世界で2番目に広い建築物、ルーマニアの「国民の館」徹底探訪

世界で2番目に広い建築物、ルーマニアの「国民の館」徹底探訪

更新日:2017/08/24 14:38

大竹 進のプロフィール写真 大竹 進 元旅行会社勤務、元旅行専門学校講師
ルーマニアと聞いて思い浮かべる有名人と言えば、吸血鬼ドラキュラ、オリンピックの体操で初めて満点を出した妖精コマネチ、そして共産主義時代の独裁者チャウシェスク大統領かと思います。
そのチャウシェスクの遺産として知られるのが、首都ブカレストにある国民の館です。延床面積33万平方メートルはワシントンにあるペンタゴン(国防総省)に次いで世界で2番目の規模。今回はこの「国民の館」についてご紹介致します。

カメラに収まりきらない巨大さ

カメラに収まりきらない巨大さ

写真:大竹 進

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ブカレスト市内に圧倒的な存在感を持って聳える国民の館。かつての独裁者チャウシェスク大統領が日本円にして約1500億円もの巨費を投じて建設を命じた巨大な宮殿です。
地上10階地下4階、世界2位の広さを誇る国民の館には3000を超える部屋があり、現在ではルーマニア議会の議事堂や政党のオフィス、美術館などが入っていて、一部が見学できるようになっています。
写真は憲法広場からの正面全景ですが、高さ84m横幅275mもある国民の館全体をカメラに収めるには、建物から相当離れても中々入りきりません。

カメラに収まりきらない巨大さ

写真:大竹 進

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国民の館は建設中にチャウシェスク大統領がルーマニア革命で失脚・処刑された際工事が中断され、建物を解体する案もありましたが、既に7割がた完成していて解体費用の方が高くつくということもあり、工事が再開されました。しかし現在も尚完全には完成しておらず、一部で工事が続けられています。

カメラに収まりきらない巨大さ

写真:大竹 進

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国民の館は東側が正面(写真左手)ですが、参観者入口は北側にあります。全体の形は四角形で、それぞれの角にウイングが突き出している形なので、側面とはいえ幅は235mもあり、庭園の端まで行っても建物全体がカメラに収まりきりません。

館内の回廊に敷かれた衝撃の大きさのカーペット

館内の回廊に敷かれた衝撃の大きさのカーペット

写真:大竹 進

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館内の見学はガイドツアーのみで、個人での自由見学はできません。参観者入口を入って最初に案内されるのが、この緑色のカーペットが敷かれた回廊ですが、これは継ぎ目のない一枚の巨大なもので、その長大さに驚かされます。

赤いカーペットが敷き詰められた大回廊はHonour Galleryと呼ばれ、幅18m長さは150mもあります。太い八角形の柱が左右に並び、荘重な雰囲気を醸し出しています。

館内の回廊に敷かれた衝撃の大きさのカーペット

写真:大竹 進

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館内の回廊に敷かれた衝撃の大きさのカーペット

写真:大竹 進

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国民の館はルーマニア中から集められた大理石で造られていますが、回廊の床も様々な色の大理石を寄木細工のように組み合わせた見事な模様で彩られています。写真はタペストリーのギャラリーです。

チャウシェスクが拘った階段

チャウシェスクが拘った階段

写真:大竹 進

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中央ホールには同じデザインの大理石の階段がホールの左右に造られています。この階段は小柄だったチャウシェスク大統領の身長に合わせて造られたため、1段の高さは約15センチと低くなっています。
世界には多くの宮殿がありますが、個人の身長に合わせてその階段の高さにまで拘って建設されたという例は殆ど耳にしません。「国民の館」とは名ばかりの、将に「チャウシェスク個人の館」であったことが良く判ります。

チャウシェスクが拘った階段

写真:大竹 進

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階段の踊り場にはまるで滝が降り注ぐ様な巨大なカーテンが吊り下げられています。
このカーテンは長さが18mもあり、重さはなんと一枚250kg。左右合わせて500kgもの重さがあります。中央ホールの反対側の階段にも同じものがありますから、4枚合計で1トンというとんでもない重さです。

チャウシェスクが拘った階段

写真:大竹 進

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階段の手すりの装飾も手の込んだ造りですが、これもチャウシェスク大統領の手の高さに合わせて造られています。
国民の館は至る所に大理石が使われていますが、建設に当たって膨大な量の大理石をルーマニア中から集めたため、墓石が不足してしまったという話も残っている程です。

華麗なホールの数々

華麗なホールの数々

写真:大竹 進

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国民の館には多くのホールがありますが、その最大のものがユニオン・ホール(Union Hall)です。
総面積2200平方メートル、収容人数は2000人という大きさで、大理石の床、壁、列柱、豪華なシャンデリア、華麗な天井、どれもが見事で、窓枠に至るまで純金の装飾が施されています。

華麗なホールの数々

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ルーマニア公国の建国者の名を冠したアレクサンドル・ヨアン・クザ・ホール(Alexandru Ioan Cuza Hall)。
1200人収容のこのホールは、他のホールには大概あるシャンデリアが一つもなく、高さ20mもある天窓や側窓から自然光が入り込むようになっています。

華麗なホールの数々

写真:大竹 進

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19世紀のワラキア公国の政治家の名を冠したコンスタンティン・アレクサンドル・ロゼッティホール(Constantin Alexandru Rosetti Hall)。
座席数600のこの円形のホールはオペラ劇場のような造りですが、現在上院の議場として使用されています。この上階にほぼ同じ規模のホールがあり、下院の議場となっています。

テラスからの眺め

テラスからの眺め

写真:大竹 進

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前述のアレクサンドル・ヨアン・クザ・ホールからは正面玄関の真上にあるテラスに出ることができます。庭園の前にあるのが憲法広場、そしてここを起点にアルバ・ユリア広場まで統一大通りが約3キロ続きます。

テラスからの眺め

写真:大竹 進

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統一大通りはパリのシャンゼリゼ大通りとそっくりなものを実現しようと建設されましたが、結果的には幅が6メートルほど広くなってしまったそうです。

テラスからの眺め

写真:大竹 進

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統一大通りには統一広場の先まで噴水が並び、見事な並木道が続いていますが、この通りは国民の館と一体として設計され、建設も並行して行われました。

チャウシェスクの見果てぬ夢、国民の館

チャウシェスク大統領が自らの権力と権威の象徴として建設を命じ、贅を尽くして造らせた国民の館。しかし彼自身は1989年のルーマニア革命で失脚・処刑されてしまい、その完成の姿を見る前に歴史の波に葬り去られてしまいました。
内部見学のガイドツアーには幾つかコースがあるので、自分が見たいエリアの入ったコースをお選び下さい。見学にはパスポートが必要ですから忘れずにお持ち下さい。館内の撮影は撮影料が必要ですが、払う価値が充分にある建物です。
かつての独裁者の莫大な浪費の証人として、圧倒的な大きさで迫る国民の館をあなたも訪ねてみませんか。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2017/06/17 訪問

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