「生きた建築ミュージアム」の建築を巡り、大阪の都市の魅力に触れよう!

「生きた建築ミュージアム」の建築を巡り、大阪の都市の魅力に触れよう!

更新日:2017/11/27 18:20

近年大阪では "生きた建築" という言葉が大きな注目を浴びています。それは近代のレトロ建築から現代の高層ビルまで、都市・大阪の魅力を生き生きと伝えるユニークな建物のこと。大阪ではこれらが点在する大阪をひとつの巨大な建築博物館 "生きた建築ミュージアム" として発信しており、毎年秋には一斉公開イベントが催されています。大阪の文化の息遣いを今に伝える "生きた建築" に、あなたも触れてみませんか。

大阪の営み・暮らしぶりを伝える "生きた建築" とは?

大阪の営み・暮らしぶりを伝える "生きた建築" とは?
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突然ですが皆様は "大大阪(だいおおさか)時代" という言葉をご存知でしょうか。大正中期までは現在の大阪環状線の内側と一部の港湾部だけの狭い市域だった大阪市ですが、1925年(大正14年)の市域拡張により人口日本一の都市となります。首都・東京を凌駕する世界有数の大都市はいつしか "大大阪" と評され、様々な産業・芸術・文化の中心となる華々しい時代が到来しました。

1920年代後半から30年代前半を指す "大大阪時代" にできた建物を含め、大阪市中心部には多くの戦前建築が残ります、空襲をも耐え抜いたこれらの建物は、戦前の栄華を現代に伝える貴重な建物です。大阪中之島のランドマーク「大阪市中央公会堂(設計:辰野金吾+片岡安)」(写真)もその一つですが、大阪の文化や暮らしの名残を残す建物は、まだまだ多く存在します。

大阪の営み・暮らしぶりを伝える "生きた建築" とは?
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近年大阪では、大阪の歴史や文化・暮らしぶりといった営みの証であり、その魅力を現在も生き生きと物語る建物を "生きた建築" と名付け、それらが点在する大阪を一つの大きな建築博物館に見立てた "生きた建築ミュージアム" として発信するユニークな取り組みが行われています。

では "生きた建築" は具体的にどういうものでしょうか。初めての方にお奨めするのが "大阪セレクション" の建物です。大阪の都市の魅力である "生きた建築" を端的に表す建物50件が大阪市により選定され、その建物には選定プレート(写真)が付けられています(付けていないものもあります)。大大阪の栄華を残す戦前の近代建築はもちろん、大阪の都市を語る上で外せない戦後のビルや団地、喫茶店なども選定されています。

大阪に生き生きと残る、バラエティ豊かな "生きた建築"

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大阪市内に点在する "生きた建築" を、2つの主要エリアを中心に紹介します。大坂城時代から町人文化の中心として栄えた船場(せんば)は、"大大阪時代" に建てられた近代建築が集中して残るエリアです。

南米マヤ・インカ文明がモチーフの幾何学模様が目を引く「芝川ビル」(写真)や中庭が丸ごと吹き抜けた「船場ビルディング」、外観が蔦(ツタ)で覆われた「青山ビル」など個性豊かなビルが立ち並びます。東の堺筋を歩けば有名洋菓子店が入居する旧銀行「新井ビル」や時計塔がシンボルの「生駒ビルヂング」が、現代の高層ビルの町並みから独立してノスタルジーな雰囲気を漂わせています。

大阪に生き生きと残る、バラエティ豊かな "生きた建築"
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船場が近代建築の集まる面状のエリアであるならば、御堂筋(みどうすじ)は戦後のビル建築が並び立つ線状のエリアです。繁華街である梅田(キタ)と難波(ミナミ)を市役所のある中之島を介して一直線に結び、並行して大阪初の地下鉄も敷設する、大阪都市改造の象徴といえるメインストリート・御堂筋は、2017年で完成80周年を迎えます。

白亜の色合いに角の曲線が美しい「大阪ガスビル」(写真)は、現在の御堂筋では数少ない戦前竣工の近代モダン建築です。高度経済成長期には空前絶後のビルブームにより、茶褐色タイル外壁の「御堂ビル」やメタリックなデザインをした「御堂筋ダイビル」など特徴的なビルも誕生。直交する中央大通には大阪万博開幕に合わせて建設された、高速道路とビルが一体化する巨大建築「船場センタービル」が建ちます。

大阪に生き生きと残る、バラエティ豊かな "生きた建築"
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大阪の魅力を伝える "生きた建築" はまだまだあります。難波(ミナミ)を代表する近代ターミナルビル「南海ビルディング」(写真)や、旧川口居留地のシンボル「日本聖公会 川口基督教会」、空中庭園付きの近未来ビル「梅田スカイビル」など、数え上げればキリがないほどの建物が大阪には密集しています。

しかしこの "生きた建築" の中には現役の会社オフィスや会員制倶楽部も含まれており、すべての建物が常時一般公開されていません。しかし毎年秋のある週末2日間だけ、普段入れない "生きた建築" が一斉公開されるプレミアムなイベントが行われます。それが "生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(以下、イケフェス大阪)" です。

様々な "生きた建築" が公開される秋の2日間!"生きた建築ミュージアムフェスティバル"

様々な "生きた建築" が公開される秋の2日間!"生きた建築ミュージアムフェスティバル"
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"生きた建築" が一斉公開される "イケフェス大阪" は、2017年度で第4回目の開催となりました。2017年度は10月28日・10月29日の週末2日間に開催され、"大阪セレクション" を含め過去最多となる101件の施設が参加しました。当日は各施設の前にサイン(写真は2016年度)が掲げられ、普段見学できない施設には長蛇の列が出来上がることがあります。

メインとなる2日間以外にも前日に行われる "プレイベント" 、後日に行われる "アフターイベント"があり、"イケフェス大阪" と連携・関連するイベントも開催されるなど、大阪の秋は建築イベントが目白押しです。

様々な "生きた建築" が公開される秋の2日間!"生きた建築ミュージアムフェスティバル"

提供元:生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪

https://ikenchiku.jp

ここでは "イケフェス大阪" を楽しむポイントをご解説します。公開時間は全施設同じではなく、各施設ごとに異なります。公開方式も自由入館OKから、一日数回限定のツアー形式で入館するものまで様々で、全ての施設を見学するのは至難の業です。興味を持った施設をマークし、そこを中心に見学・移動するスケジュールを立てましょう。

特にツアー形式の施設には注意が必要で、当日先着順の施設と事前申込が必要な施設があります。当日先着順であれば時間に余裕をもって並べばよいですが、事前申込ではその多くが抽選です。気になる施設が事前申込制の場合は、公式ホームページ等より申込をして、見学のチャンスをゲットしましょう。

様々な "生きた建築" が公開される秋の2日間!"生きた建築ミュージアムフェスティバル"

提供元:生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪

https://ikenchiku.jp

複数の施設をセットで見学する "スペシャルツアー" は毎年人気のプログラムです。2017年度は「船場センタービル」や「御堂筋ダイビル」などを建築家・高岡伸一さんと歩く "生きた建築ツアー" や、建築家・村野藤吾氏が設計した「綿業会館」や「輸出繊維会館」を建築史家・笠原一人さんと巡る "村野藤吾ツアー" 、小学校1〜3年生の親子ペア限定で建築史家・倉方俊輔さんと歩く "こどもツアー"(写真)など、建築界の第一線で活躍される方々の解説を聞きながらのスペシャルな建築ツアーが催されました。

新参加エリア!工事現場見学!2017年度の新しい取り組み

新参加エリア!工事現場見学!2017年度の新しい取り組み
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2017年度の "イケフェス大阪" では、20件の施設が初参加となりました。新エリアとして注目されたのが大阪ビジネスパークの高層建築と、住之江区北加賀屋のリノベーション建築です。大阪ビジネスパーク(写真)では全面ガラス張りの「クリスタルタワー」を含む4施設を、北加賀屋では近代化産業遺産を活用した「名村造船所跡地」と文化住宅を再生した「千鳥文化」の2施設が、それぞれスペシャルツアーとして公開されました。

新参加エリア!工事現場見学!2017年度の新しい取り組み
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2017年度に行われた新しい試みが、今後の完成が予定される建築工事現場の特別見学です。JR大阪駅すぐ南の大阪神ビル・新阪急ビルを建て替える「(仮称)阪神阪急梅田1丁目1番地計画ビル」や、南海なんば駅近くに建てられる「(仮称)新南海会館ビル」(写真左側)などの工事現場が特別公開されました。

また、国内外で数多くのプロジェクトを手がける組織設計事務所のオフィスも参加。2021年度の開館を目指す「大阪新美術館」の設計者に選ばれた建築家・遠藤克彦氏が、ビルの倉庫部分をリノベーションした「株式会社遠藤克彦建築研究所大阪オフィス」も特別公開され、将来の新しい建築を、作り手側の観点から楽しめるプログラムが注目されました。

都市・大阪に根付いた文化の息吹を "生きた建築" を通して感じよう!

戦前の名残を感じられるレトロな建築、戦後の高度成長を経てできたビル建築、そしてこれから大阪にできる新しい建築。建物としての魅力ならず、そこから感じ取れる当時の大阪の文化にも触れ合える "生きた建築" を通して、普段私たちが知りえない都市・大阪の魅力に理解を深めてみてください。

2017年度の "イケフェス大阪" は終了しましたが、2018年度は10月27日(土)と28日(日)が開催日として決定しています。次回はどのような新公開施設や新しい試みが行われるのか、"生きた建築ミュージアム" の今後の動きに目が離せません。

最後になりますが、"生きた建築ミュージアム" にて公開されます各施設は、施設を所有する企業様・オーナー様のご厚意により成立しています。各施設における写真撮影の有無や立入禁止区域等を十分にご理解し、マナーを守ってお楽しみくださいますようお願いいたします。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/05/29−2017/09/30 訪問

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