写真:塚本 隆司
地図を見る書写山に登るには6つの登山ルートとロープウェイがある。登山道にはそれぞれの魅力があるが、ロープウェイの4分間の空中散歩は、地上から祈りの地へと瞬く間に運んでくれる。
JR姫路駅から書写山ロープウェイ行きのバス(8番)に乗り約30分で、ロープウェイ書写山麓駅に着く。無料駐車場もあるのでマイカーでも訪れやすい。
開基・性空(しょうくう)上人は、966年に紫雲に導かれ入山したと云われる。その紫の雲がたなびいていたとされる紫雲堂跡展望広場のすぐ上にロープウェイは到着する。ロープウェイを降りれば、そこは西国三十三霊場の第二十七番札所・書写山円教寺の参道だ。
「はるばると登れば書写の山おろし 松の響きも み法(のり)なるらん」
ご詠歌にもあるように、松の枝が風にたなびく音すら祈りの言葉に聞こえてくる。
西国霊場のご本尊観音菩薩の青銅仏が並ぶ参道を進むと、仁王門があらわれる。参道の終点であり、この門をくぐると聖域だ。明治のはじめまで女人禁制だったという。
仁王門をくぐり先に進む。古い石標が並び苔むした山肌と木々のもたらす澄んだ空気が、心に安らぎを与えてくれる。途中、寿量院と呼ばれる国指定重要文化財がある。山内で最も格式の高い塔頭寺院だ。4月から11月までは事前予約が必要だが、昼食として精進料理がいただける。また、その先にある円教寺会館では宿泊も可能だ。姫路市の小学生は林間学校として宿坊体験をする。今も昔もかわらない、姫路で育った者の世代を超えた共通の思い出だという。
さらに進むと湯屋橋という石橋がある。およそ400年前に姫路藩主から寄進されたと云う橋だ。これを渡ると目に入るのが摩尼殿である。
切り立った崖上に沿うように建てられた摩尼殿は、京の清水寺と同じ掛造りといわれる前面を高い脚組で支える舞台つきの建物である。性空上人が崖地の桜木を拝む天人を見て、生木に如意輪観音像を刻んだのが始まりと云われている。現在の建物は昭和8年の再建だ。
写真:塚本 隆司
地図を見る写真:塚本 隆司
地図を見る摩尼殿への参拝を終え、裏手から三つの堂へと向かう。この道は私も大好きな道だ。樹齢650年以上の杉の木や大仏が見守る道を抜けた瞬間に目に飛び込んでくるコの字型に並ぶ三つの堂。その圧倒的な迫力に誰もが息をのむだろう。左から舞殿のある常行堂、長大な二階造りの食堂(じきどう)、二層屋根の大講堂。いずれも国指定重要文化財だ。
食堂では写経、常光堂では座禅体験を行うこともできる。この空間に立てば修行僧のように何かやってみようかと思ってしまうほどだ。詳しくは書写山公式ホームページを見て欲しい。
近年では映画のロケ地としても多く使われ、有名なものでは以下のものがある。
映画 ラストサムライ(2003) 主演:トム・クルーズ、渡辺謙
NHK大河ドラマ 武蔵 MUSASHI(2003) 主演:市川海老蔵(当代)
NHK大河ドラマ 軍師官兵衛(2014) 主演:岡田准一
NHK大河ドラマ 軍師官兵衛では、ドラマの中でも書写山円教寺として登場する。実際の場所がロケ地になるのは珍しいという。羽柴秀吉は黒田官兵衛の勧めで本陣をこの書写山に置く。円教寺にとって招かれざる客だ。静寂の祈りの場が一転して兵士であふれ陣太鼓が鳴り響く場所となったのだ。食堂には、当時の兵士が書いた柱の落書きが展示されている。落書きは末代までの恥だと教えてくれる。
写真:塚本 隆司
地図を見る2013年に新たに国指定重要文化財に登録された奥の院、開山堂。開基・性空上人をまつるお堂が食堂の先にある。書写山一千年の歴史を物語る円教寺の中核をなすお堂だ。四隅の軒に左甚五郎作と伝えられる力士の彫刻がある。そのうち西北隅の一つは、重さに耐えかねて逃げ出したという伝説があるほど。表情から苦しさが伝わってくる必見の彫刻だ。
書写山のみどころは数限りないほどある。中でも私が一番好きな場所を最後に紹介したい。性空上人が六根清浄の行をつみ心眼を開いたという白山神社へと続く道だ。六根清浄とは、人間が俗世の中で濁ってしまった六根(目・耳・鼻・舌・身・意識)を仏の働きをするようにし真実を見通せるようになることという。露出した木の根が続く道は、俗世と離れ自然を満喫できる道なのだ。
写真:塚本 隆司
地図を見る姫路では、書写山は姫路城に次ぐ観光地だ。その魅力は語り尽くせない。歴史的にもゆかりの人物や関連する場所が点在している。武蔵坊弁慶が修行した話や姫路城城主らの墓。国指定重要文化財すら全て紹介しきれていないのだ。何より古くから霊山・聖地として崇められた魅力に多くの観光客が感嘆する。ぜひ訪れ、この地のパワーに身を委ねてみて欲しい。きっと満足するはずだ。
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(2024/4/20更新)
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