写真:井伊 たびを
地図を見る東京都港区高輪にある「物流博物館」は、昭和33年(1958年)、大手町ビルにあった「日本通運株式会社」の本社内に創設された「通運史料室」が始まりだ。当初は、社史に関わりのあるわが国の近世および、近代初期の交通・運輸の概要が展示されていた。
昭和37年(1962年)日通本社の移転に伴い外神田の日通本社ビルに移り、昭和62年(1987年)には名称を「物流史料館」と改め、「財団法人利用運送振興会」に管理運営が委ねられた。この間、展示内容も中世から現代に至る物流にかかわる歴史上の重要事項へと拡大されている。
写真:井伊 たびを
地図を見る平成10年(1998年)8月、展示内容の一層の充実を図り、「物流」を社会にアピールすることを目的に「物流博物館」として、この地に誕生。多くの来訪者が訪れ「物流」について理解を深めている。
収蔵資料はその多くが「日本通運株式会社」の所有する資料。文書史料約6,000点、美術工芸資料約200点、実物資料約1,000点、写真資料約10数万点、映像資料約200点が収蔵されている。
写真:井伊 たびを
地図を見る鉄筋コンクリート造りの地上2階、地下1階には、豊富な展示物により江戸時代から、昭和までの「物流のあゆみ」と現代が紹介されている。お子様とともに、楽しく学べる施設だ。特に天びん棒や米俵などを担ぐ体験もできるコーナーには人気がある。
写真:井伊 たびを
地図を見るそもそも「物流」とは、文字通り「物が流れること」だ。当然だが、物が勝手に流れ出したりはしない。人が介在することで物が、目的の場所まで確実に運ばれる。この物を運ぶ仕事が「物流」の仕事だ。
私たちが必要とする身のまわりのモノは、全てどこからか?誰かの働きによって運ばれてきたモノ。日本国内だけでなく、世界にまたがる物流の仕事がなければ、私たちは一日たりとも生活できない。
写真:井伊 たびを
地図を見る手から手へ直接渡すことが、「物流」の原点。それが、手では持ちきれないもの、持って運べない多くのモノを、運ぶ用事ができて、荷車や馬車が考案された。生活範囲の拡大と共に、必要に駆られて「物流」の手段も変わってきている。その状況が展示内容を通じて理解できるようなレイアウトになっている。
写真:井伊 たびを
地図を見る最近では、ネット通販利用者の急増による物流量の増大や、それをさばく人手不足の対策として「ドローン」による運搬まで検討されている。確かに、急ぐ必要のある荷物もあるだろうが、いつでもいい荷物もあるだろう。翌日手にできることが、“あたりまえ”になっている「物流の常識」を考え直すときなのかも?なんて、展示物を見ながら考えてみたりもする。
写真:井伊 たびを
地図を見る「現代の物流展示室」では、現代の物流産業のようすを模型、映像、写真、ゲーム、クイズなどを通して紹介されている。身近な「宅配便」から「国際物流」まで、さまざまな物流の姿がわかりやすく説明されている。
物流体験コーナーでは変身キット、ジャンボ物流パズル、物流タウンシートなど、お子様とともに、楽しく「物流を体験」することができるのもウレシイ!
写真:井伊 たびを
地図を見る現代物流の要所である空港、港湾、鉄道、トラックの各ターミナルのジオラマは、行き交う鉄道・トラック・コンテナ船・ジャンボフレーターなどが、一望することができる。(縮尺:1/150)
また、こうして鳥瞰すれば、物流ターミナルの一日を垣間見ることでき、普段何の気なしに通り過ぎて行くトラックも、物流サイクルの“重要な働き”をしていることに改めて気づく。
写真:井伊 たびを
地図を見るこのコーナーでは、物流産業のなかでも普段の生活において、身近な存在である「宅配便」が紹介されている。宅配便のあゆみ、宅配便の伝票、ラベル、荷物の重さを測る「はかり」や、大きさを測る「メジャー」などが展示されている。宅配便の制服を着てみることもできる。
写真:井伊 たびを
地図を見る一階の展示室は、「特別展」が行われないかぎり、「物流の歴史展示室」として、昔の物流に関わるめずらしい展示物が常設されている。
写真:井伊 たびを
地図を見る江戸時代に幕府が整備した交通制度は、陸上の公用交通や宿継ぎを前提としており、生産や流通の発達に対応した大量輸送には不向きだった。そこで、はるかに大量の輸送が可能な、海や川を利用した水上輸送が盛んに用いられた。画像手前の模型の船は、当時活躍した「菱垣廻船(ひがきかいせん)」で、大坂などの上方と江戸の消費地を結んだいわゆる「貨物船」である。
写真:井伊 たびを
地図を見る昔の人々の創意工夫がしのばれる展示物が多い中、画像右端の「馬の背で運ぶ道具」は必見!江戸時代、京都の馬借(ばしゃく)が使用していたもの。馬借とは、馬を利用し、荷物を運搬する輸送業者のこと。この道具は、必要のないときには、折りたたむことができるというスグレモノだ。
写真:井伊 たびを
地図を見る「運びくらべ」コーナーでは、「天びん棒」を担いでみる体験ができる。体験用として5sの荷がひとつずつかごに入っている。バランスをとるのが、とてもむずかしいのだが、ぜひ挑戦してみよう!
写真:井伊 たびを
地図を見る「ふろしき体験コーナー」は、2階への階段を上りきったところにある。「ふろしき」は、布一枚で運ぶ道具になる便利グッズ。本包み、バスケット包み、スイカ包み、ペットボトル包みなどを体験してみよう!
「物流博物館」へは、JRおよび京浜急行の「品川駅」で下車し「高輪口」より徒歩7分。都営・浅草線なら「高輪台駅」で下車し「A1出口」より徒歩7分とアクセスがいい。
ところで、物流は規模の大きな産業で、国内では1年間に約47億トンの貨物が行き来している。そこで、国内で物流産業に携わる人は約213万人いる。実に国民の31人に一人が物流産業に関わっている計算だ。よって、「物流博物館」で、“物流とは?”を学ぶことは意義深いことだ。
なお、今年(2017年)10月21日から12月10日まで、「特別展・飛脚問屋・嶋屋佐右衛門日記の世界」が予定されている。18世紀の江戸の飛脚問屋「嶋屋佐右衛門」の日記をとりあげ、当時の飛脚の送達システム、取引先や他の飛脚問屋との関係、次々に起こるさまざまな事件などから、飛脚問屋の実像に迫る。
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(2024/4/23更新)
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