写真:小々石 曲允子
地図を見る池島は、長崎県の西彼杵半島の沖合に浮かぶ西彼諸島の島です。
かつて池島にあった池島炭鉱は、1959(昭和34)年に出炭開始後、2001(平成13)年まで採掘作業が行われ、最盛期には周囲4キロほどの小さな島に8千人近くもの人々が暮らしていました。
九州ではかつて、有名な三井三池炭鉱などをはじめとする多くの炭鉱が稼働していましたが、九州の炭鉱の中で最後に閉山となったのがこの池島炭鉱でした。 近隣の多くの炭鉱が昭和期、あるいは前世紀中に閉山となった中で、わずか十数年前まで現役で稼働し、閉山後も技術移転のために海外から研修生を受け入れて指導していたこともあり、数多くの往時の遺構が島内に今でも残されています。
現在でも百数十名の島民の方が生活しておられることから、長崎市の神浦港、瀬戸港や、佐世保港との間に船便も運航しています。
池島港付近では、猫の姿もたくさん見かけますよ。
写真:小々石 曲允子
地図を見る写真:小々石 曲允子
地図を見る主だった旧炭鉱施設は池島港から比較的近い場所に密集していますので、港に近い場所から遺構を順に巡っていくのがおすすめです。
港から西に歩き坂道を上って行った小高い場所に、採掘した原炭から岩石を除く作業が行われていた「選炭工場」があります。フェリーを降りた付近からも入江を挟んで正面に見えており、矩形や円形など様々な形の構造物がユニットされた景観は、さながら「建造物群」とも言える様相を呈しています。
またこの選炭工場から近い場所にあるのが、旧「火力発電所」。石炭を利用した発電所であったと共に、海水を淡水化して飲料用の水を精製していた施設で、写真の青みがかったタンクの近くに発電所本体があります。迫力ある独特の形状・外観が特徴的です。
写真:小々石 曲允子
地図を見るそして、港周辺にある主要炭鉱施設として忘れてはならないのはやはり「坑道跡」でしょう。
石炭の掘り出し作業が行われていた坑道(トンネル)が、最近まで海外への技術移転のための指導が行われていたりしたことなどから現在でも良好な状態で保存されており、坑道の中を見学できる「坑道体験ツアー(炭鉱さるく)」(事前予約要)も開催されています。
坑道の中に入る体験ができるのは国内ではここだけですので、時間がある方はぜひトライしてみてください!
写真:小々石 曲允子
地図を見る写真:小々石 曲允子
地図を見る池島港のある入江の周囲をぐるりと回るようにして南西部分へ向かって進むと、石炭を船積みする際に使用された「シップローダー」という重機設備が、そこから道なりに少し歩いた場所には「ジブローダー」があります。
シップローダーとジブローダーの間には、軌道上を移動して貯炭場の石炭をレールの間にあるコンベアに載せる、昆虫(バッタ、キリギリス)のようなルックスの機械が取り残されています。
写真:小々石 曲允子
地図を見るジブローダーは、選炭工場からコンベアで貯炭場に運ばれた石炭を掻き寄せてならす機械ですが、国内で残っているのはここ池島のみ。
先のレール上の機械も含め、巨大化した昆虫・恐竜などの生き物を思わせる形状の重機械を前にすると、SF映画やアニメの一場面を見ているようで妄想が膨らみます。
写真:小々石 曲允子
地図を見るジブローダーのある地点から先は、島の台地へ向かう上り坂が続きます。
坂道の途中にも道路脇に炭鉱跡らしい廃設備が見られますが、上った先にも「竪坑櫓」という、地下の排気や坑道への人や資材の出入り用に利用されたエレベーター的な役割を果たした設備、資材や石炭などの輸送のために利用されていた軌道やトロッコなどの建造物や機械が風景の中に現れます。
高台にある地区に上るルートは他にもありますが、ここでご紹介したのは途中まで左手に海を見ながら歩くことができる眺望の良いルート。もうひとつのルートにはコミュニティバスが運行していますので、その経路で行くのも良いでしょう。
写真:小々石 曲允子
地図を見るこれまでご紹介してきたような現存する炭鉱関連の施設と共に池島で目を惹くのは、廃墟化した数多くの「団地」です。
台地上にある島の南西部は学校や郵便局、商店、またかつては映画館などがあった島民の主要な生活エリアであり、炭鉱で働く人々が暮らしていた社宅団地が数多く残っています。
港の周辺にも集合住宅があり、そこには今も住んでおられる住民の方が少なからずおられるようですが、島の南西部に密集する団地群の殆どは現在では無人の廃墟と化しています。
写真:小々石 曲允子
地図を見る池島の住居建造物の中でもシンボル的な存在となっているのが、この「8階建てアパート」。
エレベーターが設置されておらず、その代わり立地の高低差を利用して、裏側に回れば階段を使わずに5階部分から中に入れるようになっているというユニークな構造の建物です。
アパートとは思えないクールで近未来風の外観が異彩を放っていますが、この建物もまた巨大な廃墟なのです。
写真:小々石 曲允子
地図を見る昭和に建設された団地やアパートというだけで十分にノスタルジーを感じる物件ではありますが、さらにその建物が植物に浸食されて自然に還ろうとしているかのような姿を前にすると、ジブローダーを見た時と同じように、アニメやSF映画の世界だけに存在するはずの非現実的で幻想的な光景に遭遇してしまったかのような思いに囚われます。
池島のそう遠くない将来の姿が軍艦島であると言われています。
朽ちゆく遺構や廃墟を前に感じるノスタルジーやファンタジー、昭和の日本の発展を支えたベースが加速度的に消失していることへの寂しさ、無常感、様々な思いが湧き上がる光景が池島には広がっています。
いかがでしたか? 池島はご紹介してきたように廃墟にあふれた島ではありますが、軍艦島とは異なり現在もここで生活している方がおられます。住民の方の立場やプライバシーに配慮し、マナーを守って見学や島歩きを楽しんでいただければと思います。
池島は廃墟マニアの方のみならず、団地や鉱山史跡がお好きな方、そして写真を撮るのが好きな方におすすめしたい島です。
私はこの島の写真は、全てフィルムカメラで撮影しました。皆さんもたくさん歩いて、自分だけのスポットやアングルを見つけ、この島の今でしか撮れない写真を撮影していただければと思います。私ももう1度訪れる予定にしています。
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(2024/4/18更新)
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