写真:雲本 らて
地図を見るJR関内駅から横浜スタジアムの方に歩いてすぐの場所に「衣紋坂」はあります。現在は、横浜スタジアムのある横浜公園と横浜市役所の間の通りを「みなと大通り」と呼んでいますが、まさに衣紋坂は、その通り沿いにある坂道だったのです。
なぜ見た目が平坦なのにもかかわらず、ここに坂名があるのかについては、後述しますが、とにかく通り沿いは坂道らしき場所は見当たらず、わずかな高低差が見られますがほぼ平坦で、坂の説明が書かれた案内板などもありません。
写真:雲本 らて
地図を見る現在の横浜市役所の南側の道沿いに、この地に市場があったことを示す「港町魚市場跡」の石碑が設置されています。1874年にこの地に高島嘉衛門が市場を開き、当時は近くに川が流れ、物流にも便利で繁盛しましたが、1931年に中央卸売市場の開設によって移転したと伝えられています。
ちなみにかつての市場横を流れていた川の場所は、今のJR根岸線のあるところが該当するといわれています。
写真:雲本 らて
地図を見るまた市場があった頃は、山手あたりと桜木町を結ぶ横浜市電(路面電車)が今のJR根岸線と似たようなコースで川の北側を走っていました。ただ市電ができた当時は市場があっため、川沿いのコースがとれず迂回コースとして、横浜市役所の南東側(みなと大通り沿い部分)を一部走って桜木町のほうに向かって走っていました。
なお、市場がなくなった後も市電は走り続けましたが、1970年にここを通る市電が廃止され、2年後には横浜市は走る市電すべてが廃止され、横浜で路面電車を見ることはなくなりました。
写真:雲本 らて
地図を見る衣紋坂という名前については、幕末頃に描かれた図絵でこの坂道と坂名が描かれていることから(由来は不明)、もしくは現在の横浜公園がある場所にはかつて遊廓があり、開港当時は海側から遊廓へと向かう道は今とは違ってはっきりとわかる高低差のある坂道だったため、衣紋坂と名付けたというなど諸説あります。
ちなみに、江戸の吉原では、遊廓に行くのに衣紋坂という名の坂を通っていきます。吉原へ遊びに行く時、坂道のあたりで衣紋を繕うためこの名がつけられました。そして、全国の遊廓でもそれに因み、近くに坂があれば衣紋坂という名をつけることが多く、そのためこの地でも同じように坂名をつけたという推論をたてている専門家もいます。
写真:雲本 らて
地図を見る衣紋坂でもある、今のみなと大通り沿いには、名建築がたくさん存在します。なかでも横浜市開港記念館(ジャックの塔)、神奈川県庁舎(キングの塔)、横浜税関(クイーンの塔)の歴史的建築物は有名です。これら三つはまとめてトランプの塔と名付けられ、ハマの顔として親しまれています。これは今ほどビルが建っていなかった時代の横浜港へ入港する時に、港外からこの3つの建築の塔屋が象徴的に見えたことからだと言われています。
ちなみに、これら3つの塔を地上から同時に見える場所(神奈川県庁舎の正面、赤レンガ倉庫、大さん橋国際客船ターミナル)を巡り、そこから3塔を眺めると願いが叶う、という都市伝説があることでも知られています。
写真:雲本 らて
地図を見るまた、トランプの塔以外にも通り沿いには、横浜スタジアムや横浜公園など関内を代表する施設を始め、横浜市庁舎(1959年、村野藤吾設計)や神奈川県新庁舎(1966年、坂倉準三設計)など名建築も隣接しています。
さらに、東京芸術大学の設立に尽力した岡倉天心生誕の場所であることを示す石碑や関東大震災の記憶を伝える貴重な歴史的遺産でもある「開通合名会社の煉瓦遺構」など、建築物そのもの以外にも、歴史的価値のある史跡も点在しています。
ぜひ探してみてください。
写真:雲本 らて
地図を見るみなと大通り(衣紋坂)は横浜スタジアムなどがある駅側から大さん橋ふ頭で有名な海側まで、南北を貫いている道路でもあるため、通りを海側方向に歩いていると自然に海の香りが漂う開けた場所までやってきます。
そこからは、隣接する横浜港発祥の地でもある象の鼻パークに足を踏み入れてもよし、そのまま道路沿いに歩いて赤レンガ倉庫に向かうもよしと、港町横浜を代表するような海辺の観光スポットへのアクセスも抜群です。
写真:雲本 らて
地図を見るこの地は、夜の風景もおすすめです。さきほど取り上げたトランプの塔も暗くなると、それぞれライトアップされ、さらに印象的なものになります。また野球のシーズン中であれば、横浜スタジアムにも明かりが灯り、関連イベントなども開催され賑やかな雰囲気になります。
写真:雲本 らて
地図を見るみなと大通り(衣紋坂)の海側であれば、赤レンガ倉庫の方向に向かう道の途中からの夜景もおすすめです。昼の景色もすばらしいですが、夜になればさらに遠くのみなとみらい地区にあるビル群がライトアップされている景色が楽しめます。
夜は昼と違って車の通りも少ないですので、おすすめです。
今回は、衣紋坂の成り立ちから坂道沿いにある歴史的建造物にいたるまで広範囲に取り上げてみました。関内のようなほぼ平坦なところにも坂道があったことは驚きですが、何と言っても坂道を歩くことで、港町横浜の観光スポットを含めた歴史まで体験できる場所はそうそうないと思います。
ぜひ関内を訪れた時は、衣紋坂のことを思い出してみてください。
2017年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/4/20更新)
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