都内希少の路面電車・東急世田谷線― 沿線観光の名所に残る幕末の面影

都内希少の路面電車・東急世田谷線― 沿線観光の名所に残る幕末の面影

更新日:2014/04/28 17:25

高度成長期の自動車優先政策により、都内を網羅した都電が殆ど消えて久しいですが、世田谷を走る東急世田谷線は、都電荒川線と共に都内の路面電車一つです。最近、環境に優しい交通機関として見直されている、路面電車。今回は東急世田谷線とその沿線の観光スポットを、歴史的背景と絡めて紹介しましょう。

都会の真ん中とはいえ、結構ローカルな雰囲気満載!まずは電車に乗って楽しもう

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沿線観光案内の前に、東急世田谷線の沿革を交えて、少し詳しく紹介しましょう。

東急世田谷線は1925年、当時渋谷―二子玉川間を走っていた玉川電鉄本線の支線として三軒茶屋―下高井戸間が開業しました。そして1969年に渋谷―二子玉川間の本線が廃止された後も、世田谷線と改称、今に至っています。

路線総延長5km。全線が新設軌道(道路でないところに線路が敷いてある)であるにもかかわらず、法律上は「路面電車」に区分されます。1日当たりの利用者は53000人程で、東北新幹線・東京―新青森の利用者数に匹敵します(驚)。これは凄いですね。駅の数は始点・終点を含め全部で10駅。各駅間は1km以下です。そして場所によっては線路内に草が茂って、長閑な感じも楽しめます(写真)。空いている時間帯に乗車して、フロントガラスからの沿線観望は子供時代に帰ったようで、楽しいですよ〜(笑)。

沿線観光の始めは、松陰神社に行って、吉田松陰先生の明晰な頭脳の御利益を受けよう

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松陰神社へのアクセスは、東急世田谷線「松陰神社前」下車、徒歩10分。少し昭和の香りのする、レトロな雰囲気の商店街を抜けた先にあります。
この神社は、安政の大獄で刑死した吉田松陰を祀った神社で、彼の運営した松下村塾の御利益にあやかって、合格祈願の神社として親しまれています。この名の神社はここ世田谷と彼の誕生地・萩の二カ所しかありません。吉田松陰は死後4年たった1863年、元門下生等によってこの地に埋葬され、今の社殿の原型となる祠が建てられています。
また本殿の脇には山口県・萩市にある、松下村塾のレプリカ(写真)も建てられ、松陰の学者としての偉大さを、今の世に伝えています。

豪徳寺は、招き猫伝説の寺として有名。猫の優しい表情に癒やされよう

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豪徳寺へのアクセスは、東急世田谷線「宮の坂」から徒歩5分程。沿線観光としてはお勧めの場所です。正式名を大谿山豪徳寺(だいけいざんごうとくじ)と言い、曹洞宗の寺院で1480年創建とされています。また招き猫の発祥伝説の寺としてよく知られており、この寺では「招福猫児(まねぎねこ)」と称し、招福観音を祀った「招き猫殿」が設けられ、そこには成就がかなった信者から多くの招き猫が奉納されています(写真)。またこの寺は彦根藩井伊家の菩提寺で、幕末の大老・井伊直弼の墓があります。井伊直弼が、世田谷で雨に遭い、猫の招きで寺に入って雨宿りをし、住職の法話を聞いたのがきっかけで、この寺を菩提寺にしたと言い伝えられています。

井伊家ゆかりの地・彦根市のゆるキャラ「ひこにゃん」といい、この菩提寺の伝説「招き猫」といい、猫に深い縁のある処ですね(笑)。

豪徳寺にはもう一つの因縁。幕末の大事件「安政の大獄」を紐解いてみよう

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豪徳寺は、招き猫との深い縁とは別に、もう一つ小さからざる因縁を秘めています。それは前述の松陰神社との因縁で、キーワードは「安政の大獄」です。

幕末の開国動乱期、攘夷派の志士達が弾圧された「安政の大獄」。この事件の弾圧側が井伊直弼で、捕縛側の一人が吉田松陰なのです。この事件の両側の主役が、ここ豪徳寺と松陰神社に祀られているという事実はなんとも因縁めいています。そしてこの2つの名所は、区内を流れる烏山川が作る谷を挟んで、わずか1km弱で対峙しています。2人に間が、谷で隔てられているのも、当時の関係を、如実に表していますね。
 
安政の大獄から150年余り。当時憎み合った二人ですが、今は仲直りをして、天国から世田谷の発展を見つめていると思います。

沿線の観光名所に幕末の歴史のエッセンスが詰まっているなんて、何とも素晴らしい電車ではありませんか!

小さいながらも車両基地もある。電車好きの方に上町の車両基地の撮影ポイントをご紹介

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世田谷線は途中の上町に唯一の車両基地があります。上りホームから、整備工場施設の建物は見えますが、実際に車両が係留されている様子は伺えません。車両基地内は立ち入り禁止ですので、線路内に立ち入って施設を見る事は出来ませんが、基地の外から、車両整備の様子などが見られるポイントが1カ所有ります。
上町で下車し、線路わきの道路を「宮の阪」方面に歩いて行くと、道路の右側に車数台のパーキングが有ります。そのパーキングが、線路際に位置しており、線路との境界はコンクリートの塀になっています。そのコンクリート塀の上に手を延ばして撮影すると、車庫に入って整備されている電車が、良い具合に撮れます(写真)。鉄男君・鉄子さんにはお勧めの場所です。

総延長5kmの中に、見どころ満載の世田谷線

東急世田谷線は都内に残る、希少な路面電車であるばかりでなく、僅か5kmの中に、多くの史実や観光地・イベントなどが凝縮しています。

鉄道の走行ルートが世田谷区役所を筆頭とする区内の行政の中心で有ると同時に、12月、1月には伝統行事、世田谷ボロ市もこの沿線、世田谷駅付近で行われるなど、観光資源にも恵まれています。乗って降りて、沿線で遊んで、と多彩な魅力の世田谷線。是非乗ってみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/07/07 訪問

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