写真:鷹野 圭
地図を見る「里山」という言葉をよく耳にするようになって既に久しいですが、東京のような街中に暮らしていると無縁なものに思える方も多いかもしれません。そこでぜひ見ていただきたいのが横沢入。五日市線「武蔵増戸駅」から、写真のような花に彩られた線路沿いの道を真っ直ぐ歩き、約15分で到着します。大都会の雰囲気などまるでない、かつての農村風景そのものの環境がそこにはあるのです。
写真:鷹野 圭
地図を見る豊かな緑に覆われた丘に挟まれる山間部に、田畑あり、小川あり、農道あり……かつては関東・武蔵野の界隈でもごく当たり前に見られた谷戸の里山環境が、ここ横沢入にはそのまま残されています。近年は昔ながらの茅葺き屋根の家や田んぼのある公園も増えてきましたが、横沢入は周囲の環境も含めて本格的かつ広い里山となっており、四季を通じてのどかなムードが漂っています。
写真は、最も見晴らしのよい高台からの風景。高木の立ち並ぶ雑木林から丈の低い草原、ガマなどの生える湿地帯、そして田んぼ……緑と水の多様な環境が山間部にぎゅっと凝集されているのがわかることでしょう。はるか彼方に見える鉄塔を除けば都会を匂わせるものはほとんどなく、東京都にいることを一時忘れてしまいそうです。
写真:鷹野 圭
地図を見る横沢入の森は針葉樹・広葉樹の入り混じった雑木林。葉っぱの隙間から林床にも光が差し込み、程よく濃い緑の中で森林浴を楽しめます。ちょっとした登山道に繋がっているルートもありますので、ハイキング好きの方におススメです(服装や飲み物などの準備は忘れずに!)。
ちなみにこの森の中には、タヌキやイノシシといった野生の哺乳類も暮らしています。彼らは基本的に夜行性なのでほとんど出合うことはありませんが、会えたらラッキー。とはいえイノシシは気性が荒いので、見かけても決して近づき過ぎたり刺激したりしないようにしましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る色々な生きものが暮らす横沢入の里山ですが、決して人の立ち入らない秘境などではありません。田畑は当然農家の方が収穫のために手入れしていますし、定期的な草刈りなども行われています。
ここに限らず、里山とは人の手が加わるからこそ維持される環境。人が手入れするからこそ田畑・草原・雑木林などはすべて今の状態をキープでき、生きものも安心して定住できるのです。(放置していればやがて深い藪や光の当たらない森になり、動植物にも生きづらい環境になってしまいます)
写真:鷹野 圭
地図を見る横沢入は、人と自然とが共生する里山環境を復元し、将来世代まで残していくことを目的として東京都から「里山保全地域」に指定されました。今はあきる野市内の農家の方やボランティアなど、一般市民の皆さんが維持管理作業に携わっています。
散策していると、そうした作業中の方に出合うこともあるかもしれません。春夏秋冬、それぞれの時期にどのような作業をするのか? 何度か足を運んで見ていると、昔ながらの農作業の実態なども自然と掴めることでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る近隣にあるあきる野市立増戸小学校の子供たちが作った、横沢入の環境をあらわした絵地図。横沢入の中に看板として設置されています。可愛らしいのはもちろん、ここに暮らしている生きものの絵なども書き込まれており、散策時のちょっとした参考になります。
写真:鷹野 圭
地図を見るラッパ状の白い花が互い違いの方向を向いて咲くこの花、ウバユリというユリ科の仲間で、夏に開花します。自然度の高い里山で、主に半日陰の林の中に生えます。背丈が高く花も大きいのでよく目立ち、すぐに見つかることでしょう。。
晩夏から秋にかけて花期が終わると、花はラグビーボール状の実に変化。この中に種が入っており、秋が深まると割れて中の種が零れ落ちるのです。
写真:鷹野 圭
地図を見るこちらはヤマユリ。野生のユリというとこれを思い出す方が多いかもしれません。山野草の仲でもとりわけ大きく、なおかつとても豊かな香り(甘いバニラのような感じです)を漂わせる夏の花で人気があります。花びらの中にオレンジ色のラインが入っており、見た目も美しい花ですね。
こちらはウバユリと違って、比較的開けた環境で花を咲かせます。田んぼ脇の開けた草原や林縁部などで見られることでしょう。見かけたら、ぜひ一度思い切り顔を近づけて甘い香りを堪能してみてくださいね。
写真:鷹野 圭
地図を見る夏〜秋の田んぼの風物詩といえば、トンボを思い浮かべる方も多いことでしょう。有名なアキアカネなどももちろん見られますが、ここでぜひ見ていただきたいのが写真の美しいトンボです。オオアオイトトンボといい、イトトンボの仲間の中ではかなり大型で、何よりエメラルドグリーンの身体が目を惹きます。
やや薄暗いところを好み、やはり水際が好きな模様。水溜りのある林縁部などで探してみてください。ひらひらとゆっくり飛ぶ姿が見られることでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見るこれもまたイトトンボ。身体が黄色いキイトトンボです。飛んでいると、黄色い爪楊枝が横倒れになって宙に浮いているように見えるちょっとユニークな種。昔は関東でも様々な里山で見られたようですが、健全な環境の保たれた里山が減るにつれ、かなり数を減らしてしまいました。
ここ横沢入ではまだまだそれなりに見かけることが多いです。オオアオイトトンボよりもやや開けたところを好み、池の注水植物などによく掴まっています。小さいので、よく目を凝らして探しましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見るトンボと並ぶ田んぼの生きものといえば、やはりカエル。写真はニホンアカガエルといい、大人の間は森に暮らし、繁殖期と産卵期のみ水際に下りてくるという習性があります。そのため、田んぼや池と林が隣り合う里山でないとなかなか生きにくいらしく、近年は減少が心配されているカエルです。
よく見るアマガエルよりも一回り大きく、人が近づくと力強く跳躍して逃げます。色は地味ですが大きい分目立つので、散策していると結構見つけられるかも?
写真:鷹野 圭
地図を見る秋深まり、山の木々が朱に染まり始めると、里山の雰囲気もガラリと変わります。稲穂の刈り取られた田んぼからは潤いが消え、スッキリとした秋空と相俟ってオープンな雰囲気に。夏場に多く見られた昆虫やカエルの数は少なくなってしまいますが、それもまた日本ならではの季節の移ろい。冬へと向かう、独特の寂しさと風情漂う里山を散策しながら、秋ならではの風景を楽しみましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見るこれは「はざかけ」というもの。刈り取った稲を天日干しにし、それから脱穀して米を採集するのです。一見すると、縄文時代などに作られた竪穴住居のように見えるかもしれませんね。これだけの量の稲を干す様を見られるのは、やはり本格的な里山だからこそ。他にも、秋ならではの里山コンテンツが色々ちりばめられていますので、探してみてくださいね。
写真:鷹野 圭
地図を見る秋の田んぼといえば、やはり飛び回る赤トンボ。横沢入でも10月頃から群れをなして姿を現し、その数は到底数え切れないほどです。最近は暖かくなってきたためか、12月中旬頃まで見られることも。時折、池や水路でお尻をつけて産卵を試みている個体も見かけます。
横沢入はあくまで里山保全地域であり、公園施設の類は一切見られません。人が暮らすための農業環境として整えられたかつての里山を、そのままの姿で私たちに見せてくれる空間なのです。だからこそ、かつて里山にあふれていた生きものも多く暮らせるのです。人の作り出した自然「里山」が、どれだけ生物多様性に貢献しているかがわかることでしょう。自然体験・学習の場としても利用できます。
※自販機は入口近くにあるので、熱中症対策のために散策前に買っておきましょう。
【アクセス】
JR五日市線「武蔵増戸駅」より徒歩約15分
この記事の関連MEMO
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2024/4/18更新)
- 広告 -