トスカーナ南部「ピティリアーノ」、断崖絶壁にそびえる凝灰岩の町

トスカーナ南部「ピティリアーノ」、断崖絶壁にそびえる凝灰岩の町

更新日:2017/10/10 15:02

中山 久美子のプロフィール写真 中山 久美子 日伊通訳&コーディネイター、ライター
イタリア・トスカーナ州南部のマレンマ地方。日本ではまだまだ知られていない地方ですが、海・山の豊かな自然と美しい村が点在しています。特に個性的なのが「凝灰岩の町」と呼ばれる3つの町で、その中でも圧倒的な存在感を誇るのが、このピティリアーノ。その姿を目の前にするだけで、「絶景」と言う言葉では言い尽くせないほどの迫力と、自然と共生してきた人々の歴史が感じられます。

「自然の要塞」の迫力に圧倒される

「自然の要塞」の迫力に圧倒される

写真:中山 久美子

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深い緑の中に浮かび上がるその姿、ピティリアーノの全景は、一度目にすると忘れられない強烈な印象を与えます。

火山活動から形成された凝灰岩が残るこの地域で、ひときわ巨大な凝灰岩の上に立てられた町ですが、その歴史は古く、紀元前の青銅器時代から人々が居住し始めました。エトルリア時代、ローマ時代を通じて岩壁に住居や保存庫としての穴が多数掘られ、それは今でも、周辺の岩壁に見ることができます。現在のような旧市街の骨格は、ピティリアーノという名前が「要塞化された村」として記録に残る1100年頃までに出来上がりました。

「自然の要塞」の迫力に圧倒される

写真:中山 久美子

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眼下の道から直角にせり上がる凝灰岩に、そのまま同化した建物。旧市街に入ったら、町の端からその作りを見てみましょう。旧市街の東にある大きなフォルテッツァ・オルシーニ広場、主要な通りであるズッカレッリ通りの南の路地から、こんな風に覗きこむことができますよ。

旧市街の外には、岩壁沿いに町を見上げられるパノラマ通りもありますので、時間のある方は下からの景観も楽しんで下さい。

「自然の要塞」の迫力に圧倒される

写真:中山 久美子

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旧市街の西の端には、外に出る階段がジグザグに続いています。その周辺には、写真のような岩壁に扉がいつくも見られます。かつて住居として使われていたその穴は、現在は倉庫などに使用されているそうです。

入り組んだ60もの路地に、生活の息吹を感じる

入り組んだ60もの路地に、生活の息吹を感じる

写真:中山 久美子

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旧市街には、比較的大きな3つの通りが東西に走っています。それらは60もの路地とつながり、そこを歩くだけでタイムスリップしたかのよう。
しかし、その大部分には今も人々が暮らしており、ハタハタとなびく洗濯もの、美しい表札、色とりどりの花で飾られた玄関など、そこに住む人の息吹があちこちに感じられます。

入り組んだ60もの路地に、生活の息吹を感じる

写真:中山 久美子

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その他にも、路地でよく見るものが、猫。複雑な作りの旧市街を自由気ままにお散歩する姿をよく見かけるので、猫好きの方は、ぜひ路地に入って猫探しもしてみて下さいね!

中世の名門・オルシーニ家が残した2つの建造物

中世の名門・オルシーニ家が残した2つの建造物

写真:中山 久美子

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オルシーニ家はローマの貴族の中でもっとも古い家系で、教皇を2人輩出した名門貴族。ピティリアーノは1200年代末からこのオルシーニ支配下におかれ、彼らの時代に行われた事業は、現在でもしっかりと残っています。

1つ目は水道橋。3つの川の支流に囲まれたピティリアーノですが、この町中に水をひき渡すのは困難だったようで、1500年代から水の供給向上のために建設が始まりました。しかし工事は長引き、最終的にはトスカーナ大公の支配下に置かれた後に完成したので、この水道橋は「メディチ家の水道橋」と呼ばれています。

中世の名門・オルシーニ家が残した2つの建造物

写真:中山 久美子

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一方、オルシーニ家の名前がしっかり残っているのがこの宮殿。元々は修道院だった建物を、1200年代にここを支配していたアルドブランデスキ家が自身の住居と政庁に造り変えたものです。1293年の婚姻によりオルシーニ家がピティアーノを支配し、この宮殿もオルシーニ宮と名を変え、現在に至ります。

現在、このオルシーニ宮には司教区博物館・考古学博物館の2つの博物館が入っています。

<基本情報>
住所:Piazza Fortezza Orsini, 25 - 58017 Pitigliano (GR)
電話番号:+39-564-616074
休館日:毎週月曜日(8月は開館)、1月8日〜3月16日
開館時間:冬は10:00-13:00と15:00-17:00、夏は10:00-13:00と15:00-18:00 (19:00)

2017年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

ピティリアーノに生き続ける「小さなエルサレム」

ピティリアーノに生き続ける「小さなエルサレム」

提供元:La Piccola Gerusalemme

http://www.lapiccolagerusalemme.it/Pages/index.asp

ピティリアーノはその歴史から、別名「小さなエルサレム」と呼ばれています。ピティリアーノにユダヤ人がやってきたのは1400年末、その後1500年代後半にはローマ教皇大勅書やトスカーナ大公の勅書により、ピティリアーノなどいくつかの町がユダヤ人を保護することになりました。その頃にシナゴーグも建設され、第二次世界大戦で一部が崩壊したものの、丁寧な修復を経て今も見学が可能となっています。

現在残っているユダヤ人は数少ないですが、ピティリアーノは今も「小さなエルサレム」協会を始めとして、町全体でその文化の伝承し続けています。ユダヤ人居住地区現在一般公開されており、当時のピティリアーノでのユダヤ人の生活が感じ取れるようになっています。

<基本情報>
住所:Vicolo Marghera | Traversa Via Zuccarelli, 58017 Pitigliano(GR)
電話番号:+39-0564-614230
休館日:毎週土曜日
開館時間:10月1日〜3月31日は10:00-12:00と15:00-17:00、4月1日〜9月30日は10:00-13:00と14:30-18:00

2017年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

小さな村と天然温泉で、どっぷりマレンマ地方に浸ってみよう

ピティリアーノから車で15分以内に、「ソヴァーナ」、「ソラーノ」の2つの凝灰岩の村があり、その周辺は「考古学公園」としてエトルリア人の遺跡がたくさん残っています。トスカーナといえば田園風景や糸杉のイメージがありますが、ここマレンマ地方は色濃い茂みの中に、このような個性的な村がひっそり隠れた穴場的エリア。
また、トスカーナ最大の天然温泉として有名な「サトゥルニア」も車で30分ほど。どっぷりと歴史に浸り、自然を愛で、温泉で癒される・・・このエリアだけでも見所はたくさんなので、ゆっくり滞在を計画してみて下さいね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/06/06 訪問

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