東京から一番近い水鳥の国!初夏の「谷津干潟」は渡り鳥達の楽園

東京から一番近い水鳥の国!初夏の「谷津干潟」は渡り鳥達の楽園

更新日:2014/05/12 18:22

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
一面に広がる水辺の上を、数えきれないほどたくさんの鳥が舞う光景……テレビの自然番組やネイチャー系の雑誌でよく見かけますが、採り上げられるスポットといえば海外の国立公園などがほとんどですよね。しかし実は首都東京より程近く、千葉県の西の端にも水鳥たちの楽園があるのです。ここ谷津干潟では夏場に差し掛かった頃、海の彼方から渡ってきたシギ・チドリ類が大群をなして訪れます。さあ、皆様もカメラのご用意を!

東京から電車1本で行ける、ラムサール条約登録の巨大干潟へGO!

東京から電車1本で行ける、ラムサール条約登録の巨大干潟へGO!

写真:鷹野 圭

地図を見る

京葉線の新習志野駅と南船橋駅のちょうど間に位置し、南側は高速道路(東関東自動車道)、北側は住宅街にそれぞれ挟まれている谷津干潟。つまり限りなく都会な環境にあるわけですが、干潟そのものの自然度の高さは格別です! 一面を覆うカキやハマグリなどの貝類に、泥の上を這い回るカニ、かに、蟹……。こうしたとてつもない数の小動物たちが、渡り鳥の貴重なエサになっているのです。多くの水鳥が集う貴重なスポットとして世界的にも評価され、関東地方では奥日光の湿原と渡良瀬遊水地に並び、湿地保全に関わる国際条約「ラムサール条約」の登録地として保全されています。

人気の鳥はやはり、海の彼方から長〜い旅をしてやってきたシギやチドリの仲間たち。主に干潟の上を歩き回ってカニやゴカイなどを食べる鳥で、クチバシの形や歩き回る姿がユニークで人気を集めています。何より、何千キロという距離をはるばる飛んできたのかと思うと、自然に生きる鳥の力強さをつくづく実感しますね。

時折、写真のように一斉に飛び立つ瞬間があり、その躍動感あふれる光景は必見です。シャッターチャンスは一瞬ですが、ぜひ写真に収めていただきたいですね。 ちなみにここで飛んでいる鳥は、写真上側の大きくて嘴の長い鳥がオオソリハシシギ。中央〜下を飛んでいる白くて小さい鳥がハマシギです。

自然観察センターの望遠鏡で、干潟の大パノラマを楽しもう!

自然観察センターの望遠鏡で、干潟の大パノラマを楽しもう!

写真:鷹野 圭

地図を見る

歩き疲れて一休みしたい方、撮影した鳥の種類をすぐ調べたい方、海苔の臭いがちょっとキツいという方(笑)は、写真中央に見える自然観察センターに行ってみましょう。入館料が370円(一般)かかりますが、一度支払った後は1日中再入館が可能です。中には望遠鏡が設置されていますので、遠くの鳥を観察するのにピッタリです。

図鑑や鳥の早見表なども揃っていますし、何より鳥に詳しい係員さんが常駐していますから、わからないことがあったら積極的に質問してみましょう。見分けの難しいシギ・チドリの種類はもちろん、時にはオス・メスの見分け方などコアな情報も入手できますよ。中にはレストランもありますので、お食事や休憩に活用してください。

また、センターの目の前に広がる岸辺の草地は要チェック。食事を終えたシギ・チドリが、羽を休めるためにここに一気に集まることがあります。鳥以外にも、ヘビやカエルなどの様々な生きものが隠れているかもしれません。よ〜く調べてみましょう。

名物“セイタカシギ”を探してみよう!

名物“セイタカシギ”を探してみよう!

写真:鷹野 圭

地図を見る

谷津干潟のシギ・チドリ類はほとんどが渡り鳥として飛来するため、1年の中で観察できる時期は(期間の差はあるものの)限られています。しかし、一部には本来渡り鳥でありながらここに定着して繁殖を繰り返し、年間を通じて姿を見られる鳥もいます。写真のセイタカシギもその一つ。干潟のスーパーモデルというか貴婦人というか、竹馬に乗っているかのようなとっても長い脚が特徴で、一度見たら忘れられないでしょう。

このセイタカシギ、環境省から絶滅危惧II類に指定されている希少な鳥で、かつては渡り鳥としても珍しい鳥でした(最近は増加傾向にあるそうです)。ところが谷津干潟の環境がよほど気に入ったのか、気づけばすっかり常連さんに……。比較的岸の近くや、後述の淡水池など観察しやすいところがお好きなようなので、かなり高確率で出会えるかと思います。時には園路の目の前まで近づいてきてくれることもありますよ。

他のシギ・チドリと同じく砂地のカニやゴカイを食べるのですが、脚が長すぎて直立のままでは届かないので(笑)いちいち屈伸しながらクチバシを突き立てます。ちなみに一休みする時もきれいに脚を折りたたんで砂地に腰を下ろします。一見エレガントなのにとにかく一つ一つの仕草が愉快なので、見かけたらじっくりと観察してみてください。

バードウォッチングに行くなら、迷わず干潮時間を狙おう!

バードウォッチングに行くなら、迷わず干潮時間を狙おう!

写真:鷹野 圭

地図を見る

海と連結している谷津干潟は、1日の間でも潮の満ち引きによって水位が激変します。一面が砂地だったかと思いきや。数時間後に戻ってきたら足場のほとんどない海になっていた……なんてことは日常茶飯事。そしてシギ・チドリ類はあまり身体が大きくなく、満潮で水位が上がると立って歩けなくなってしまうため(セイタカシギはやや例外)寝床などに移動してほとんど姿を消してしまいます。一部は突き出した杭などの数少ない足場に残ってくれることもありますが、止まったまま動かなくなってしまうのでやはり観察の面白さには欠けますね。

干潟を歩き回るシギ・チドリを観察するなら、迷わず干潮時間を狙うべき。谷津干潟自然観察センターのWebサイトでは毎日トップページに満干潮時間を表示していますので、これを参考にするといいでしょう。バードウォッチャーの皆さんもほとんどは干潮時間を狙って訪れます。

ちなみに満潮時もそれはそれで面白いです。ボラなどの魚がたくさん入ってきますので、ここが海とつながっていることを実感できることでしょう。まれにエイ(アカエイ)が入ってくることもあります。

ヨシ原、森林、緑道など色々な緑環境も見逃さずに!

ヨシ原、森林、緑道など色々な緑環境も見逃さずに!

写真:鷹野 圭

地図を見る

砂や泥の広がる干潟がほとんどを占める一方で、南北には大きなヨシ原が広がり、時間限定ですが中の木道を歩くことができます。ヨシ原ならではの生きものが見られることでしょう。干潟の南側には『習志野緑地』という雑木林もあり、木々の間を通る園路も魅力的です。また、写真のように海と直結していない淡水池もあり、ここには王道カワセミのほか、森林を好む小鳥がよく姿を見せます。観察小屋からそっと覗いてみましょう。淡水池は自然観察センターにも隣接していますので、快適な室内から小鳥を探すこともできます。

水景観に調和する、様々な形の緑を楽しみましょう。

都会の真っ只中。市民に愛され守られる、至極の鳥の楽園です

かつて干潟の埋め立てが推し進められていた時代、この谷津干潟も消滅の危機にありました。元々は何倍もの面積を誇り、高度経済成長期に次々と住宅地や工業地へと姿を変えていき、最後に湖のような形で干潟がとり残されて今の谷津干潟ができました。その後は地元住民や識者の働きかけによりシギ・チドリをはじめとした貴重な水鳥の飛来地として認知され、今は市民ボランティアらの手による保全活動も進められています。

空中写真で見てみると、住宅や工業地域の中にポツンと取り残された水たまりのように見えてしまうかもしれません。しかし、周辺が埋め立てられたといえども面積は未だに約40haと広大。何より、飛来する鳥の種類と数は目を見張るものがあります。「水たまり」が如何に多くの命を育むか?一度見れば一発で理解できることでしょう。単純に海に行くだけではなかなか出会えない、ユニークな渡り鳥たちの姿……きっと病み付きになるはずです!


【谷津干潟公園プロフィール】
住所/千葉県習志野市秋津5-1-1(谷津干潟自然観察センター)
アクセス/JR京葉線「新習志野駅」より徒歩20分、「南船橋駅」より徒歩20分
電話番号/047-454-8416(谷津干潟自然観察センター)
駐車場/あり

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/04/26 訪問

- PR -

条件を指定して検索

- PR -

この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -