日本一高いビルで見る富士山「北斎-富士を超えて-」あべのハルカス美術館

日本一高いビルで見る富士山「北斎-富士を超えて-」あべのハルカス美術館

更新日:2017/10/12 16:41

Sige pandaのプロフィール写真 Sige panda パンダライター、パンダスポット探検家
あべのハルカス美術館で2017/11/19迄開催される「北斎-富士を超えて-」。稀代の浮世絵師 葛飾北斎の晩年30年に焦点をあてたこの展示会は大英博物館との共同企画で、日本ではここだけの開催となります。大英博物館では連日長蛇の列を作る盛況ぶりで15万人に及ぶ来場者が話題を呼びました。一般的な年代順の展示ではなくテーマに沿って展示しているので、よりその世界に入り込みやすい展示となっています。

緻密な版画と美しい筆致の肉筆画

緻密な版画と美しい筆致の肉筆画

写真:Sige panda

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北斎といえば版画を思い浮かべますが、優れた肉筆画も多く残しています。今回の展示では肉筆画60点を中心に世界中から約200点の作品が集結しました。

ヨーロッパの影響を受けたとされる風俗画。日本の紙よりも表面がなめらかで吸水性が低いとされるヨーロッパの紙を使用した事でより緻密な描写が可能になったとされています。着物の細やかな文様や、肉筆画ならではの光と影の表現が見所です。

緻密な版画と美しい筆致の肉筆画

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北斎の代表作である「富嶽三十六景」入口の壁面には大きな赤富士が。展示では凱風快晴(赤富士)や神奈川沖波裏(Great wave)などを見る事ができます。日本一高いビルでみる日本一の山、富士山。なかなか面白いですね。

緻密な版画と美しい筆致の肉筆画

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江戸の版元では人気の作品は数千枚もの数が刷られ、その過程でより早く簡単に刷れるように作業が単純化されていきました。そのため北斎の意図と異なる色で刷られたり、もともとの刷りにはあった微妙な効果を失ったものもあります。初期と後の方に刷られたものでは印象がだいぶ違う事も。会場には赤富士の刷を参考に図を並べて分かりやすく解説してあるので、是非見比べて下さい。

北斎の娘 応為の貴重な作品も

北斎の娘 応為の貴重な作品も

写真:Sige panda

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晩年の北斎と同居し、その生活と画業サポートしたとされる娘のお栄(応為)。最近はNHKのドラマなどでも取り上げられ、ご存知の方も多いのではないでしょうか。北斎に「美人画は俺よりうまい」と言わせたほどの実力があったとされています。

しかし残っている肉筆画は少なく、推定作を含めても10点もないのだとか。会場には応為のものとされる貴重な作品3点と自筆の手紙も展示されています。「菊図」は北斎の落款が入っていますが、応為的な要素があるので、北斎との合作という推定で展示されています。皆さんはどう思いますか?ぜひ会場でその筆遣いを観察してみて下さい。

世界初のペア展示!?貴重な下絵と版下絵

世界初のペア展示!?貴重な下絵と版下絵

写真:Sige panda

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版画が完成していない「版下絵」も展示されています。版下絵は木版画の作成過程で失われてしまうもの。版画が完成していないからこそ残っている貴重な資料です。「日本名将伝」とそれを元にした版下絵「大日本将軍記」は挿絵の下絵と版下絵が対で残っているというめずらしい例で、この2つが並んで展示されるのは今回が初めて。あべのハルカス美術館の浅野館長によると、所蔵先であるボストン美術館でも今までなかったのだそう。

世界初のペア展示!?貴重な下絵と版下絵

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「日本名将伝」には下絵ならではの推敲の跡なども残っていて、北斎の筆致を感じる事ができます。

世界初のペア展示!?貴重な下絵と版下絵

写真:Sige panda

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会場には版画をする時に使用する道具「馬連(ばれん)」の展示も。皆さんも昔美術や図工の授業で使った事があるのではないでしょうか。紙の表面を滑らせて使う馬連は200〜300枚で表面が摩耗し、取り替えていたのだとか。江戸時代には専門の職人もいたようです。

今のような印刷技術もない時代、それだけ版画が刷られていたという事ですね。こちらの馬連は大英博物館所蔵1900年代初頭頃のものとされています。ただの馬連かと思いきや貴重な資料なのですね。

「神の領域」を目指す晩年

「神の領域」を目指す晩年

写真:Sige panda

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北斎80歳を過ぎて訪れた地、小布施(長野県)の祭屋台の天井絵として描かれた一対の「濤図(なみず)」波に魅了されその書き方を研究していたという北斎の集大成ともいえます。

「神の領域」を目指す晩年

写真:Sige panda

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並べると道教の太極図が浮かび上がるとされ、波なのか、渦なのか、あるいは天空なのか。北斎はこの絵で宇宙を描こうとしていたと考えられています。

「神の領域」を目指す晩年

写真:Sige panda

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こちらはもともと一対の作品であったと言う事が2005年に判明した「雨中の虎図」と「雲竜図」。今回12年ぶりに双幅での展示が実現しました。残念ながら双幅での展示は10月12日までの期間限定ですが、「雲竜図」は会期最後まで展示されます。また図録には見開きで並んだ形で収録されていますので、見逃してしまった方は図録の方でお楽しみ下さい。

百まで生きたい!護符のような百の印

百まで生きたい!護符のような百の印

写真:Sige panda

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「神の領域」と題された展示。北斎は歳を重ねるごとに画家としての技量が高まり、100歳まで生きられれば神の領域に達すると信じていました。数え88から90歳までの肉筆画には「百」の印が押されています。「天があと5年命をくれたなら、真性の画家になれただろうに」という言葉を残して亡くなったとされる北斎。まるで護符のように100歳まで生きたいとする願いが込められているようです。

「富士越竜図」は落款に九十老人卍筆とあり、北斎が90歳の年の1月 辰の日に描かれたものです。一見まっすぐな線も短い線を何度も重ねている様子が見られます。身体が思うようにならず、手が震えてもなお描こうとした北斎の執念が伝わってきます。富士を超えて天に昇る龍のように自らも「神の領域」を目指した北斎。そんな執念が1点1点に込められているようです。

晩年 画狂老人と名乗り、描きに描いた北斎の貴重な作品群。北斎の作品はモネやゴッホなど世界的な画家にもにも影響を与えました。代表作「富嶽三十六景」は2019年度中の導入予定の日本の新パスポートのデザインにも採用されています。芸術の秋、日本一高いビルで北斎の描いた富士を見てみませんか。※会期中一部展示替えも行われます。前期は10月29日(日)まで、後期は11月1日(水)から19日(日)まで。

あべのハルカス美術館の基本情報

住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
電話番号:06-4399-9050
アクセス:近鉄「大阪阿部野橋」駅 西改札
JR「天王寺」駅 中央改札
地下鉄御堂筋線「天王寺」駅 西改札
地下鉄谷町線「天王寺」駅 南西/南東改札
阪堺上町線「天王寺駅前」駅 よりすぐ

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掲載内容は執筆時点のものです。 2017/10/05 訪問

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