期間限定公開!平山郁夫のシルクロード『大唐西域壁画』薬師寺・玄奘三蔵院

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期間限定公開!平山郁夫のシルクロード『大唐西域壁画』薬師寺・玄奘三蔵院

期間限定公開!平山郁夫のシルクロード『大唐西域壁画』薬師寺・玄奘三蔵院

更新日:2017/03/14 10:58

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

古都奈良の世界遺産であり、平山郁夫画伯や玄奘三蔵法師と縁が深い薬師寺。
平山郁夫氏は、先の戦争や原爆被爆の体験から、終生「平安と鎮魂」を求め、平和の道としてシルクロードを描いた日本画家です。薬師寺に奉納された壮大なスケールの『大唐西域壁画』は、年に4回の期間限定で拝観が可能。壁画殿内は一切撮影禁止ですが、今回、ネットでは初公開の2枚の内部写真と共に、その真の魅力や込められた想いに迫ります。

事前情報は重要!玄奘三蔵院伽藍『大唐西域壁画』公開期間

写真:いずみ ゆか

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平山郁夫画伯の『大唐西域壁画』は、有名な国宝薬師三尊像や東塔・西塔がある薬師寺の「白鳳伽藍」では無く、近鉄西ノ京駅側の「玄奘三蔵院伽藍」大唐西域壁画殿に奉納されています。

大唐西域壁画殿は、一切撮影禁止。今までほとんどの方が、現地を訪れるか図録や本を購入する事でしか内部を知る事はできませんでした。更に、殿内には壁画に関する詳細な解説がありません。その空間を各々感じて頂くための配慮でもあるのでしょう。しかし事前情報が無ければ、見逃してしまうポイントもあるのです。
お借りした内部写真を中心に「画伯が込めた想い」「鑑賞ポイント」「壁画の秘話」「最もシルクロードを体感できる日」をご紹介します。是非、一読した上で、実際に『大唐西域壁画』を目の当たりにしてみて下さい。その圧倒的な迫力は思わず言葉を失うほど、強い感動を与えてくれます。

■玄奘三蔵院伽藍『大唐西域壁画』公開期間
 1月1日〜15日
 3月1日〜6月30日
 8月13日〜15日
 9月16日〜11月30日

『不東』玄奘三蔵様と平山郁夫画伯と薬師寺

写真:いずみ ゆか

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西遊記でお馴染みの玄奘三蔵法師は、真の仏法を求め、出発前に「インドに着くまでは一歩も東に帰るまい」という『不東』の誓いを立て、中国からインドまで旅をしました。薬師寺は法相宗の大本山。法相宗の教義「唯識」はインドで成立後、玄奘三蔵法師がインドのナーランダ寺院で修めて帰国し、中国にもたらされたもの。法相宗の開祖・慈恩大師は玄奘三蔵法師の弟子であり、玄奘三蔵法師は薬師寺の始祖と言える存在です。

平山画伯は、中学時代に8月6日の原爆で被爆し、その惨劇や被爆の後遺症に苦しんだ経験から、著書で「一枚でもよいから広島の被爆体験を浄化させ、恨みつらみでなく、平安と鎮魂を求める作品を描きたい」と綴っています。
シルクロードを通った仏教文化は日本文化の源流。7、8世紀の日本文化に影響を与えた玄奘三蔵法師への想いと共に、シルクロードを平和の道として作品の題材にしました。
平山画伯は、薬師寺の白鳳伽藍再興で天井画を手掛け、故・高田好胤管長と親交を深めました。そして玄奘三蔵法師の記念堂創建で、壁画を依頼され、二人は意気投合したのです。

『大唐西域壁画』制作のため、玄奘三蔵法師が実際に旅したシルクロードの国々の取材は、苦難の連続だったそうです。同行した奥様の美智子さんと共に強い覚悟でスケッチを描き続けた姿は、玄奘三蔵法師の『不東』の精神を感じさせます。

是非、壁画拝観前に、玄奘三蔵法師のご頂骨をお祀りする玄奘塔の『不東』の扁額をご覧下さい。これは高田好胤師のお手によるもの。
『不東』は、玄奘三蔵法師・平山画伯・薬師寺の精神を繋ぐシンボルでもあるのです。

圧巻!空間すべてがシルクロード!『大唐西域壁画』拝観ポイント

提供元:(C)平山郁夫 提供:Kodansha/アフロ

『大唐西域壁画』は、平山画伯の30年に及ぶ取材旅行の集大成として、4千枚を超えるスケッチを基に、約20年かけて描かれた”7場面・13壁面”の超大作。大唐西域壁画殿に一歩足を踏み入れれば、圧巻のシルクロード世界。
是非、現地で下記を参考に、玄奘三蔵法師の中国からインドまでの旅を体感して下さい。

■朝・昼・夕(夜)の一日の流れで描かれた玄奘三蔵法師の旅
 【朝】「明けゆく長安大雁塔」→「嘉峪関(かよくかん)をいく」万里の長城の西の果て→「高昌故城」途中立ち寄った高昌国の遺跡
→【昼】「西方浄土須弥山」壁画中央三面に描かれた天山山脈(ヒマラヤ連山)
→【夕】「バーミアン石窟」タリバーンによって破壊された2体の大仏像→「デカン高原の夕べ」
→【夜】「ナーランダの月」玄奘三蔵法師が唯識を修めたインドのナーランダ寺院

■壁画中央三面の「西方浄土須弥山」は壁画殿の御本尊(※写真参照)
薬師寺金堂の御本尊「国宝薬師三尊像」は東方(浄瑠璃)浄土の教主。その対「西方浄土」の御本尊として、「須弥山」は描かれています。2000年12月31日23時59分、開眼供養で平山画伯が最後の一筆を入れたのは、須弥山の雪。

■平山画伯の”群青色”で描かれたシルクロードの夜空(天井画)
広島県生口島出身の平山画伯は、ふるさと瀬戸内の”群青の海の色”を「自分の色」として仏教画で多用。見上げると、貴重なラピスラズリの群青で夜空を描いた格天井画が。「砂子(金箔の粉)で星」「東(右側)に金で太陽」「西に銀で月」「散華」が描かれています。

■床に表された砂漠とオアシス
象牙色の床は、タクラマカン砂漠。「西方浄土須弥山」前の床は、灌木や駱駝草を描いた4種類のレンガで、オアシスを表しています。
※写真画像は平山郁夫氏の著作権使用許可を取得

『ナーランダの月』 玄奘三蔵法師と高田好胤師

提供元:(C)平山郁夫 提供:Kodansha/アフロ

拝観の最後に、旅の終着インドを夜で表した『ナーランダの月』をご覧下さい。玄奘三蔵法師が唯識を修められたインドのナーランダ寺院が、一枚の大きな越前和紙に描かれています。実はこの絵には秘話があるのです。
画面の右下辺りに”ぼんやりと立つ人の姿”が描かれているのがお分かりでしょうか?
壁画完成の最終段階で、平山画伯と玄奘三蔵法師への想いを共にした高田好胤師が亡くなられました。平山画伯は、玄奘三蔵法師と高田管長の姿を重ね合わせて、この人物を描いたのです。
※写真画像は平山郁夫氏の著作権使用許可を取得

最もシルクロードが体感できる日!『毎月5日の13時』玄奘三蔵縁日

写真:いずみ ゆか

『大唐西域壁画』はカビ等を防いで壁画を保存するため、空調管理が行われており、通常はガラス越しでしか拝観する事はできません。
しかし、月にたった1回、約10分間だけ、ガラス越しでは無い大唐西域壁画を拝観できる特別な日があります。それは・・・
■毎月5日の13時『玄奘三蔵縁日』の御法要
2月5日が玄奘三蔵法師の命日であるため、”毎月5日の13時”に壁画前のガラスが2枚外され、西方浄土(=壁画殿)の御本尊「須弥山」前で、薬師寺のお坊様による般若心経読経の御法要が行われます。特に予約せずとも参加可能。
読経を拝聴しながら、ガラスを通さない『真の大唐西域壁画』をご覧になってみて下さい。彩色の輝きや、空気が全く違う、玄奘三蔵法師や平山画伯が歩んだシルクロードを最も体感できる瞬間です。(御法要後は法話を拝聴できます)

他にも、薬師寺と平山画伯の繋がりが分かる素敵な品があり、お土産としてお勧めです。
●薬師寺白鳳絵皿(写真左)
平山画伯が白鳳伽藍再興の際に手掛けた天井画の彩色文様『法相華』デザイン(国宝東塔の天井にかすかに現存する彩色画が基)のもの。
●散華(写真右)
平山画伯を含め、日本を代表する画家が手掛けた手彫手摺木版画の美しい一片の花。

平和とは

20世紀最後の瞬間、2000年12月31日23時59分に『大唐西域壁画』は入魂開眼法要で最後の筆入れをし完成しました。
玄奘三蔵法師の旅はまさに異文化交流。お互いの違いを認め、友好を深めた大先達でした。実は21世紀こそ、平和実現に努めて文化交流を盛んにすべきという願いが壁画には込められているのです。
原爆を体験した平山画伯。残念ながら、現在のシルクロードは核と関係が深く、容易に訪れる事が出来ない地域。また、日本も福島原発事故などの問題があります。
筆者は奈良在住ですが、肉親や身内が福島・関東・広島におり、『大唐西域壁画』を目の当たりにした瞬間、言葉に詰まるものがありました。

1人の画家が、全身全霊を注いで描き切った作品には、言葉は不要なのかもしれません。是非、写真では無く、現地で実物を見て「生きるとは」「平和とは」何か、あなたの心の目で感じ取って来て下さい。

《その他の薬師寺情報》
■毎年5月5日は『玄奘三蔵会大祭』が行われ、天理大学雅楽部による「伎楽隊」を見る事が出来ます。
■国宝「薬師三尊像」「聖観世音菩薩像」に関して、MEMO欄より「東洋美術の最高峰!奈良薬師寺の仏様鑑賞ポイントと白鳳の美」をご参照下さい。
《参考文献》
■「玄奘三蔵院」発行:法相宗大本山薬師寺 制作:株式会社講談社
■「平山郁夫と玄奘三蔵」監修:平山郁夫 博雅堂出版
■「薬師寺」著者:平山郁夫 薬師寺管主・山田法胤 出版:淡交社

●『大唐西域壁画』『ナーランダの月』画像提供 講談社(株式会社アフロ) ※二次利用禁止。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/06/05 訪問

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