古寺と桜の饗宴!奈良の「大野寺・長谷寺・談山神社」巡り

古寺と桜の饗宴!奈良の「大野寺・長谷寺・談山神社」巡り

更新日:2020/01/16 14:48

桜がその景色を美しく見せるのか、景色がその桜を美しく見せるのか…

平安時代に京に都が移されるまでは政治の中心地だった奈良。その為古い神社仏閣が多く、「古寺に桜」というまたとない景色に出逢えます。
京都のように洗練された感じはありませんが、どこかほっとする奈良のお寺。
数ある奈良のお寺・神社の中から、それぞれがまるで違う趣の桜が愉しめる大野寺・長谷寺・談山神社をご紹介いたします。

古寺+桜 これぞ奈良の春!

古寺+桜 これぞ奈良の春!
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奈良県の宇陀市と桜井市。この隣接した2つの市にお勧めの大野寺・長谷寺・談山神社があります。奈良市より南方に位置し自然が豊かで、桜井市は飛鳥時代以前の歴史の中心地でもありました。
そのため飛鳥時代に縁起を持つ神社仏閣も多く、その刻んできた歴史に桜の華やかさがいっそう美しく映え、古寺と桜の饗宴はまさに「奈良の春」です。

この枝垂桜は見事!百花繚乱の大野寺

この枝垂桜は見事!百花繚乱の大野寺
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奈良県宇陀市・宇陀川沿いにある大野寺は、女人高野で知られる室生寺の末寺。
大野寺は白鳳9年(681年、飛鳥時代)に役行者が開き、天長元年(824年、平安時代)、弘法大師が室生寺を開創した時、この地を西の大門と定め弥勒寺を建立したのが始まりと云われ、その後地名を名づけて「大野寺」となります。

大野寺は対岸にある弥勒磨崖仏が有名で、これは鎌倉初期に後鳥羽上皇の勅願により造られたもの。その大きさが11・5mにもなる立像です。この磨崖仏が彫られた岩を「弥勒岩」といい、弥勒岩のある対岸を浄土と見たて、浄土に住む弥勒菩薩が次の世に現れたお姿だとか。

そしてこの桜の時期、大野寺境内には樹齢300年を超える枝垂れ小糸桜が2本、樹齢100年の紅しだれ桜が30本あり、それはもう「見事」という言葉でしか表現できません。特に枝垂桜は「重くない?」と思わず心配してしまうほどその枝に花をぎっしりとつけていて、地面に着きそうな枝も…。
また、桜だけでなくレンギョウや雪柳、モクレンの花も楽しむことができて、この時期の大野寺はまさしく百花繚乱です。

大野寺
 時間:8時〜17時(冬季は8時〜16時)※見頃期間中21時迄ライトアップあり
拝観料:300円
 見頃:4月上旬 

アクセス
電車:近鉄大阪線 室生口大野駅より徒歩7分
 車:名阪国道 小倉ICよりやまなみロード経由約11km(名古屋方面より)
        針ICよりR369号〜県道28号〜R165号経由約10km(大阪方面より)

境内が桜で彩られる長谷寺

境内が桜で彩られる長谷寺
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長谷寺と言えば牡丹の花で知られていますが、実は桜の木もその山内に数千本あり、桜が咲き始めると境内の本堂や五重塔が桜で華やかに彩られます。ソメイヨシノや山桜、奈良八重桜、枝垂桜など様々な種類があるので長く桜が愉しめます。

その縁起は朱鳥元年(686年、飛鳥時代)、道明上人が天武天皇のために「銅板法華説法図」をこの初瀬山に安置したことが始まり。
ご本尊の十一面観世音菩薩は、神亀4年(727年、奈良時代)に聖武天皇の勅願で徳道上人により祀られました。ちなみにこの徳道上人が観音信仰に篤く、西国三十三所霊場を開いたためこの長谷寺はその根本道場と呼ばれる所以になっています。

伽藍と桜の調和が美しい長谷寺の境内は、お寺としても素晴らしく観音信仰に触れることができます。

まず入口に立派な仁王門がありますが、その「長谷寺」の額は後陽成天皇(安土桃山時代〜江戸時代)の筆によるもの。御宸筆(天皇の直筆)というところにもその由緒の正しさが窺えます。

仁王門をくぐり本堂に続く「登廊(のぼりろう)」は長谷寺の趣にはかかせません。
これは長歴3年(1039年、平安時代)春日大社の社司・中臣信清が、観音様の霊験により子供の病気が平癒したお礼にと寄進したもの。
上・中・下の三廊からなり399段の階段がありますが、灯篭が吊るされた登廊はとても風流。
当時の人は観音信仰に篤いだけでなく、その見た目の美しさにもこだわっていたのですね。(現在の中・下廊は明治22年の再建)

国宝の本堂は初瀬山の断崖絶壁にあり「舞台造り」で、ご本尊の十一面観世音菩薩をお祀りするのに相応しい荘厳な大建造物。
その十一面観世音菩薩はといえば、近江国高島から来た楠の霊木をもちいて作られたと云われています。高さが10mもあり錫杖を持った十一面観世音菩薩は前に立つとその迫力からすべてを見透かされているかのような感覚に…。人々の信仰を集めたのも頷けます。

戦後になり、五重塔が初めて建てられたのがこの長谷寺。純和様式で整った形をしており、昭和の名塔と言われています。初瀬の山に塔の朱色が鮮やかに映え、本堂からの眺めやすぐ横にある桜との2ショットなど、絵になる五重塔です。

長谷寺
入山時間:8時30分〜17時(4月〜9月)、9時〜16時30分(10月〜3月)
  料金:大人500円 小人250円
  見頃:3月下旬〜4月下旬
アクセス
電車:近鉄大阪線 長谷寺駅より徒歩15分
 車:名阪国道 針ICよりR369〜R165経由15km(名古屋方面より)
   西名阪自動車道 天理ICよりR169〜R165経由18km(大阪方面より)

世界唯一・木造十三重塔と桜のコントラストが美しい談山神社

世界唯一・木造十三重塔と桜のコントラストが美しい談山神社
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談山神社は大化の改新の折に、中臣鎌足と中大兄皇子がここ多武峰(とうのみね)の裏山で談合したことから、「談い(かたらい)山」「談所が森」とも呼ばれ、その名前の由来となっています。

藤原(中臣)鎌足は没後、摂津国阿威山に葬られましたが、白鳳7年(678年、飛鳥時代)に息子の定慧(じょうえ)が遺骨をこの多武峰の地に改葬、十三重塔・講堂を建立したことが談山神社の創始となります。
現在の十三重塔は亨禄5年(1532年、室町時代)に再建されたものですが、木造の十三重塔は世界のどこを見てもここにしかない貴重なもの。桜の時期はこの歳月を重ねた重厚な十三重塔と華やかな桜がとても美しいコントラストを見せています。

大化の改新の舞台裏ともいえるこの談山神社。
中大兄皇子と中臣鎌足が飛鳥法興寺の蹴鞠会(けまりえ)で出会った故事に因み、春と秋には「けまり祭り」が行われます。
拝殿には江戸時代に大化の改新の様子を描いた絵巻があり、拝観することができるので、歴史の変わった瞬間に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。この拝殿の外の回廊には吊灯籠があり趣を添えています。

また多武峰には古くから縁結び信仰がありました。談山神社境内より「恋の道」を抜けると辿り着くのはその名も「恋神社」。この恋神社には藤原鎌足の妻で、情熱的な恋の歌を残している万葉歌人の鏡王女(かがみのおおきみ)が恋の神様として祀られています。

談山神社
入山時間:8時30分〜16時30分(拝観受付)
 入山料:大人500円 小人250円
  見頃:4月上旬〜中旬
アクセス
電車:近鉄大阪線、JR桜井線 桜井駅南口より バス談山神社行
 車:西名阪道 天理ICよりR169号〜県道37号経由約20.5km

おわりに…

奈良と言うと東大寺や法隆寺など奈良市内に目が行ってしまいがちですが、市街地の喧騒を離れたところにも古代の日本を感じさせる古寺がたくさんあります。
そしてその古寺のそれぞれの持つ歴史と桜の美しさが重なり合い、その趣を深くしています。

桜がその景色を美しく見せるのか、景色がその桜を美しく見せるのか…

答えは人によって違うと思います。ご紹介した大野寺・長谷寺・談山神社は車であれば1日で回れる距離にありますので、自分だけの答えを見つけに奈良の春に出逢ってみてはいかがでしょうか。

掲載内容は執筆時点のものです。 2005/04/13 訪問

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