多忙な人におすすめ!心洗われる北鎌倉古刹探訪

多忙な人におすすめ!心洗われる北鎌倉古刹探訪

更新日:2014/05/13 12:05

JR横須賀線・北鎌倉から鎌倉までのひと駅を結ぶ鎌倉街道は、観光のメッカ・鎌倉の表参道とも言えるメインルート。円覚寺から建長寺に至る約2kmの道のりは、歩くほどに心洗われる得難いひとときが愉しめます。時には仕事を忘れて、祈りの旅に出かけましょう。

おだやかな中にも凛とした空気のただよう、臨済宗の双璧・円覚寺と建長寺

おだやかな中にも凛とした空気のただよう、臨済宗の双璧・円覚寺と建長寺
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北鎌倉駅を山側に下車してすぐの円覚寺は、執権・北条時宗の開基。その時宗に招かれ、元寇の役の真っ只中に来朝した宋の高僧・無学祖元(むがくそげん)開山の禅寺。
数度の火災により衰微したこともありましたが、江戸末の天明期に誠拙和尚が伽藍を再建・整備して、今日の円覚寺の基礎を固められたと言われます。
奥深い境内を山門から本尊の宝冠釈迦如来仏をまつる仏殿、在家修行者の座禅道場・居士林、本来は住職のリビングであった方丈、そして開基廟へと、無心になって辿り、まず雑念を払っていくのです。そしてふたたび山門までもどり、その脇の石段を攀じ、鐘楼と弁天堂からの展望を楽しむ頃には、1時間はたっぷり経過しています。

蒙古襲来の戦没者を敵味方の区別なく祀るこの寺は、この旅のイニシエーション(通過儀礼)にふさわしいもの。参道は四季折々の花で満たされ、山川草木一切に仏性が宿るという禅の精神を、言葉ではなく身体で感じることができます。

円覚寺の規模を一回り大きくした禅寺が、鶴岡八幡宮にほど近い鎌倉五山筆頭の建長寺。
本尊を地蔵菩薩とし、北条時頼が建立、蘭渓道隆開山の古刹。けんちん(建長)汁はこの寺発祥の料理です。

こちらも禅寺特有の既存宗教の枠をさらりと超えた祈りの場としての雰囲気で満たされています。この古刹探訪、名づけて「北鎌倉・祈りの回廊」の掉尾を飾る建長寺派の本山を巡る頃には、心がすっかり軽くなっているのを実感できます。

鎌倉尼五山のひとつ・縁切り寺の東慶寺

鎌倉尼五山のひとつ・縁切り寺の東慶寺
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円覚寺を出て線路を渡り、徒歩5分ほどの下手に建つのが、縁切り寺で有名な東慶寺。円覚寺・建長寺が男性原理の寺であるとすれば、こちらと後に述べる明月院は、女性原理の支配する寺苑。この北鎌倉では、寺のたたずまいそのものが、得もいえぬ芳香のようなものを発しており、訪れる人たちの大小さまざまな心のわだかまりをそっと包み込み、解きほぐしてくれるのです。しっとり感ただよう境内では、花もまったく威圧感のない女性的なものばかり。

時宗夫人の覚山志道尼が弘安8(1285)年開創のこの寺には、独自の「縁切り寺法」があり、明治に至るまでの600年間、この寺に駆け込み、三年の間修行すれば、女性の側からでも離縁できるとされました。

「尼寺や十夜に届くさねかづら」
蕪村の初期の作品に登場する尼寺はこの寺を指し、句意は、東慶寺に居る尼のもとにゆかりの男から「そろそろ還俗だね」と髪の手入れに用いるさねかづらが届いたが、それが皮肉にも世間に念仏の声が響きわたる念仏法要の十夜(じゅうや)の日であったというもの。
奥の墓苑には、鈴木大拙を筆頭に近代文学・哲学ゆかりの巨星たちが眠っており、訪ねる人が絶えません。

境内の松岡宝蔵にはこの寺伝来の仏像・蒔絵・書画などの文化財を収蔵、年間を通じて展示会が開かれています。(月曜休館・入館料500円)

鎌倉五山 第4位 臨済宗 浄智寺

鎌倉五山 第4位 臨済宗 浄智寺
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この北鎌倉一帯は、禅宗を手篤く保護した北条氏の所領であったことから、谷あいにはそれぞれ丘を背負う形で禅寺が林立します。
この浄智寺は、執権時頼の三男・宗政の夫人が一族の支援を得て、早逝した夫を祀る寺を建てたことにはじまるとされ、夢窓疎石はじめ歴代・高僧が名を連ねている名刹です。

いくたびかの火災により伽藍のほとんどをうしない、そのたびに再建されましたが、大正12年の関東大震災によりほとんど倒壊してしまいました。現在の伽藍は、その後に建てられたものばかりですが、閑寂そのものの寺域は、昭和43年、全域史跡認定を受けました。二階に鐘をさげた楼門をくぐり、うら道の隧道を抜けたところにある布袋像まで無心になって歩くと、全身が耳となって風の声、せせらぎの音、湧水の響きが腹の底まで届くのが実感できます。新しい仏殿の曇華殿の木造三世仏坐像は鎌倉様式の典型で一見の価値があります。

ここから谷を詰め葛原岡ハイキングコースを辿ると海蔵寺・寿福寺の静かな鎌倉路が控えています。

月のしずくで荘厳された明月院

月のしずくで荘厳された明月院
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浄智寺門前から再び横須賀線の踏切を渡って名月川の小流れをややさかのぼると明月院に至ります。創建は古く永暦元(1160)年、山ノ内経俊が、平治の乱で戦死した父・俊道の菩提供養のために建てたことにはじまると言われています。本尊は聖観世音菩薩。

この院の魅力は、その名の通り月のしずくで荘厳されたかのような寺苑。脱俗の極致といった庵そのものの寺院がたたずんでいます。
須弥山をかたどる枯山水庭園、羅漢洞やぐら、こじんまりおさまりかえる時頼公墓所、リスがしばしば姿をみせる寺苑を覆う四季折々の花々。ここまでの道のりをふりかえりながら、ひと息つき、しばし思索の時を過ごすにふさわしい爽やかな場所と言えましょう。

明月院を出れば「北鎌倉・祈りの回廊」のフィナーレ・建長寺までは指呼の間です。

鎌倉駅前・すし処 きみ

鎌倉駅前・すし処 きみ
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旅の極意の第一は、まず訪問地の表街道・裏街道を把握し、その折々の自分の心にぴったり添うルートを見つけ出すことにはじまりますが、その土地ならではの味覚を楽しむためには、人でごった返す繁華街の中でもとりわけ高級感あふれる店を選ぶことをおすすめします。

鎌倉駅前のすし処・きみは、一流の板前がにぎる寿司が、リーズナブルな価格で賞味できる穴場料亭。地下一階の瀟洒で落ち着いた雰囲気の店内で、人出の多い時期であっても湘南の極上の海の幸をゆったりといただくことができます。
写真は本日のおまかせにぎりのランチ。
ランチタイム: 11時〜14時。営業時間: 11時〜21時(年中無休)

最後に

観光のメッカ・北鎌倉の代表ルートを観光目的ではなく、疲れた心のよりどころとしてとらえ返すと全く異なる風景が立ち現れてきます。
この「北鎌倉・祈りの回廊」は、すべてを一度に巡る必要はありません。北鎌倉のさまざまな寺院は、万人に開かれた心の潤いをとりもどすにふさわしい場所。思いたったら風まかせ、しばしば訪れて自分の心に響く風景を探り当て、無心になって眼前の景色を愉しむのです。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/05/03−2014/05/05 訪問

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