できるはず。

善光寺・兄部坊では、宿泊客以外でも予約をすれば昼食に精進料理を頂くことができる。

■兄部坊(このこんぼう)
長野県長野市元善町463
026-234-6677
精進料理「無量寿」(今回紹介したもの)\6,300
無量寿付きの宿泊料金:\13,650

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掲載内容は執筆時点のものです。 2012/09/20 訪問

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