世界最大のウトウ繁殖地「北海道 天売島」初夏の夜の神秘

世界最大のウトウ繁殖地「北海道 天売島」初夏の夜の神秘

更新日:2023/05/25 08:46

月宮 うさのプロフィール写真 月宮 うさ ブロガー
北海道日本海側に浮かぶ「天売島」。周囲12km程の小さなこの島は、海鳥「ウトウ」の世界最大繁殖地として有名で、その数は60万羽〜100万羽とも!!
この地では、繁殖期である初夏の夕暮れから夜にかけて、空と大地が鳥で覆いつくされる神秘の世界、ウトウの一斉帰巣風景を観察することができます。
陽が落ちる頃からはじまる大自然のショーを間近に見ることができる「ウトウ・ナイトウォッチング」をご紹介いたします。

海鳥「ウトウ」のご紹介

海鳥「ウトウ」のご紹介

写真:月宮 うさ

まず、最初に「ウトウ」は、どんな海鳥なのかご紹介いたしましょう。
ウトウ(善知鳥)は、ハトよりも少し大きい38cm程の海鳥で、北日本沿岸からカリフォルニア州までの北太平洋沿岸にかけて広く分布しています。
日本では天売島(てうりとう)の他、岩手県の椿島・宮城県の足島などで繁殖しており、足島の繁殖が日本での南限とされています。
天売島には、約100万羽が繁殖し、世界最大のウトウの繁殖地となっています。

ウトウの外見は、胸から背中にかけて灰黒色の羽毛に覆われ、お腹は白く、くちばしは橙色です。
写真は天売島で出会った繁殖期のウトウです。
くちばしの付け根の突起と、目とくちばしの後ろ辺りから生えている白い飾り毛は繁殖期の時期だけの特徴で、繁殖期が終わり秋〜冬を迎える頃には無くなります。
また、陸地に上がるのは繁殖期のみで、それ以外は1年を通して、海上で生活をします。

ウトウの帰巣観察「ウトウ・ナイトウォッチング」へ行こう!

ウトウの帰巣観察「ウトウ・ナイトウォッチング」へ行こう!

写真:月宮 うさ

天売島は高い断崖絶壁が続く海鳥の繁殖に適した島です。
毎年ゴールデンウィーク頃から7月中旬にかけて、繁殖のためウトウがやってきます。
ウトウの帰巣風景はとても神秘的で、毎日決まった時間に雛鳥にごはんを与えるため、一斉に戻ってきます。その時間は夜19時〜20時。
陽が沈み空が漆黒の闇に包まれる頃、帰巣がはじまります。
一羽二羽‥帰ってきたかな?と思った直後、空は一瞬でウトウに埋め尽くされ、次々と大地へ降り立ってゆく光景は圧巻です!

ウトウの帰巣風景を観察するためには、島に宿泊し「ウトウ・ナイトウォッチング」を利用するのがオススメです。
ツアーの流れは、19時頃バスに乗って観察ポイントの「赤岩園地(赤岩展望台)」へ向かいます。陽が落ちると辺りは真っ暗闇になり、道路に出てきたウトウが車にひかれる危険があるため、少し早めの20時頃終了となります。

初夏に天売島に来たならば、ウトウの帰巣風景を是非とも見に行きましょう!

ウトウの巣は、大地に広がる無数の穴!

ウトウの巣は、大地に広がる無数の穴!

写真:月宮 うさ

大地一面に広がる無数の穴、駐車場近くも灯台近くも穴だらけ。
この穴1つ1つがウトウの巣になります。

ウトウの夫婦は毎年同じカップルで子供を育て、同じ巣穴を使います。もしも、事故などで独り身になった時には巣穴付きで次のお相手を探します。
穴は斜めに掘られ、深さは1m以上、中には5mを越すものもあります!
その穴の中にメスは1つだけ卵を産み、45日間夫婦交互で温めます。そして産まれた雛に約50日間エサを与え続けます。その期間は、夜明け前に親鳥が一斉に飛び立ち、夕方暗くなった頃にくちばしに小魚をいっぱい咥えて帰ってくる光景を見ることができます。

巣穴の写真には、カモメがたくさん写っていますが、このカモメ達はエサを咥えて戻るウトウを待ち伏せし奪おうとします。目の前で繰り広げられるエサの奪い合いは迫力さえ感じることも。勝っても負けても自然の掟ですから、そっと見守ってあげてくださいね。

イタドリに囲まれた高級住宅地

イタドリに囲まれた高級住宅地

写真:月宮 うさ

写真はウトウの繁殖地「赤岩園地(赤岩展望台)」、昼間の風景です。
陸地側にイタドリと呼ばれるダテ科の背の高い植物が一面を覆っている場所があります。
この下にも巣穴がたくさんあり、この辺りはカモメなどの外敵から身を守ることができる高級住宅地となっております。見るからに襲われにくそうな場所ですね。

高級住宅地の言葉は、ガイドをしてくれた島の方のお言葉。上手い表現ですよね!
楽しく勉強になるお話を聞きながら観察できるのも「ウトウ・ナイトウォッチング」ならではです。もちろん質問にも答えてくれますから、興味のあることは色々聞いてみましょうね!

お魚咥えたウトウの行動

お魚咥えたウトウの行動

写真:月宮 うさ

無事に小魚をくちばしいっぱいに咥えて巣穴に戻ったウトウは、雛にエサを与えます。その後、巣穴から出て外で眠るのです。「ウトウ・ナイトウォッチング」が終わり、帰路に向かう頃には、巣穴の外でじっとして動かない姿をあちこちで見ることができます。

写真のウトウは2匹の小魚を咥えていますが、中には10匹近く咥えて戻るツワモノもいますよ!「この子は2匹、あの子は10匹」と、観察してみてくださいね。

最後に、お願いがあります

いつまでも天売島がウトウ達の楽園であり続けることができるように、観察にはいくつかの注意事項があります。
●観察は「赤岩園地(赤岩展望台)」のみ許されており、時間は20時まで。
●ストロボ(フラッシュ)撮影は、鳥への負担を考え、光の強さや撮影頻度に配慮しましょう。
●「ウトウ・ナイトウォッチング」を利用し、一般車両は自粛を願います。
●現地関係者の指示に必ず従いましょう。
よろしくお願いいたします。

初夏の季節、たくさんのウトウで空と大地が覆いつくされる神秘的な光景に出会いに、天売島へ遊びにきませんか?
島では美味しい海の幸も楽しめますよ♪

掲載内容は執筆時点のものです。

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