有珠山は標高737m。北海道・洞爺湖の南にあり、20世紀の100年の間だけでも4回の噴火と、活発な火山活動を繰り返しています。
その一番最近の噴火が2000年3月31日、有珠山から南西に3.5km離れた「西山」の山麓で起き、噴煙は3,500mまで上がりました。
数日前から噴火の予兆となる地震活動があり、3月29日には気象庁から緊急火山情報が出され、住民はすでに避難していたため幸いにも人的被害はありませんでした。
翌4月1日には洞爺湖温泉のすぐ後ろの金毘羅山からも噴火。噴石や熱泥流を伴い、まるで移動しているかのように次々と噴火口を開け、その数はなんと50以上にもなります。
※上の写真は住宅の真下に開いた噴火口。上に建っていた家は吹き飛び土とともに降り積もり山のようになってしまいました。写真左側の斜面には粉々になった家屋の残骸が今も見ることができます。
この有珠山の噴火で一番衝撃的なことは、噴火が国道230号線上や住宅で起きたという、まさに一歩間違えば大惨事になったこと。
噴火というとどうしても人の住んでいない山頂から噴煙を上げ…というイメージが強いのは筆者だけではないと思います。
人が生活しているところで噴火する…人間がどこに住んでいようが自然にしてみればまるで関係ない、ということを実感せずにはいられません。
上の写真のように、噴火により陥没した国道230号線には、今では地下水や雨水が溜まり、西新山沼(西山火口沼)となっています。半分まで水に浸かった「止まれ」の道路標識や電柱、垂れ下がった電線…時が止まったかのようなこの光景には呆然とするばかり…。
正面の建物は旧西胆振消防組合本部です。
噴火口の開いた国道230号線は当然のことながら、周辺道路は地盤の隆起と断層により破壊され通行不能。上の写真は国道230号線と平行して通り、破壊された町道の泉公園線。固いアスファルトがズタズタに引き裂かれ、そのエネルギーの凄まじさがわかります。
隆起による段差は最大で70mにも及び、この道が平坦な道であったとは想像することもできません。道路上は危険なので歩くことができませんが、隣の散策路を歩くことができます。隆起した分が勾配となっていますので「こんなに盛り上がったんだ…」と嫌でも感じることができるでしょう。
西山山麓噴火口は現在では噴火の脅威を目の当たりにできる、約1.6kmの散策路として整備され、1時間程で見る事ができます。
駐車場からすぐのところに西新山沼があり、破壊された町道脇の道を通り展望台へ。この付近に開いた噴火口の数は30近く、展望台からはあちこちに開いた噴火口や、噴火の爪痕を一望することができます。
散策路には柵が設けられ、火口の中には立ち入ることはできません。ところどころうっすらと水蒸気が上がり、地熱が高いのがわかります。
火山性ガスが発生しているのか、筆者はしばらくいると軽い頭痛がしてきました。気管支に障害のある方や、体調のすぐれない方は無理しない方が良いでしょう。
西山山麓噴火口散策路
アクセス
電車:JR室蘭本線 洞爺湖駅〜バス「西山遊歩道入口」下車
車:道央自動車道 虻田洞爺湖IC
ゲート開門7時〜18時 ※11月中旬〜4月中旬は閉鎖
展望台を過ぎると、噴火により破壊された町が現れます。火山活動による隆起の為か散策路は勾配のキツイところも…。
噴火当日、地殻変動によって破裂した水道管の修復作業をしていた水道工事業者がいましたが、突然噴火が始まった為に急ぎ避難。置いていった重機が今も残されています。
噴石や地殻変動により倒壊した製菓工場(上の写真)や住宅、錆びついた車、噴石を受け壁に穴が開いた幼稚園…。
噴火の破壊力を実感するとともに、かつてここが人の生活していた地域であったことを教えてくれます。
最近では富士山の噴火も危惧されていて、CGなどもTVで目にすることがありますが、今一つ恐ろしさが伝わってきません。
それがこの有珠山西山山麓噴火口へ来ると実感として、噴火の恐ろしさが伝わってきます。そして自然の脅威の前には人は為す術もなく、身を守るためには逃げるしかないのだと…。
100聞は一見に如かず…この地で噴火の恐ろしさを目の当たりにしてみてください。
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(2024/4/23更新)
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