まるで小さな美術館!伊・ローマ「サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会」の魅力

まるで小さな美術館!伊・ローマ「サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会」の魅力

更新日:2019/06/20 12:47

藍色 しっぽのプロフィール写真 藍色 しっぽ
カトリック教会の総本山ヴァティカンを町内に持つイタリアのローマ。サン・ピエトロ大聖堂やパンテオンなど大きな聖堂や教会に人気が集まる一方で、小規模なサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会についてはあまりよく知らないという方も多いのではないでしょうか。今回は「小さな美術館」とも呼ばれるこの教会の魅力をじっくりご紹介します。

ローマではとっても珍しい!ゴシック様式の教会

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写真:藍色 しっぽ

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サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァとは、直訳すると「ミネルヴァの上の聖マリア」という意味。古代に建設されたミネルヴァ神殿の上に13世紀にこの教会が建てられることとなり、完成までにおよそ2世紀あまりを費やしました。

ローマではとっても珍しい!ゴシック様式の教会

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教会はローマで唯一のゴシック様式であり、ラテン十字架形の内部はロイヤルブルーの高い天井、身廊の先の尖ったアーチが特徴的です。一方で教会外観のファサードは19世紀まで何度も改修されていますが、現在は完成当時の大理石の三つの入口を活かした、極めて質素なものに落ち着いています。

ローマではとっても珍しい!ゴシック様式の教会

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また外壁にはイタリアに堤防のなかった時代にテヴェレ川が氾濫してローマが大洪水に見舞われた際、水位がどこまで上がったかを示す石印がいくつも残されています。こうした困難を乗り越え、今日までサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会と貴重な作品の数々が残っていることは、まさに奇跡と言ってよいでしょう。

目を奪われる!巨匠たちによる絵画作品の数々

目を奪われる!巨匠たちによる絵画作品の数々

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教会内に入ってまず注目したいのが、右翼廊奥にある「カラファの礼拝堂」にあるフィリッピーノ・リッピの作品群。フィリッピーノ・リッピはボッティチェリの師でもあるフィリッポ・リッピの息子であり、自身も父の下で修行を受けたのち、フィレンツェで権力を握っていたメディチ家の庇護のもと多数の作品制作を行いました。

礼拝堂に残されている「トマス・アクィナスの勝利」と「受胎告知」はどちらもリッピの傑作と呼ばれており、現在でも失われていない美しい色彩が印象的です。礼拝堂では1ユーロ投じると照明がつき、作品をより詳細に鑑賞できるようになっています。

目を奪われる!巨匠たちによる絵画作品の数々

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また右側廊の中ほどにある礼拝堂には、アントニアッツォ・ロマーノの「受胎告知」があります。ロマーノは日本での知名度こそ低いものの、国外では作品の一つがクリスマス向けの切手に選ばれたこともあるなど人気の高い画家です。同じ主題であるリッピの「受胎告知」と比較して鑑賞するのも楽しいでしょう。

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さらに左側廊中ほどの礼拝堂には、ラファエロの師であったことでも有名なペルジーノによる主イエス・キリストの作品が。ラファエロの甘美な聖母像はペルジーノからの影響が大きいと言われており、この作品でもペルジーノらしい、威厳がありながらもやさしい表情のキリストが描かれています。ルネサンス絵画がお好きな方は必見です。

ミケランジェロにベルニーニ・・・彫刻作品も豪華!

ミケランジェロにベルニーニ・・・彫刻作品も豪華!

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サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会には、彫刻作品も見逃せないものが所蔵されています。その一つが、主祭壇の左側にある「あがないの主・イエスキリスト」。作者は美術史上もっとも偉大な芸術家のひとりに数えられる、あのミケランジェロです。

ミケランジェロにベルニーニ・・・彫刻作品も豪華!

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世界中を探しても、このようにルネサンスの巨匠の傑作を囲いなしに間近で観られる場所はほとんどなく、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会にはこの作品を観るためだけにでも訪れる価値があります。また下半身を隠しているブロンズでできた布は、16世紀の「イチジクの葉運動」と呼ばれる検閲の影響によってのちに付け加えられたもので、裸体表現に厳しかった宗教改革期当時の様子をうかがい知ることができます。

ミケランジェロにベルニーニ・・・彫刻作品も豪華!

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また、教会の外には「ミネルヴァのひよこ」と呼ばれる、ベルニーニによって建てられたユニークな像があります。知性と教養の象徴であるゾウがオベリスクを支える形をしており、「堅固な知識を支えるには強い精神が必要である」という内容のラテン語の碑文が刻まれています。

オベリスクは古代エジプトにおいて神殿などに使われた記念碑であり、世界に現存しているものは30本。そのうちの約半数がローマにあり、ポポロ広場やパンテオンにあるオベリスクも有名です。

サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会のオベリスクもその一つで、ローマではもっとも短い長さのものです。

ガリレオのあの名言はここで生まれた!かつての偉人にまつわる痕跡がそこここに

ガリレオのあの名言はここで生まれた!かつての偉人にまつわる痕跡がそこここに

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ここサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会は、さまざまな歴史の偉人の生きた証が残る場所でもあります。

イタリアの守護聖人であるシエナのカタリナは、この教会の主祭壇の下に埋葬されています。カタリナは1380年にこの近くの修道院で亡くなりましたが、後年レオ10世によって息を引き取った部屋の壁が聖具室に移されました。この聖具室は現在も一般公開されており、左側廊奥から入ることができます。

ガリレオのあの名言はここで生まれた!かつての偉人にまつわる痕跡がそこここに

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また聖具室の手前には、「受胎告知」で有名な画家フラ・アンジェリコの墓があり、墓碑には「キリストよ、我に栄誉を与え給え…」で始まる碑文が刻まれています。

さらに教会の外にある16世紀の回廊は、かつて異端審判所がおかれていた場所であり、1633年にガリレオ・ガリレイが自らの地動説を放棄し、「それでも地球は廻っている」とつぶやいたとされるガリレオ裁判が行われた場所でもあります。ここにもぜひ立ち寄っておきましょう。

行かなきゃ損!珠玉の作品、歴史的エピソード満載のサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会

可愛らしい四角のファサードからは想像もつかぬほど、様々な歴史が詰まっているサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会。入場料はもちろん無料、パンテオンからも近い、となれば足を運ばないわけにはいきません。午前中の早い時間は旅行客も少なく、じっくり鑑賞するのにも最適。小さいながらもローマの魅力がたっぷりの教会、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

掲載内容は執筆時点のものです。

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