写真:SHIZUKO
地図を見る厳島神社のある『安芸の宮島』は、島そのものが神域で古くから信仰の場。そのため、背後にそびえる『弥山』では、林業や農業が禁止されていて、古来からの原生林が残っており、国の特別天然記念物にも指定されています。世界文化遺産に登録されたのは「厳島神社の建造物群と背後の弥山を含む森林区域」。厳島神社が海にせり出すように建てられたのは、ご神体である島に直接建造物を作るのを避けたためだからだそうです。自然崇拝に基づく日本人独特の精神文化そのものが世界遺産として、保護すべきものだと考えられたということですね。
平安時代の寝殿造りで建てられた厳島神社は、なんといっても、手の込んだ装飾と複雑な直線と曲線が織り成す美しさが真骨頂。
海の中に、自重だけで立っている天然木の大鳥居は、干潮だったら、大鳥居の真下まで行くことができますから是非どうぞ。傍で見ると、天然木の曲線が微妙な色気を感じさせます。さすが、女神さまを祭る神社だけあります。美しさと、色気、そして凛とした荘厳さ。どれも女性にとって身に備えたい大切なものです。
写真:SHIZUKO
地図を見る古代から霊山とされ、人々の信仰の対象だった弥山に空海(弘法大師)が修業道場を開基したのが806年ですから、今から1200年以上も前。
その時から消えずに燃え続けていると言われるのが『消えずの霊火』で、弥山七不思議のひとつです。登山道の途中にある不消霊火堂(きえずのれいかどう)で今も燃え続けていて、その火で沸かした大茶釜の湯は、万病に効く霊水と言われています。
また、山頂の手前にある『干満(かんまん)岩』も七不思議のひとつ。大きな岩に小さな穴が開いていて、その中の水は海の潮が満ちると溢れ、潮が引くと乾くと言われています。実際にその水を舐めてみると塩辛いそうです。
霊火堂の横には『錫杖の梅(しゃくじょうのうめ)』があり、なんでも弘法大師が立てかけた錫杖が根を張ったというもの。今も紅梅が可憐な花をつけますが、弥山によくないことが起きる時には咲かないといわれています。
さすが霊山だけあって、不思議な話はまだまだたくさんあるようです。
写真:SHIZUKO
地図を見る弥山には登山道が三本。ロープウェイのそばを通る『紅葉谷コース』、大聖院仁王門から登る『大聖院コース』、大元公園から駒が林を通る『大元コース』。どのコースも海抜ゼロメートルから標高535メートルを登るのですから、多少の覚悟は必要です。例えば『大聖院コース』だと、登り初めから30分くらいは、全く平坦な部分がなく、ひたすら登る。息は上がるし、足もだるい。そろそろ休憩したいなというあたりで『白糸の滝』に出会います。巨大な一枚岩を流れる滝に、ちょっと小休止。
振り返れば、急坂の向こうに、海に浮かぶ大鳥居が、その向こうには対岸の広島の町が見えます。
写真:SHIZUKO
地図を見る厳島神社の奥の院である『御山神社』は、山頂近くの大きな岩の上に建てられています。神代の昔、天照大神(あまてらすのおおかみ)の娘である宗像(むなかた)三女神=市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)・田心姫命(たごりひめのみこと)・湍津姫命(たきつひめのみこと)が降り立った場所として、3つの社殿があります。
ここにやってくるまでもそうですが、パワースポットと呼ばれる場所が持っている澄んだ空気で思いっきり深呼吸してみると、体の中に新しい力がみなぎってくるように感じます。急坂を登る中で、汗と共に体にたまった嫌なものが流れ出たからこそ、受け入れることができるパワーなんでしょう。
写真:SHIZUKO
地図を見るいよいよ頂上に到着すると、その不思議な世界にきっと誰もが驚くことでしょう。こんな高いところに、こんなにも大きな岩が重なり合って、崩れ落ちたりしないんだろうかと思う人は多いはず。
この風景こそが弥山を霊山たらしめているのです。古来より、巨岩そのものに神を見てきた古神道の精神を感じずにはいられない風景です。
弥山展望台は、建て替えのためにしばらく閉鎖されていましたが、2014年から新しい展望台が登場し、弥山登山の人々の絶好の休憩場所になっています。ここからの眺めは、まさに360度のパノラマビュー。苦労して登った人だけが手に入れられる素晴らしい眺望です。
気持ちよく頂上でパワーチャージした後は、別ルートで下山するのもありですが、頂上から20分ほど下るとロープウェイの獅子岩駅があります。ロープウェイを使って下ると、よくぞこんなに急な山を自分の足で登ったものだと、達成感と充実感を強く感じられますので、お勧めです。
宮島は、世界遺産だけあって、外国人観光客も多く、自然と笑顔で挨拶を交わします。登山道ですれ違う時にちょっと交わす会話が、なんとも嬉しいんです。下っている時には「後、もうちょっと。がんばってください!」とか、登ってくる人には「山頂は素敵でしたよ」とか。そんなお互いのねぎらいが、最後まで頑張って登る元気をくれるんですね。
宮島はさほど大きくない島ですが、見所が満載。春の桜、秋の紅葉も素晴らしいところです。日本が誇る世界規模の観光地に、ぜひお出かけ下さいね。
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(2024/3/29更新)
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