復興に向かって…民話の里を「SL銀河」で旅する〜JR釜石線乗り撮り歩き

復興に向かって…民話の里を「SL銀河」で旅する〜JR釜石線乗り撮り歩き

更新日:2023/02/25 08:57

もんTのプロフィール写真 もんT チューター、フリーライター
岩手県の花巻から遠野を経て釜石までを結ぶ全長90.2kmのJR釜石線(銀河ドリームライン釜石線)。宮沢賢治の童話や民話の世界そのままの郷愁を誘う風景の中を、2014年春から「SL銀河」が走り始めました。旅の行程を楽しむ趣向が満載のこの列車、ただ乗るだけではもったいない!今回はこのSL列車を満喫しながら楽しむ釜石線の旅をご紹介します。

「SL銀河」とは…?

「SL銀河」とは…?

写真:もんT

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「SL銀河」は、東日本大震災からの観光面での復興を目的として2014年4月12日からJR釜石線で運行を開始したSL列車です。
観光シーズンの週末を中心に、基本的に土曜日は花巻から釜石、そして日曜日は釜石から花巻という形で、2日間かけて釜石線を往復します。運転日については、時刻表やJR東日本のホームページなどで事前に確認しておきましょう。
列車の先頭に立つ蒸気機関車(C58型239号機)は、盛岡市内の公園に保存展示されていたものを、約1年かけて再び走れる状態に整備し復活させました。
客車は4両編成。車内はガス灯風の照明やステンドグラスなど、大正から昭和の時代の温もりを感じさせるつくり…、そして車端部は宮沢賢治にまつわるちょっとしたギャラリーや図書コーナーになっています。1号車には座席数10席ほどの小型プラネタリウムもあり、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の世界を満喫できます。
乗車には乗車券に加えて、SL指定席券(¥840)が必要。全国のみどりの窓口で1ヶ月前の10時から発売されますが、人気のためすぐに売切れのようす。入手し損ねた場合は、乗車2日前頃をねらってみどりの窓口に行って尋ねてみると良いかも…。団体乗車分の売れ残りやキャンセル分などの座席がいくらか返されていて、チケットが手に入るかもしれません。

9年間にわたって運行されてきた「SL銀河」ですが、2023年6月をもって運行を終了することになりました。指定券が取れずに乗車が叶わなくても、ぜひその雄姿を想い出に刻みたい列車です。

猿ヶ石川に沿って遠野へ…

猿ヶ石川に沿って遠野へ…

写真:もんT

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では、花巻から釜石へ向かう「SL銀河」に乗車して釜石線を旅してみましょう。
列車は花巻駅に10:25頃に入線。
プラネタリウムを見たい場合は、1号車で時間指定の整理券を配布しているので出発前に入手しておきましょう。プラネタリウムは5分ほど。新花巻出発後と遠野出発後に上映されます。
10:36に列車は盛大な汽笛と共に出発です。
東北新幹線との接続駅・新花巻を過ぎると、やがて進行方向右手に猿ヶ石川が近づいてきます。1号車ではプラネタリウムが上映されている頃ですが、沿線の美しい風景も見逃せません。遠野に向かってこの川に沿うように、SLは力強く勾配を上っていきます。
北上山地の山岳路線とも言える釜石線を安全に走るために、このSL列車には秘策が…。実は客車にもディーゼルエンジンの動力源があり、機関車を補助できるようになっているのです。長いトンネルやきつい勾配区間では、この動力が蒸気機関車を陰でサポートします。このような“助け合い”の協調運転で走るSL列車は全国でここだけです。

銀河鉄道!?宮守めがね橋を渡る…

銀河鉄道!?宮守めがね橋を渡る…

写真:もんT

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花巻を出てから約50分、11:27に「SL銀河」は宮守(みやもり)駅に到着。ここでは15分の小休止。ちょっとホームに出て、蒸気機関車をバックに記念撮影ができます。
この駅を出るとすぐ、釜石線のハイライトとも言える「宮守めがね橋」を列車は渡ります。この橋は鉄道ファンや見物のギャラリーが大勢集まる撮影スポット。橋を渡っていくSLはさながら空へと向かっていく銀河鉄道のよう…。
「乗る」よりも「撮る」ほうを楽しみたい!というのであれば、宮守駅で「SL銀河」を降り、「宮守めがね橋」へ急ぎましょう。徒歩10分ほどで、橋のたもと「道の駅みやもり」にたどり着けます。広場からめがね橋も入れた印象的なシーンを写真に収めることができます。
「SL銀河」の宮守駅発車は11:39。山間にこだまする汽笛…。乗客もギャラリーも懐かしい旅情に浸れる瞬間です。

遠野駅で一息…

遠野駅で一息…

写真:もんT

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峠を越えるとやがて列車は遠野盆地へと入っていきます。
遠野駅には12:12着。蒸気機関車の給水や灰捨て作業のために、ここで1時間以上停車します。ホームに出て蒸気機関車をじっくり観察したり、駅前広場のイベントを楽しんだり…とのんびりと時間を過ごしましょう。
駅周辺のお店に入って、名物の「ひっつみ」やジンギスカンで昼食をとるのもおススメ。
また遠野は民話のふるさと。駅から600メートルほど南に行くと、資料館「とおの物語の館」があり、民俗学者・柳田國男やその著書『遠野物語』にちなんだ展示資料を見ることができます。思い思いにちょっとした観光も楽しめます。
ただし、この先も旅を続けるならくれぐれも乗り遅れのないように!
「SL銀河」は遠野駅13:31発車です。

○ とおの物語の館
   開館時間 9:00〜17:00(入館受付は16:30まで)
   休館日  無休(2月中旬にメンテナンス休館あり)
   料金   一般¥510/高校生以下¥210

仙人峠を越えて釜石へ…

仙人峠を越えて釜石へ…

写真:もんT

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遠野駅を出発すると、1号車のプラネタリウムでは2回目の上映がスタート。車窓にはしばらくは遠野盆地の長閑な風景が流れていきますが、やがて再び山間区間へ…。釜石線一番の難所・仙人峠は長いトンネルとセミループ線で抜けていきます。峠を駆け下りると、三陸海岸はもうすぐ。終点釜石駅には15:10到着です。
釜石では三陸の海の幸や観光を思い思いに楽しみましょう。
駅前橋上市場サンフィッシュでは、新鮮な魚介類の食事や買い物が楽しめます。

写真は仙人峠に向けて力行するSL銀河号。先ほどの宮守めがね橋での撮影後、後続の快速「はまゆり」(宮守12:41発)に乗ると、遠野で「SL銀河」を追い抜きます。次の岩手上郷(いわてかみごう)で下車し(13:16着)、世田米街道を南下するようにして遠野らしい田舎の風景の中を20分ほど歩いてみましょう。釜石線の線路が近づいてくるあたりが撮影ポイント。力強く加速を始める「SL銀河」を写真やビデオに収めることができます。通過は13:45頃。車でなくても列車利用で追いかけて撮影ができるのは鉄道ファンにはうれしいですね♪

仙人峠を越えて釜石へ…

写真:もんT

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最後に、上りの花巻行きの「SL銀河」の迫力あるシーンが撮れるおススメの場所を紹介します。仙人峠手前の陸中大橋駅です。釜石駅を9:57に出発した「SL銀河」は、この駅で10分ほど停車し、10:40に汽笛一声、峠に向かって行きます。駅先のトンネルの上からは、フェンス越しにその発車シーンをカメラに収めることができます。先行する普通列車で陸中大橋駅に先回りして、「SL銀河」を待ちます。

「SL銀河」はこの写真の足元のトンネルに入った後、Ω状に大きく弧をえがきながら勾配を上げ、写真右手前方の山腹でトンネルから出てきます。陸中大橋駅で列車を見送った場合は、駅を出て国道を南(釜石方面)へ急ぐと、トンネルを抜け赤い鉄橋を渡っていくようすが捉えられるでしょう。上り花巻行き「SL銀河」のハイライトシーンが、ここでは展開します。撮影後は少し時間があきますが、12:31の花巻行きに乗ると、遠野駅で「SL銀河」に追い付きます。

おわりに

いかがでしたか?風光明媚でロマンあふれる釜石線。「SL銀河」で旅すれば旅情はひとしお深まるでしょう。皆さん、釜石線の旅で思い思いに遠野や釜石の観光を楽しんでください。

2023年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/04/26 訪問

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