写真:四宮 うらら
地図を見る富士山一帯に降り注ぐ雨や雪の量は、年間25億トンほどだといわれています。しかし富士山に川はありません。この大量の水は地中に浸透し、幾重にも積み重なった地層のなかをゆっくり濾過されながら流れ、やがて湧水として地表に現れます。
山梨県や静岡県の富士山麓の地では、富士山湧水の地が点在。
それぞれがパワースポットとなっていますが、なかでもぜひ出かけたいのが、静岡県富士宮市にある「富士山本宮浅間大社」。
日本全国に1300余りある浅間神社の総本宮であり、古来より続く富士山信仰の原点。大噴火を起こした山を鎮めるために、水が湧き出るこの地に社を構えたといわれています。
現在の本殿、拝殿、桜門は徳川家康の寄進によるもので、「三間社流造」と称される二階建て楼閣造の本殿は、他に例がなく、国の重要文化財に指定されています。
写真は桜門に向かって左側から撮ったもの。頭のほうだけですが、富士山を見ることができます。参道や境内横を流れる「桂川」沿岸からも富士の雄姿を望むことができます。
5月4〜6日には流鏑馬(やぶさめ)祭が開催されます。
写真:四宮 うらら
地図を見る富士山本宮浅間大社の境内の東側には、富士山の湧水が1日20万トンも湧き出ているという、「湧玉池(わくだまいけ)」があり、国の特別天然記念物に指定されています。
鏡のように澄み切った池では、水鳥が遊び、ニジマスが泳ぎ、初夏には水草のバイカモが小さな白い花をつけます。
写真は防水機能のあるカメラを、そっと水の中に浸けて撮影したもの。
湧水ならではの神秘的な透明度がおわかりいただけると思います。
美しい水面を眺めているだけで、心は落ちつき、清々しい気持ちになります。
古来よりこの水は「霊水」として崇められ、修験者たちが富士山に登る際には、この池で身を清めたと言われています。年間を通して水温が13℃前後ということですから、さぞ、身が引き締まったことでしょう。
池のすぐ脇には水屋神社が祀られ、「富士山御霊水」が汲めるように、水場が設けられています。参拝者は誰でもペットボトルや水筒に水を汲むことができます。
富士山の地下は噴火でできた溶岩が幾重にも重なり、自然の浄水器の役割を果たしています。玄武岩の層を通り抜けることで、バナジウムを豊富に含んでいることでも注目されています。
軟らかくて、やさしい喉越しのこの水で、お茶やコーヒーを入れると、それはそれはおいしいのです。
ぜひお試しください。
「湧玉池」に端を発した水は、神田川となって市内を流れ、やがて潤川と合流し、駿河湾へと流れ込みます。その間にも農業をはじめ、さまざまな産業に活かされ、人々の暮らしを支えているのです。
●富士山本宮浅間大社
0544-27-2002
静岡県富士宮市宮町1-1
開門 5:00〜20:00(季節によって異なる)
写真:四宮 うらら
地図を見る「富士高砂酒造」は、富士山本宮浅間大社の西側にあります。
敷地内の井戸から汲み上げた富士山伏流水を仕込み水として使い、御神酒を奉納している酒蔵です。
軒下に杉玉が吊るされた店に入ると、とても落ちついた佇まい。
メイン商品である「高砂山廃純米吟醸」をはじめ、静岡らしい「高砂お茶入り梅酒」など、さまざまな商品が並び、利き酒コーナーもあります。。
そして店の奥には、地下から汲み上げる仕込み水を、ひしゃくで飲めるようにもなっています。
超軟水の富士の伏流水で醸す酒は、まろやかな味わいの「女酒」。(ちなみに硬水で醸す日本酒は、男酒になると言われています)
口当たり優しく、繊細な和食にぴったりです。
写真:四宮 うらら
地図を見る富士高砂酒造では蔵見学が可能です。
重厚な蔵の扉から中に入っていきます。
江戸時代の酒造道具類の展示コーナー、製造作業設備、貯蔵タンクなどを見学して、酒造りについて教えていただけますが、最も興味深いのは醸造タンクが並ぶ蔵の2階に安置されている8体の薬師如来像です。
明治時代、政府が出した「神仏分離令」は、神道により国家統一を図るもので、神社から仏教色を払拭することを徹底したもの。
富士山山頂の浅間大社においても、例外ではなく、明治7年に仏像取り除きの神事がとり行われ、県の役人らが仏像除去のため登山したという記録があります。
その時、多数の仏像が廃棄されましたが、一部は寺や個人に引き取られ、隠し奉納されたそうです。
酒蔵の仏像も、そのとき譲り受けたもの。
仏像はいずれも金属製で50〜90センチほどの立像5体と20センチほどの小型の立像3体。時代の波に翻弄されながらも、現存する薬師如来像は、脈みゃくと受け継がれる酒造りの技を、静かに見守っているようです。
●富士高砂酒造
0544-27-2008
静岡県富士宮市宝町9-25
8:30〜18:00(土・日・祝は10:00〜17:30)
※酒蔵見学は前日までに要予約
写真:四宮 うらら
地図を見る富士山本宮浅間大社の参道近くには「お宮横丁」という通りがあります。
一角には、富士宮のB級グルメ、富士宮焼きそばブームの火付け役となった店「富士宮焼きそば学会」のアンテナショップ、富士宮で養殖するニジマスを使ったマスバーガーを販売する「鱒益分岐点」、静岡おでんの店、和スイーツの店などが軒を連ねています。
そして通りの中央にはテーブルとイスが並べられ、それぞれ買い求めたものを、持ち寄って食べることができます。そんな「お宮横丁」のシンボル的存在が、富士山の湧水を飲んだり汲んだりできる水場。
浅間大社お参りの際には、門前町のにぎわいを味わいに、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょう。
●お宮横丁
静岡県富士宮市宮町4−23
営業時間 10:30〜17:30
定休日 各店によって異なる
毎夏、富士登山はたいそうな人気ですが、今回ご紹介したのは、富士山に登らなくても、たとえ富士山が見えない日でも、富士山のパワーを感じることができる、富士の湧水を巡る旅です。
富士山本宮浅間大社のある富士宮市街地から、車で30分ほど北へ向かえば、富士山の伏流水が噴き出す「白糸の滝」もあります。
滝壺には虹がかかり、その周辺には天然のミストが満ちています。
ぜひ一度お出かけください。
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(2024/3/28更新)
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