写真:Naoyuki 金井
地図を見るお店の看板に書かれた奇妙な御得意様が宇治金時の歴史です。平安時代の清少納言が偶然、氷片を口に入れておいしさに気づき、「アマヅラ」という蔦の樹液を煮詰めたものをかけて食べたのが、かき氷の始まりと云われ、枕草子に「削り氷にあまづら入れて、新しき金鋺に入れたる」と記述されています。
氷が初めて出現したのは奈良時代で、この氷を最初に献上されたのが仁徳天皇です。そして平安時代に戻り、冬の氷を夏に供給する氷室のシステムを造ったのが時の権力者藤原道長で、現在の京都西賀茂氷室町はその名の通り氷室が多くあったエリアです。
鎌倉、室町と武士政権が続くとかき氷も影を潜めるのですが、再び脚光を浴びるのが秀吉の時代。朝廷にすり寄った秀吉はかき氷を復活させ、宇治の抹茶ときび砂糖をかけた「抹茶かき氷」が誕生しました。そして江戸時代、家康によって餡が添えられ「宇治金時」が完成したのです。因みに源氏物語の紫式部は、かき氷を食べ過ぎてお腹を壊したという記述が残っています。
いづれにしてもかき氷は、朝廷や公家、そして将軍家などの特権階級だけが食べられた高級なグルメで、庶民の口に入るようになるのは明治時代からです。
写真:Naoyuki 金井
地図を見るそんなかき氷の歴史を研究したのが、日本料理店を営み東京農業大学研究員でもある松本栄文氏で、かき氷の歴史を紐解いて宇治金時に魅せられたのです。松本氏は元々京都の方で、わざわざここ香取市佐原に店を開いたのは、この地がそもそも近江商人が開拓した町で京都に所縁があったからです。小野川沿いに広がる町家の佇まいは、柳の並木と共に小江戸の風情を醸し出している風光明媚な街です。
写真:Naoyuki 金井
地図を見るお店は小野川と交差する県道55号線にあり、小野川にかかる忠敬橋から僅かの距離にあります。大正時代に造られた古民家で、佐原に似合う風情ある佇まいです。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る店内は混んでいるときは、ややせせこましく、かき氷が美味しくいただけるよう室内温度も高め、というよりは開けっ放しの外気温そのままの店内です。4人のスタッフで切り盛りされていますが、社長の松本氏をはじめとして全員が気さくな方達で、気取ったそぶりは微塵もありません。特に松本氏の京都弁は、宮中の雅な趣さえ感じさせられ、これからいただく宇治金時への期待感をより一層高めます。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る元々、二子玉川で日本料理店「花冠陽明庵」を始めた経緯から、メニューも多彩で単なる古民家カフェにはとどまりません。お目当ての「宇治金時」は勿論のこと、松阪牛を使用した「限定ビーフサンド」や、流行りの「玉子サンド」といった逸品もあります。
そして注目は、宇治金時と同様、このお店での名物「あぶり餅」。あぶり餅とは、発祥の地が京都今宮神社の門前で、約千年の歴史をもつお餅のことです。是非、こちらも味わっていただきたい京都の風情ある逸品です。
写真:Naoyuki 金井
地図を見るそしてお目当ての「宇治金時」は、一面緑色の存在感に圧倒されそうになります。これは松本氏が、宮中及び徳川家将軍御用茶師であった京都「三星園上林三入本店」と共に古文献を研究し、江戸時代後期の宮中で流行した宇治金時が再現されました。削り氷にキビ砂糖をふり、上林三入本店の最高級抹茶「初むかし」をふんだんに振りかけて、香り高いこし餡をよそったものです。
苦味の効いた抹茶氷を楽しみ、甘い餡を挟みながらいただく宇治金時は、さながら「大寄せ」の茶会に供される招き菓子と薄茶のよう。まさにかき氷界のお茶席とも云えるお店なのです。現代の甘い抹茶かき氷とは一線を画した究極の宇治金時を、是非、一度ご賞味くださいね。
香取市佐原は小江戸の街並みと水郷が楽しめる観光地です。小野川沿いには、江戸の町家が立ち並び、幾つかは文化財としての見所があります。また伊能忠敬所縁の地として記念館や旧居が残されています。
グルメなあなたにも満足できるお店が多く、ウナギを始めとした川魚料理や蕎麦屋などには江戸時代から続く老舗もありますが、昨今ではオシャレなカフェやレストランも増えています。
近くには千葉県(下総国)一宮の香取神宮や、季節にはアヤメが美しい水郷佐原あやめパークがあり、歴史と自然が同時に楽しめます。
1日たっぷり楽しめる佐原に、是非、一度お越しください。
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(2024/4/23更新)
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