小さな町の大きなアートイベント!群馬・中之条ビエンナーレ

小さな町の大きなアートイベント!群馬・中之条ビエンナーレ

更新日:2019/06/18 09:14

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、物語ツーリズムライター、青春18きっぷ伝道師
中之条ビエンナーレは群馬県の北部山岳地帯とその麓に広がる高原や里山を舞台とした現代アートのイベント。
それは新潟の「越後妻有 大地の芸術祭」や香川の「瀬戸内国際芸術祭」のようないくつもの市町村が広域で連携するイベントではなく、人口わずか1万数千人の小さな町の大きなチャレンジなのですが、小さいからこその魅力がたっぷり。「甘く、酸っぱく、情緒的」なアート作品や名湯に絶景…意外にも見どころ満載なのです。

中之条ビエンナーレの魅力は観客、地域、アーティストの親密さ

中之条ビエンナーレの魅力は観客、地域、アーティストの親密さ

写真:風祭 哲哉

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中之条ビエンナーレは群馬県中之条町を舞台に2年に1度開催される現代アートのイベントで、2007年からはじまって今年が7回目。2019年は8月24日から9月23日までの約1か月間の開催となります。

期間中は「中之条・伊勢町」「伊参」「名久田」「四万」「沢渡・暮坂」「六合」の中之条町内6つのエリア、50箇所の会場で総勢150組のアーティストによる展示・パフォーマンス・イベントが行われます。

中之条ビエンナーレの魅力は観客、地域、アーティストの親密さ

写真:風祭 哲哉

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この中之条ビエンナーレの最大の特徴は、観客とアーティスト、そして地域の住民の距離感がとても近いこと。その理由はアーティストが中之条の自然豊かな里山や温泉街に長期間住み込み、地域と一緒になってこのイベントを創り上げているから。
各会場の受付に座る地域のお父さんやお母さんが気さくに話しかけてくれたり、作品のすぐ横にいるアーティスト本人が直接解説をしてくれたりと、なんともフレンドリーなアートイベントなのです。

中之条ビエンナーレの魅力は観客、地域、アーティストの親密さ

写真:風祭 哲哉

期間中すべてのアートを何度でも鑑賞できるパスポートの料金は前売りで1,200円(当日1,500円)、高校生以下は無料で鑑賞できます。

中之条へのアクセスは、JRで上野から特急草津号で約2時間、車の場合は関越自動車道の渋川・伊香保ICから約22キロと比較的便利です。一方、エリア内では一部路線バスや期間中シャトルバスの運行もありますが、広大なエリアすべてを網羅しているわけではありませんので基本はマイカーもしくはレンタカーでの移動をおすすめします。

また小さな町とは言っていますが、実は面積は大きく、中之条ビエンナーレの会場となる6つのエリアも広い範囲に分散しています。1泊2日で全部を回るのはかなり忙しく、2泊3日がおすすめです。町内には四万温泉や沢渡温泉のほかにも野趣あふれる河原の露天風呂で有名な尻焼温泉などがありますので、何泊しても飽きることはありません。

中之条ビエンナーレのスタートは「中之条伊勢町エリア」から

中之条ビエンナーレのスタートは「中之条伊勢町エリア」から

写真:風祭 哲哉

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中之条の市街地にアート作品が点在するのが中之条伊勢町エリア。JR中之条駅前のインフォメーションセンターや町の中心部にある「ふるさと交流センターつむじ」など、中之条ビエンナーレの玄関口となる場所です。
ここは古くからこの地域の中心市街地として栄えたエリアですが、吾妻の山々を背後にゆるやかな坂の両側に商店街が並ぶ、情緒的な町並みでもあります。

中之条ビエンナーレのスタートは「中之条伊勢町エリア」から

写真:風祭 哲哉

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中之条伊勢町エリアでは市街地の商店跡や料亭跡などの空家を舞台にしたものや、酒蔵や材木店などの建物や内装を活かしたアートが展開されています。
そのなかのひとつ「中田木材」は大正13年創業の木材店。薄暗い木材置き場のところどころにさまざまな作品が仕込まれています。

また、旧廣盛酒造は明治18年創業の蔵元。近年まで日本酒が造られていた歴史ある重厚な建物がリノベーションされ、格好のアートスペースとなっています。

中之条ビエンナーレのスタートは「中之条伊勢町エリア」から

写真:風祭 哲哉

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甘酸っぱくほろ苦アートの「伊参」「名久田」エリア

甘酸っぱくほろ苦アートの「伊参」「名久田」エリア

写真:風祭 哲哉

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「伊参(いさま)」「名久田(なくた)」の両エリアはそれぞれ中之条の市街地から数キロ離れた場所に位置する美しい里山エリア。中之条ビエンナーレの特徴の一つである「時が止まったままの木造校舎や古民家」を舞台としたアート作品が数多く展示されています。

甘酸っぱくほろ苦アートの「伊参」「名久田」エリア

写真:風祭 哲哉

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伊参エリアにある「イサマムラ」は平成25年に139年の歴史に幕を閉じた伊参小学校の校舎で、中之条ビエンナーレの総合案内所。数多くのアートの展示やイベントが開催され、公式グッズの販売なども行われています。

このイサマムラは比較的新しい校舎ですが、このエリアには閉校となった懐かしい木造校舎がたくさん。名久田エリアの「名久田教場」、伊参エリアの「旧五反田学校」「伊参スタジオ」など、この校舎から巣立っていった子どもたちの思い出がたくさん詰まっているからなのでしょうか、どことなく甘酸っぱくほろ苦いアート作品が多いように感じます。

甘酸っぱくほろ苦アートの「伊参」「名久田」エリア

写真:風祭 哲哉

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「伊参スタジオ」は閉校となった中学校が改装され、映画の撮影スタジオに生まれ変わったという珍しい場所。群馬県人口200万人記念の映画「眠る男」の撮影拠点として使用された古びた木造校舎は、現在も「伊参スタジオ公園」として整備され、映画で使われたセットや関係資料が展示されています。

情緒的な温泉エリアの「四万」「沢渡・暮坂」

情緒的な温泉エリアの「四万」「沢渡・暮坂」

写真:風祭 哲哉

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「千と千尋の神隠し」のモデルのひとつとも言われる「積善館本館」など、情緒的な温泉街が今なお残る四万温泉や草津の仕上げ湯と呼ばれる沢渡温泉。中之条は数多くの温泉を持つ町でもあります。
この「四万(しま)エリア」、「沢渡・暮坂(さわたり・くれさか)エリア」ではこうした情緒的な温泉街を活用したアートも目立ちます。

情緒的な温泉エリアの「四万」「沢渡・暮坂」

写真:風祭 哲哉

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清流四万川を望む一等地にある空家が温泉街のゲームセンターに変身したのが「中屋」。旅館に泊まる人々が見た夢が、昔懐かしい射的や枕投げ、ボーリング、トランプ遊びなどのゲームになって並んでいる、遊びゴコロ満点のアートです。

情緒的な温泉エリアの「四万」「沢渡・暮坂」

写真:風祭 哲哉

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沢渡温泉の先は若山牧水の詩で有名な暮坂峠。この暮坂エリアは標高約1000メートル前後の高原地帯。中之条ビエンナーレの会場で最も高い場所にあるのが「よってがねぇ館」。浅間山を望む高台の建物の中からは雄大な高原の風景が望めます。

今も残る養蚕農家の美しい町並みが広がる「六合エリア」

今も残る養蚕農家の美しい町並みが広がる「六合エリア」

写真:風祭 哲哉

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六合(くに)エリアの展示会場となるのは重要伝統的建造物群保存地区に指定されている赤岩の集落。ここは明治時代以前から養蚕が盛んで「サンカイヤ」と呼ばれる養蚕に適した頑丈な家が今もなお残り、幕末や明治時代の景観を今に伝えています。

今も残る養蚕農家の美しい町並みが広がる「六合エリア」

写真:風祭 哲哉

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その「サンカイヤ」のひとつ、長英の隠れ家「湯本家」は、江戸幕府から追われた幕末の蘭学者、高野長英が匿われていたと言われる住宅。養蚕用に建造された土蔵造りの家ではこの土地ならではの素材を活かしたアートが展開されています。

今も残る養蚕農家の美しい町並みが広がる「六合エリア」

写真:風祭 哲哉

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六合エリアから30分強、少し距離がありますが時間に余裕があればぜひ行ってほしいのが今話題の「チャツボミゴケ公園」。酸性の水が流れる場所に生育するチャツボミゴケの鮮やかな緑が一面に広がる様子は隠れた絶景として現在ジワジワと人気が高まっています。

小さくて大きな町の中之条ビエンナーレはゆっくり楽しもう

「時が止まったままの木造校舎や養蚕農家、文豪たちが愛した温泉街を舞台とした甘く、酸っぱく、情緒的なアートイベント」。中之条ビエンナーレはこんなふうに言いかえることができるかもしれません。中之条は過疎の進む小さな町ですが、こうした日本の愛すべき山村の魅力がたくさん詰まった町でもあります。そして小さな町だからこそ味わえる親密感が魅力でもあります。

ぜひ、この中之条ビエンナーレをゆっくりお楽しみください。
※アート情報の詳細は未発表のため、2017年開催時のものを掲載しています。

2019年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/09/09−2017/09/10 訪問

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