「おかめ」のお面や人形がいっぱい!京都 大報恩寺(千本釈迦堂)

「おかめ」のお面や人形がいっぱい!京都 大報恩寺(千本釈迦堂)

更新日:2014/04/24 16:55

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
千本釈迦堂の名で親しまれている上京区の大報恩寺。京都市中、最古の木造建造物である本堂や鎌倉時代の名仏師・快慶らによって製作された仏像群を有する寺院として、その名を知る方もいらっしゃるでしょう。しかし、その大報恩寺が不美人の代名詞とされる「おかめ」ともゆかりの深い寺院であったこと、ご存知でしたか?今回は大報恩寺における「おかめ」の逸話とその魅力をお伝えしましょう。

大報恩寺におけるおかめ伝説とは?

大報恩寺におけるおかめ伝説とは?

写真:乾口 達司

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大報恩寺の伝承によると、おかめは大報恩寺の本堂の造営をまかされていた棟梁・長井飛騨守高次の妻。ある日、高次は誤って寸法を間違え、信者から寄進された大切な木材を短く切り過ぎてしまいました。処置に困っていた高次を見るに見かねて、妻のおかめは次のような助言をおこないます。他の木材もすべて同じ寸法に切りそろえ、足りない部分は枡組でおぎなってみてはいかがでしょうか、と。高次はおかめの助言にしたがい、本堂を見事完成させたのでした。ところが、上棟式を迎える直前、おかめは自害してしまいます。妻の助言にしたがって仕事を成し遂げたことが世間に知れ渡ったら、夫に恥をかかせることになってしまう。それがおかめを自害に導いた理由でした。おかめの自害を知った高次は深く悲しみ、境内に墓を建立してその功徳をしのんだとのことです。

いまでも、京都では、上棟式の折におかめ(お多福)の顔をつけた御幣を大黒柱などにとりつける習慣がありますが、それはおかめの哀話に起源を持つものであるといわれています。おかめといえば、写真のように滑稽な表情をしたユーモラスなキャラクターをつい連想してしまいがちですが、表情に似合わず、その裏には上のような哀しいエピソードがあったのですね。

本堂の一角に並べられたおかめたち

本堂の一角に並べられたおかめたち

写真:乾口 達司

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おかめの哀話は後に全国に知れ渡りました。その結果、大報恩寺には、話に感銘を受けた全国の信者からおかめを模したお面や人形が続々と寄進されることとなりました。寄進されたお面や人形の一部は、現在、本堂東側の外陣に展示されています。ご覧のように、ガラスの陳列ケースのなかには数え切れないほどの数のおかめが並べられており、おかめの哀話に感激した人がいかに多かったかがうかがえます。

お面だけじゃない!さまざまなスタイルのおかめたち

お面だけじゃない!さまざまなスタイルのおかめたち

写真:乾口 達司

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陳列ケースのなかを覗いてみましょう。上の写真にあったように、陳列されているのは何もお面にだけ限りません。その表情はいずれも定番というべき丸顔で鼻が低く、頬がふっくらと張り出したものばかりですが、そのたたずまいは立ち姿のものから正坐のもの、立て膝で坐っているものまで実にさまざま。どのようなスタイルのおかめが陳列されているのか、実際にご自身の目で確かめてみるのも愉快でしょう。

こんなものまで!夫婦円満・子孫繁栄の象徴としてのおかめ

こんなものまで!夫婦円満・子孫繁栄の象徴としてのおかめ

写真:乾口 達司

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後段の3体のおかめに注目!左側2体のおかめが手にしているものは、いったい何だと思いますか?マツケタ?いえいえ、実はこれ、男根なのです。その左、上半身が裸のおかめが跨っているのも、よく見るとやっぱり男根!哀話の主人公・おかめはやがて夫の出世を手助けした女性として神格化され、それが夫婦円満・子孫繁栄の象徴にまで高められたのでした。その姿はエロティックではありますが、逆にいえば、ここまでおかめが神格化され、民間の支持を集めてきた証であるといえるでしょう。

あわせてこちらにもお参りを!境内のおかめ塚

あわせてこちらにもお参りを!境内のおかめ塚

写真:乾口 達司

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写真は境内の一角に建つ「おかめ塚」。巨大なおかめが手にしているものに注目してください。これこそおかめが失意の高次にアドバイスし、本堂を完成させる要因となった枡組です。大報恩寺でもよおされる節分は「おかめ福節分会」ともいわれており、毎年、おかめ塚の前で法要がおこなわれるほか、おかめが鬼を追い払うという一風変わった鬼追いの儀もとりおこなわれます。大報恩寺において、おかめがいかに重要なキャラクターとしてあつかわれているかが、この演出からもうかがえますね。

おわりに

大報恩寺がおかめと切っても切れない関係にあることが、おわかりになったのではないでしょうか。大報恩寺というと、歴史的建造物や数々の仏像彫刻にばかり目がいってしまいがちですが、おかめのお面や人形にも目をやると、大報恩寺の新たな魅力を引き出すことができます。数々のおかめを楽しみながらおかめと高次の夫婦愛に思いを馳せ、旅のいい想い出としてください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/03/22 訪問

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