沢木耕太郎『深夜特急』の聖地!ポルトガル・サグレスはユーラシア最果ての地

沢木耕太郎『深夜特急』の聖地!ポルトガル・サグレスはユーラシア最果ての地

更新日:2017/09/29 15:43

手塚 大貴のプロフィール写真 手塚 大貴 バックパッカー旅の提案人、スポーツ観戦トラベラー
旅を愛する多くの人々にバイブルとして今も読み継がれている、沢木耕太郎氏の『深夜特急』。香港からロンドンへ至るその長い旅で、沢木氏が旅の終わりを決意することになるのが、ユーラシア大陸の最南西端に位置する、ポルトガルのサグレスです。
白い要塞、最果ての岬、大西洋に沈む夕陽……。『深夜特急』の旅から40年以上が過ぎてもなお、「ここではないどこか」を目指す旅人が訪れる、聖地・サグレスの今をご紹介します。

『深夜特急』の終着点となったポルトガル・サグレス

『深夜特急』の終着点となったポルトガル・サグレス

写真:手塚 大貴

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バックパッカーのみならず、多くの人々に「旅のバイブル」として今も読み継がれている、沢木耕太郎氏の『深夜特急』(新潮社刊)。1970年代のユーラシア大陸横断の旅を描いたこの紀行文は、今も多くの読者を実際に「旅」へと向かわせている、まさに伝説的な作品です。

香港からロンドンへ至るその『深夜特急』の長い旅で、沢木氏が旅の終わりを決意することになった場所……、それがポルトガルのサグレスでした。

『深夜特急』の終着点となったポルトガル・サグレス

写真:手塚 大貴

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『深夜特急』の旅で、ポルトガルのリスボンへ辿り着いた沢木氏は、「SAGRES」と書かれた1本のビールに出会います。その「サグレス」が、ポルトガルの南西端、つまりユーラシア大陸の南西端に位置する土地の名だと知り、沢木氏は「何もない」というそのサグレスへ一路向かうことになるのです。「ここではない」旅の終着点を求めて……。

白い要塞、最果ての岬、そして黄金色に輝く大西洋。『深夜特急』に描かれているサグレスは、どこまでも象徴的に美しく、明るい光で溢れています。

そして沢木氏は、偶然が連れてきてくれたこのサグレスで、1年に及んだ長い旅を終えることを決意したのです。

『深夜特急』から40年余り、聖地・サグレスへ

『深夜特急』から40年余り、聖地・サグレスへ

写真:手塚 大貴

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沢木氏が『深夜特急』の旅でサグレスを訪れてから40年以上が経ち、聖地・サグレスには今、どんな風景が広がっているのでしょうか?

サグレスが位置するのは、南国の陽光が降り注ぐポルトガル南端のアルガルヴェ地方。白壁とオレンジ屋根の家々が点在し、今もゆったりとした時間が流れている、最果ての小さな町です。

『深夜特急』から40年余り、聖地・サグレスへ

写真:手塚 大貴

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サグレスの町の中心であるレプブリカ広場近くには、かつてこの地に居を構えたエンリケ航海王子の像が建っています。

このレプブリカ広場周辺には少ないながらもホテルやレストランがあるので、ここを観光の拠点とするのが最適。高級感のあるポサーダや安価なアパートメントホテル、またプライベートルームを提供している家があるほか、沢木氏が『深夜特急』の旅で宿泊したペンションがホテルに生まれ変わって営業しているので、ファンは泊まってみるのもいいかも。

沢木氏が目にした白い壁……。サグレス要塞の「夢の跡」

沢木氏が目にした白い壁……。サグレス要塞の「夢の跡」

写真:手塚 大貴

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『深夜特急』の旅で、沢木氏は夜のサグレスに到着すると、蜃気楼のような白い壁を目にします。その白い壁こそが、サグレス岬に今も残る「サグレス要塞」です。

町から1kmほどの場所にあるので、散策がてら気軽に訪れてみましょう。

沢木氏が目にした白い壁……。サグレス要塞の「夢の跡」

写真:手塚 大貴

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サグレス要塞は、15世紀にエンリケ航海王子によって航海学校が設立された場所。この地から航海術や地図製作術は大きく発展し、やがてヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路発見につながる、ポルトガルの大航海時代の幕を開けることになりました。

今もサグレス要塞には、航海学校やエンリケ航海王子の住居、礼拝堂の建物が残り、ポルトガルの「夢の跡」を感じさせる光景となっています。

沢木氏が目にした白い壁……。サグレス要塞の「夢の跡」

写真:手塚 大貴

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サグレス要塞の突端には、1基の小さな灯台。この場所から眺める大西洋の風景は美しく、波の音を聞きながらぼんやりしているだけで、沢木氏のように感慨深い思いが込み上げてくるはずです。

『深夜特急』が辿り着いた最果てのサン・ヴィセンテ岬

『深夜特急』が辿り着いた最果てのサン・ヴィセンテ岬

写真:手塚 大貴

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『深夜特急』の長い旅路の果てに、沢木氏が辿り着いたユーラシア大陸の最南西端、それが「サン・ヴィセンテ岬」です。サグレスの町から6kmほどの場所に位置し、岬へ行くバスの本数も少ないので、沢木氏のように頑張って歩いて行くか、レンタサイクルを利用して行くのがいいでしょう。

赤い屋根の灯台がぽつんと建つ岬の風景は『深夜特急』の頃と変わりませんが、今では観光地化が進み、多くの観光客で賑わう場所になっています。

『深夜特急』が辿り着いた最果てのサン・ヴィセンテ岬

写真:手塚 大貴

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とはいえ、サン・ヴィセンテ岬から一望する大西洋は、『深夜特急』の頃のままの素晴らしい風景。古代ギリシア人は「世界の西端」と呼び、ローマ人は「世界の果て」と考えた岬には、最果てまで来たことを実感する雄大な風景が広がっています。

『深夜特急』が辿り着いた最果てのサン・ヴィセンテ岬

写真:手塚 大貴

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サン・ヴィセンテ岬でぜひ味わいたいのが、沢木氏がこの地を訪れるきっかけとなったサグレスビール。岬の露店で売っているので、最果ての地に辿り着いた記念に祝杯を上げましょう。

真っ青な大西洋を眺めながら呑むサグレスビールは、まさに最高の美味しさです!

大西洋の彼方に夕陽が沈み、やがて……

大西洋の彼方に夕陽が沈み、やがて……

写真:手塚 大貴

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『深夜特急』に描かれているサグレスの風景の中でも、ひときわ美しさを放っているのが、夕陽に照らされて黄金色に輝いていく大西洋の光景。印象的なこの夕暮れの風景は、原作の沢木氏やドラマ版の大沢たかお氏のようにサン・ヴィセンテ岬からも、また写真のようにサグレス岬からも見ることができます。

眩いほどの黄金色に輝く大西洋、そしてその彼方に沈んでいく赤い夕陽……。目の前に広がるのは、旅人の心を震わせる圧倒的な光景です。

大西洋の彼方に夕陽が沈み、やがて……

写真:手塚 大貴

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やがて、陽が完全に沈むと、夜の空には数え切れないほどの星が瞬き始めます。そう、『深夜特急』の旅で沢木氏に降り注いできた、あの凄絶な星空が……。

「深夜特急」は今日もサグレスを目指す

サグレスへの行き方は、『深夜特急』の頃と同じくバスを乗り継ぐルートが基本ですが、今ではバスの所要時間も短くなったので、比較的気軽に訪れることができます。
まず首都のリスボンから、アルガルヴェ地方のラゴスまで、長距離バスで約4時間。そのラゴスから、1〜2時間に1本の割合で運行されているEVA社の路線バスに乗れば、約1時間でサグレスに到着します!

旅人はなぜ、最果てのサグレスに心惹かれるのか……?それはもしかしたら、『深夜特急』の旅で沢木氏が夢見たように、サグレスという存在が、旅人なら誰もが憧れる、「ここではないどこか」そのものだからなのかもしれません。

今日もまた、あの日の沢木氏のように、「ここではないどこか」を目指す旅人が、サグレスを訪れます。単なる聖地巡礼ではなく、自分自身の物語を紡いでいく、「深夜特急」の一人の乗客として。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/06/26−2013/06/27 訪問

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